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第32回「Crimson Glory」(2)

 今回はCrimson Gloryの歴史を簡単にご紹介しつつ、作品にも触れてまいりましょう。
 
 バンドの始まりは、1982年フロリダはサラソータ市。Jon DrenningJeff LordsBen JacksonBeowulfなるバンドを結成しました。ここにドラマーのDana Burnellが参加、さらにヴォーカリストJeffの旧友John Patrick McDonaldが加わったことによりグループはCrimson Gloryとして活動を本格化させます。Johnは、リハーサルによく遅れてきたことから“Midnight”という綽名を頂戴することになった、ということです。(長風呂(?)を理由に“Fish”という綽名をもらった故Chris SquireYes)みたい……)
 
 Jonを中心とする楽曲づくりで音楽的個性を追求する一方、「聴衆の関心をひきつける」必要性も感じていたバンドは、ライヴ・パフォーマンス中は銀色のマスク(仮面)を装着するというヴィジュアル的戦略も採用します。素顔を見せないことによって、楽曲とバンドのミステリアスなイメージを補強できる、という読みがあったようです。
 
 そしてついにロードランナーというレーベルと契約。1986年にデビュー作CRIMSON GLORYを発表します。「グラム・ロックオールドスクール・パワーメタル、そして若干のプログレッシヴアプローチの大胆な融合」などと音楽誌に評され、若いグループとしては異例の高い評価を受けます。楽曲・楽器陣も一目置かれた彼らですが、最強の武器だったのはやはりMidnightの声でした。バンドメイトJonに言わせると「彼は天使の声と獅子の声を兼ね備えていた」。ミッドナイト自身は「僕がそもそも影響を受けたのは、Led ZeppelinPink FloydElton JohnThe Beatlesなどだった。ヘヴィメタルを知る前に聴いていたものだ。本当をいうと、初めてメタルを聴いたときは大嫌いだった。ロブ・ハルフォードの歌唱を聴いて、はじめて自分もシンガーになりたいと本気で思うようになったんだ」と語っています。
 
 彼らはアルバムリリースに続いて、欧州(ドイツ・オランダ)や米国をツアー。このツアー時に、熱を持ちやすい「仮面」(金属製)が長時間の演奏に向かないことを悟ったといいます。ローカルバンド時代より出番が長くなったということを意味するわけですが、そこで彼らは「オペラ座の怪人」風のマスク(顔の半分を覆うような)への改造を行います。ジョンによると、この頃には音楽的成熟を伴ってきたので、マスクの「イメージ」に頼る必然性は薄れてきていたといいます。
 
 1988年にセカンドアルバム(前回参照)を発表。楽曲の質や演奏も進歩していますが、プロダクションが向上したことも前作からの変化。この作品により、当時“Power Prog”なる括りでとらえられていたQueensrÿcheFates Warningの並ぶ存在となります。引き続いて北米・欧州・日本をツアー。最大で二万人を前に演奏する機会を得たり、地元フロリダのタンパ・ベイ・ミュージック賞を受賞したりと躍進しますが、ツアーの後ベンとダナが離脱。ベンはParishを結成します。Crimson Glory本体はドラマーとしてRavi Jakhotiaを迎え、次作の制作に入ります。
 
 サードアルバムSTRANGE AND BEAUTIFULが出たのは1991年のことでした。この作品の音楽性は前二作とかなり異なっており、パワーメタル色は薄まって所謂ハードロックのスタイルへ移行していました。つまり、複雑でプログレッシヴな楽曲よりも、よりトラデョショナルなハードロック的楽曲を目指した……とジョンも語っております。またこの変化には、作曲面にも積極的となったMidnightの“貢献”も影響していたということです。ジョン「ライヴ感がありスポンテニアスなものにしたかったのさ。楽しむことと人間らしさ、自然さとミスを犯すことを大切にしてね。」歌詞の世界も従来のようなSF調ではなく、人間の内なる衝動などが主となります。
 
 この変化は賛否両論を呼びます。それはつまり聴き手が「Crimson Gloryらしさを何にみているか」ということでもありました。「メロディアスな本格派ロックバンド」とみていれば、そのアルバムは十二分に水準を超えた作品と言えたでしょう。一方、「ミステリアスなイメージを纏ったプログレ・パワーメタルの雄」として期待していた人がいたら、正直落胆してしまったかもしれません。そのくらい、その変化は大きなものでした。ただやはりジョン曰く「音楽性を変えることは確かにリスキーだった。だが、必然でもあったんだ。『STRANGE AND BEAUTIFUL』は今でも誇りに思う作品だよ。」
 
 意識的な変化だったことはこれでもわかりますが、続くツアーが行われる前にMidnightがバンドを脱退してしまいます。(彼は音楽業界から足を洗ってしまい、次に彼についての音沙汰が聞こえるのは2000年代に入ってからになります。)バンドの中心Jon Drenningは、David Van Landingを代役に立ててツアーを試みますが、バンドは延命できませんでした。ジョンはバンド再生をその後も企てますが、結局うまくいかず、1993年にCrimson Gloryは「解散」となります。
 
(ちなみに、David Van Landingさんの歌声はMichael Schenker GroupTHE MICHAEL SCHENKER STORY LIVE1997)で聴くことが出来ます。マイケル・シェンカーの全キャリア(1997年までの)を代表曲のライヴ演奏で振り返るという企画の、日本公演の実況盤です。マイケルのかかわったバンドにいたシンガーたち――Klaus MeinePhil MoggGary BardenGraham BonnetRobin McAuley……――の持ち曲をなかなか上手にカヴァーしていました。残念ながら2015年にDavidは亡くなってしまいましたが……)
 
