DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第19回「Robert Johnson」(3)

 全曲解説なんていうのは野暮ですし、わたくしの能力を超えるところですが、楽しい聴きどころだけは挙げさせてもらいますかな。

youtu.be

 

 一枚目。さっきも書きましたが1曲目「Kind Hearted Woman」間奏部分に「ギターソロ」があるのですが、ブックレット(歌詞カード部分)注釈によると「このテイクにおけるギターソロは、ジョンソンが生涯で唯一録音した“ソロ”である」そうです。ジョンソンのブルーズは基本的に歌モノですから、歌詞に表現の重点があるのですね。ロックンロール以降(ましてヘヴィメタル的な)のような長尺インスト間奏は彼には考えもつかないことだったのでしょう。ま、間奏で弾きまくらなくても、歌の伴奏が凄すぎて、キース・リチャーズならずとも「これ、一人なの?」とたまげること請け合いですが。

 

 3曲目「I Believe I'll Dust My Broom」は後にElmore Jamesが「Dust My Broom」と改作してヒットさせ、こういう三連のぐいぐい入る曲は「ブルーム調」などといわれるようになりました。4曲目「Sweet Home Chicago」は12バー・ブルーズのお手本のような曲で、実際むかしNHKの『アコースティックギター入門』という番組(加藤和彦氏がMC、ギター演奏に石川鷹彦氏+ゲスト)の「ブルースを弾く」の回で課題曲になってました。この時のゲストが憂歌団内田勘太郎氏で、ブルーズへの深い造詣を披露するとともに、物凄いギタープレイ(特にボトルネック)をぶちかましてくれまして、わたくしファンになりました。憂歌団も友達と観に行ったし、内田勘太郎トリオのインストアイベントにも馳せ参じたものでしたなあ。

 

 「Rambling On My Mind」は、クラプトンがJohn Mayall & the Bluesbreakers時代にカヴァーしていましたね。彼がヴォーカルをとって録音したほぼ初の作品じゃないかな。「When You Got A Good Friend」はメロに対する歌詞の載せ方がちょっと面白い曲。典型的な3コードブルーズのようでいて、一筋縄ではいかない。11曲目「Terraplane Blues」は、Canned Heatもカヴァーしていましたね、畳みかけるようなギターがグッド。14曲目「32-30 Blues」は、ここ数曲のパターンとはちょっと違う感じ。リズムの跳ねさせ方が特徴なのかな。違う、と言えば15曲目「They’re Red Hot」は本録音集の中では異色。ギターはアップテンポにコードをかきならすのですが、歌詞の合間合間に「ツッコミ、語り」みたいなコトバが投げ込まれる。当時のダンスナンバー(酒場などで客を踊らせる)といったところでしょうか。

 

17-18曲目はCreamで有名になった「Cross Road Blues」。「オレは十字路に行った、そしてひざまずいた。神サマに、“お慈悲を、憐れなボブをお助けを”って祈ったのさ」と始まります。18曲目のテイク2の方がスライドが強力かな。確かにこれは「ロック」まであと一歩だ。その次の「Walkin’ Blues」は、Muddy Watersもやっていたので広く知られますが、要するにある種のスタンダードナンバーでして、ジョンソンの先達Son House40年代に録音を残しています。
イメージ 1
*「死亡証明書」of Robert Johnson
 
二枚目。いきなり「Preaching Blues」が凄い。Son House直系のスライド(ボトルネック)さばきに惚れ惚れ。歌詞は「ブルーズ(憂鬱)」にとり憑かれた苦しみを歌ってるみたい。2曲目「If I Had Possession Over Judgment Day」もスライドを絡めた細かい刻みがスゴ技だが、歌詞に「And I rolled and tumbled, and I cried the whole night long.」とあって「Rollin’ and Tumblin’」の一ヴァージョンなのだとわかる。

youtu.be

 

4曲目「I’m A Steady Rollin’ Man」は、かつてクラプトンの後任としてThe Bluesbreakersに入ったPeter Greenが好んで取り上げていたハズ。この辺まではアグレッシヴな演奏が続きますが、「From Four Till Late」は、ちょっと軽めの曲。

 

数曲あって、クラプトンも取り上げた「Malted Milk」。軽やかに跳ねるリズムを演出しながら、比較的繊細に奏でられる歌。「Malted Milk」というのは「密造ビール」のことらしいのですが、最後のヴァースで「ドアノブが回ってる、俺のベッドの周りにゃ幽霊がいるに違いない/おかしな気分だ、髪が逆立つ」とか歌っててちょっとコワイ。アルコールが入って妄想したのか、それとも……

 

12-13曲目はズバリ「俺と悪魔のブルーズ」(Me and the Devil Blues)。かつてブルーズは「悪魔の音楽だ」といわれたそう。しばしば歌詞にも“devil”が登場しますね。あと、こういうタイトルの漫画も出ていますね(平本アキラ氏著、ジョンソンの伝記に着想を得つつ大胆に脚色を加えた“RJ伝”。継続中)。

 

18-19曲目は、The Rolling Stonesが取り上げて有名になった「Love In Vain」。さきのキースのエッセイによりますと、「とにかくこの曲をやらなきゃ、って思ったんだ。タイトルも、歌詞も、曲想も、ライム(韻)も、すべてが美しい」だそうです。同時に「同じようにはできっこないから、他のやり方を考えたよ」とも言っていますが。この曲はまた、Peter Greenもオリジナルに近いアレンジでカヴァーしてます。

 

いろいろ申しましたが、何よりまず、(エリック・クラプトン先生が仰るように)皆さまご自身が聴いてみてください。