DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第19回「Robert Johnson」(4)

<今回取り上げた作品>
1Robert JohnsonTHE COMPLETE RECORDINGS1990
 ブックレットも充実しているので重宝しました。日本語ブックレットが付いているのを探せば、解説もわかりやすいかも。

 

 なお、2011年にはTHE COMPLETE RECORDINGS: THE CENTENNIAL COLLECTIONという“RJ生誕百周年記念ヴァージョン”が出ていまして、そちらの方が音質はよくなっております(聴き比べましたが、2011年版の方が「歌」「ギター」の音がクリアに聴こえます)。その後発見されたテイクも追加されていますので、これから購入しようという人はそちらがよいかと思います。録音セッションごと、OKテイク・別テイク別に曲順が並べ直されているので、旧版(1990年)に親しんだ耳にははじめ違和感がありましたけどね。
 
2Eric ClaptonUNPLUGGED1992
 アンプラグド・ブームの火付け役となったといわれる一作。冒頭の快活なインスト「Signe」に始まり、かつてはエレクトリック・ヴァージョンを披露(アルバムJOURNEYMANにて)していたBo Diddleyの「Before You Accuse Me」、Big Bill Broonzyの軽快な「Hey Hey」を経て序盤の山場、オリジナルの名曲「Tears in Heaven」へ。……ま、さすがクラプトンというところか演奏や歌に危なげは無し、オールドブルーズを楽しそうに演っているのが微笑ましい。
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上記の流れの他では、11曲目アップテンポの「San Francisco Bay Blues」(オリジナルはJesse Fuller)で客を盛り上げた後、RJの「Malted Milk」の弾き語りに静かに切り替わり、その後オリジナルの「Old Love」をしっとり聴かせ……最後に、アンコールで「Rollin’ and Tumblin’」になだれ込むトコが個人的に好き。「Rollin’~」の冒頭が欠けているのは、「演る予定でなかった曲を突然始めたから(録音準備が間に合わなかった)」ときいたことがありますが、そうなんでしょうか。だとしたら、いい話だ。ライヴで「フェイド・イン」するのってカッコ良くない?Cream時代にもやってたナンバーですけど、ここでのけだるいグルーヴも最高。
 
3)三井徹・小出斉共編『ブルーズの世界』(書籍、冨山房1995
 わたくし、おそらく音楽ファンの平均よりも「活字で情報を得ている」割合が高いと思われます。最近はそうでもありませんが、やっぱり昔は情報源が他にありませんでしたからね。しかも、雑誌を定期購読するようなわけでもないので、勢い単行本・ディスクガイドの類に頼ることが多くなるわけです。

 

 この本は、「ブルーズの風景」「ブルーズの構造」「ブルーズの100年」「CDガイド」「コラム(Blues Giants等)」他からなっており、「ブルーズ」という音楽を総合的に把握するのに大変参考になりました。ディスクガイドならばもっと詳しいものもありますし、特定のミュージシャンの伝記などはいろいろあるんですが、ブルーズというのがどういう土地柄で生まれ育ったか、その音楽的特徴は奈辺にあるか、といったことも込みで教えてくれるものは意外に少ないのです。あ、ピーター・バラカンさんによる「まえがき」も素晴らしいのです、例えば「私は、誰にも何に害も及ぼさず、しかも必ず精神的な支えになり、さらに教義も、権威を押しつける存在もない、新しい宗教を提案したい。/ブルーズ教である。/これは冗談ではない。私はブルーズの洗礼を受けた一九六〇年代半ば以降、そのあふれんばかりの抱擁力を頼りにしてきた。」という具合。
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 ちなみに、本ブログで「ブルー“ス”」といわず「ブルーズ」を表記し続けているのは、この本のご教示によります。(英語では最後の音は”z”であるということです。)
 
4VARIOUS ARTISTSTHE ROOTS OF ROBERT JOHNSON1990
 ロバート・ジョンソンのブルーズは物凄いものですが、それとていきなり無から生まれたわけではありません。米国南部の田舎や都市で奏でられていた先達たちの楽曲・演奏を無二の学習能力で吸収したからこそあのユニークな音が生まれた。このことは現在ではほぼ常識となっているようです。で、そういう「ロバート・ジョンソンの先達」の音源をまとめたのがこのコンピレーション。

 

 ジョンソンが直接元ネタにした曲もあれば、スタイルや演奏表現のヒントを与えたものもあるのです。Skip JamesDevil Got My Woman」はそこはかとなくドゥーミーな味わいが、Kokomo ArnoldMilk Cow Blues」はファルセットの使い方などが、ジョンソンに影響を与えているようです。一方、The Mississippi Sheiksの「Sitting On Top Of The World」は、ほぼメロディはそのままでジョンソンの「Come On In My Kitchen」になっていますし、Casey Bill Weldonの「Go Ahead Buddy」はやはりジョンソンの「They’re Red Hot」になってます。

 

Leroy Carrは都市のピアノ・ブルーズ(シティ・ブルーズ)名人でしたが、ロバート・ジョンソンは、ピアノのフレーズをギターに置き換える(低音を強調するなど)工夫をしたといいます。ギターについては、Son HouseMy Black Mama Pt.1」「Preachin' Blues Pt.1」のアタックの強さとスライド使いに多くを学んだようですね。 
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この他にも、後に山ほどのカヴァーを生むHambone Willie NewbernRoll and Tumble Blues」(これが「Rollin’ and Tumblin’」としてMuddy Watersに受け継がれ、ついにはEric Claptonに継承されるのです)や、ジョンソン以前のギター・ヒーローの一人Scrapper Blackwellの「Kokomo Blues」が聴けたり、とにかく楽しい一枚。古い録音なので音質はそこそこですが、「戦前ブルーズPre-war Blues」ってどんなの?っていう人にはおすすめできるかと。