<作品紹介>
1Crimson GloryCRIMSON GLORY1986
 1. Valhalla / 2. Dragon Lady / 3. Heartof Steel / 4. Azrael / 5. Mayday / 6. Queen of the Masquerade / 7. Angels ofWar / 8. Lost Reflection
 ラインナップ: MidnightVo)・Ben JacksonGt)・Jon DrenningGt)・Dana BurnellDr)・Jeff LordsBa
 
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 記念すべきデビュー作。ミッドテンポのパワーメタル、1曲目「Valhalla」の「♪Winds of Odin guide us」という堂々とした歌い出しから、このヴォーカリストがただ者ではないことが知れるわけですが、それはこの後の楽曲を聴き進めるうち確信に変わるはず。本作が出た当時、Crimson GloryQueensrÿche風だとかJudas Priest調だとかいわれたようですが、そういう言い方をした人々はこのアルバムにおけるMidnightの歌唱がGeoff Tate風だと言いたかったのでしょうね。たしかに、このデビュー作ではそういう感じが強いようですが、Crimson Gloryを彼らの亜流と決めつけるのは早計。よく聴けば、似ているとはいっても実は先達と異なる個性も感じさせるものです。(それが開花するのが次作、ということ。)
 
 「Dragon Lady」も代表曲の一つでしょう。三連(シャッフル)なんですが軽快さというより行進曲風の突進力を感じさせます。ギターの印象的なフレーズも耳に残りますが、やはりMidnightの歌唱が凄い。コーラス部分(「♪Watch out now, she’s breathing fire. She’s a dragon lady」というところなど)ではヴォーカルが重ねられたりしていてさらに強力に。ひょっとするとライヴではこの辺の再現が難しかったのかな――いろいろなレビューでCrimson Gloryのライヴの評価が必ずしも芳しくないのですが――とも思います。
 
 「Heart of Steel」は彼ら流のパワー・バラード。この3曲目までで彼らの個性(得意とするところ)がどういうものかだんだん見えてきます。必ずしも速いテンポに頼らず、構築されたギターのフレーズとMidnightの常人離れした歌唱を前面に押し出すという流儀。もちろん、飛ばすナンバーがないわけではなく、5曲目の「Mayday」などは3分でおわってしまう高速パワーメタルなのですが。続く「Queen of the Masquerade」は、どことなくDioHoly Diver」を思わせるリズム・パターンと歌、やはりこういう曲の方が得手のようですね。彼らは曲中でリフパターンを変化させたりすることも多いので――7曲目「Angels of War」の中間部分はなかなかおもしろい――決して単調ではありません。(こういうおもしろさは、最近ようやくわかってきました。若い頃(?)はスピード・ナンバーばかりありがたがっていたものでした……)
 
2Crimson GlorySTRANGE AND BEAUTIFUL1991
  1.Strange and Beautiful / 2. Promise Land / 3. Love and Dreams / 4. The Chant /5. Dance on Fire / 6. Song for Angels / 7. In the Mood / 8. Star Chamber / 9.Deep Inside Your Heart / 10. Make You Move Me / 11. Far Away
  ラインナップ: MidnightVo)・Jon DrenningGt)・Jeff LordsBa)・Ravi JakhotiaDr
 
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 音楽性の大転換が起こった問題作とされますが、タイトル曲の1曲目などはお得意の様式も踏まえているようですよ。アコースティック・ギターに導かれて始まり、だんだん劇的に展開する。ただし、ギターフレーズのリフレインの仕方、ドラムのビートのとり方が変わっていまして、従来の細かく刻むものよりも“ルースな感覚、ビッグなビート”っぽさを出しています。ここでのMidnightの歌唱がRobert Plant風なこともあり、要するに中期Led Zeppelinっぽく聴こえるのですよね。(当時はこういう音作りをしたHMグループがあまりに多くなり、一定の批判も招いていましたようですね。少なくともこの曲に関する限り、私はイイと思いますが。)
 2曲目「Promised Land」はイントロからして、ワールドミュージックというか何らかのトライバル・ミュージックのようなものなので面くらいますが、曲本編が始まると、いわゆるハードロックになります。やはりブルージーなハードロックで、歌もプラント風、一時期LAメタルの面々がこぞってやったような感じ、でしょうかね。結構グルーヴィーで好きな曲なんですが、前作と同じバンドとは確かに思えないかも。
 
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 3曲目「Love and Dreams」は、彼らとしては極めて珍しい明るい調子(メジャー調)の歌。歌詞も「♪You  are my dream, you are mylady. You are the only one in my life」といった具合で、SF調や捻った比喩は姿を消しています。4曲目「The Chant」はバンドメンバーの作曲じゃないんですが、これもLAメタル風でしょう、か。女声コーラスなんかも重ねられてるキャッチーなナンバー。5曲目「Dance on Fire」は、うーむ、これもLed Zeppelin風かな。……という感じで。アルバム後半も従来作と比べて「アコースティックの比率が高い、ブルーズロック風が多い、Midnightのプラント度が高い」。
 
 音質もよく、歌唱・演奏も達者なので「メロディアスなハードロック」としては高品質。時々聴くとなごめますが、やはり彼らの音楽の「構築美」から距離が大きいので、CGをこれから聴こう!という人に初めにお薦めする作品ではないかも知れませんね。
<続く>