(5)Crimson Glory『IN DARK PLACES…1986-2000』(2010)
2009年にMidnightが亡くなってしまったあとに、まとめられ出されたボックス・セット。ブックレットでもMidnight追悼の意が示されています。リマスターの施されたデビュー作以来のオリジナルアルバム(4枚)に、ボーナストラックとボーナスディスク(1枚)のついた五枚組。上述(4)の楽曲はボーナスディスクに入っています。
オリジナルアルバム(と上述『WAR OF THE WORLDS』)に入っていなかった「ボーナストラック」を挙げますと、
Disc1(『CRIMSON GLORY』):「Dream Dancer」
Disc2(『TRANSCENDENCE』):「Lonely[remix]」、ヴィデオトラック「Lonely」
Disc3(『STRANGE AND BEAUTIFUL』):ヴィデオトラック「The Chant」
Disc5(『WAR OF THE WORLDS』):「Edge of Forever[demo]」・「Painted Skies[live]」・「Queen of the Masquerade[live]」・「Lost Reflection[live]」
ちなみに、私はこれではじめて『STRANGE AND BEAUTIFUL』を聴きました。各種ディスクガイドやネット上のレビューで、酷評されているのを鵜呑みにしていたため、個別にCDを買っていなかったのです。
そして何といってもお楽しみは追加されたライヴトラック。「Red Sharks」とか「Masque of the Red Death」の現場版を聴きたいぞ。「Painted Skies」の強力なヴァージョン。「Queen of the Masquerade」はギター・ソロからベースソロにつなぎ、聴衆との短いコール&レスポンスまで入るアレンジで。ファーストアルバムの終曲「Lost Reflection」も劇的な盛り上がりを見せ、余韻を残して終了。既出音源と同じ日のライヴのようです。だったらもうフル・ショウを公にしてくださいよ……
(6)Midnight『SAKADA』(2005)
1.Incubus / 2. Berber Trails / 3. Little Mary Sunshine / 4. Miss Katie / 5. War / 6. Pain/ 7. Sakada / 8. Lost Boy / 9.Cat Song
ミッドナイトのソロアルバム。確か今は亡き西新宿Disk Heavenで買いました。ヘヴィ・メタルじゃないです。ネット上で観た当時のインタビューでご本人が「俺のやってるこの音楽は、Heavy Metalじゃないね。Heavy Mellowって呼んでるんだ」などと仰ってました。どう訳せばいいんだ。エレクトリックギター・ベース、ドラムも使われているのですが、ロックの定型的なリズムを刻むことはあまりない。
「Incubus」にしても「Berber Trails」にしても、かつて『STRANGE AND BEAUTIFUL』で取り入れたワールドミュージック的なサウンドをもっと極端に導入してまして、ヴォーカルも呪文というか宗教歌というかそんな風な調子。「Midnightの声は衰えてないな、凄い」っていうことがわかるのは嬉しいのですが、メタルファンにはちと難解。3曲目はややパンク・グランジっぽいのかな、(おそらく)敢えて「ヘタウマ」に歌ってみせているようです。メタル色があるのは「War」とかですかね。それでも、かつての美旋律HMとは趣が違っていて、つかみどころがない(ノリにくい)のですけど。タイトル曲「Sakada」は、フルートが入るなどフォーキーなイメージ(Led Zeppelin的な意味で?)の曲。終曲「Cat Song」は、本作中では比較的聴きやすい部類に入るミッドテンポの歌モノ。スライドギターが全面に入ってます。
非常にユニークなアルバムであることは間違いありません。“Heavy Mellow”がなんなのかはよくわかりませんが、カテゴライズするのは確かに厄介な個性的な作品。歌が「立って」いるという点では、やはり名ヴォーカリストのソロ作品ではありますが。
(7)Parish『ENVISION』(1995)
1. Rachel’s Eyes / 2. Danger Zone / 3.Set the Night on Fire / 4. Believe in Me / 5. Dark Desire / 6. Envision / 7.Summer / 8. Forever / 9. Desert Wings / 10. Down and Dirty
クリムゾン・グローリーを抜けたBen Jacksonが結成したバンドの唯一作。こちらはまあ、オーソドックスなメタル。ヴォーカルはJohn Davidという人で、Midnightみたいな強烈な個性はもちろんないんですが、メロディアスなラインをちゃんと歌えるなかなかの人物。比較的ストレートなハードロックソングの1曲目。リフとリズムのパターンは一時はやったグルーヴ系みたいですが歌メロがちゃんとある2曲目、ラップ的語りをちょっとだけ取り入れた3曲目と、曲調もそれなりにバラエティに富んでます。朗々とした歌の効ける5曲目も悪くないし。
いや、90年代中盤の米国で、メタルとしてのフォーマットを守りつつこれだけメロディアスなのをやっててくれたとはたいしたもの。いや、だから売れなかったのかもしれませんが。「名盤!」とは申しませんが、引いても外れではない、と申しておきましょう。聴き直したら気に入りましたわ。
(8)Queensrÿche『QUEENSRŸCHE』(2013)
1. X2 / 2. Where Dreams Go to Die / 3.Spore / 4. In This Light / 5. Redemption / 6. Vindication / 7. Midnight Lullaby/ 8. A World Without / 9. Don’t Look Back / 10. Fallout / 11. Open Road
最後は、Crimson Gloryへのレコーディング参加は幻に終わったTodd La Torreの歌を聴きましょう。アルバムタイトルはバンド名になってますが、別にデビュー作などではありません、念の為。強いて言えば、バンド創設以来のメンバーであった看板シンガーのGeoff Tateが抜けてしまって後の「再生作」だということはあるのかもしれません。
※真ん中がTodd La Torre
SE的な1曲目に続いて、シャッフルというかマーチ調に聴こえる「Where Dreams Go to Die」が始まる。Toddの声は、なんとまあ、Geoff Tateの如き“威厳”まではまだありませんが、実に堂々たる歌いまわし。Judas Priestが発掘したTim OwensにしてもJourneyが見つけたArnel Pinedaにしても、このToddにしても、居るところにゃあ上手い人が居るもんだ。「Spore」以降も、Queensrÿcheお得意のちょっと捻ったリズム・パターンの曲を見事に歌いこなしております。「Vindication」のような凝った疾走メロディアスソングもまた、彼らならではというところでしょうか。比較的ストレートな「Don’t Look Back」も好きですけど。(しかしこのアルバム、スネアの音が随分カン高いなあ……)
それと、上には記述しませんでしたが、私の買った初回盤輸入CDにはボーナストラックとしてToddの歌うライヴヴァージョン3曲が入っているのです。バンド最初期(1983)の代名詞的名曲「Queen of the Reich」もその中のひとつなんですが、Toddさん素晴らしいです。これだけきちんと歌えるとは。Crimson Gloryでも音源残してほしかった(まだ言ってます……)。いや、楽しみが倍に増えたと思うことにいたしましょう。
<完>