てなわけで内田さんというギタリストに興味をおぼえたので、まずは地元の公立図書館へ行った私。憂歌団のカセットテープを借りる為です。(高校生はCDなんてめったに買えないの。)『憂歌団・ダイヤモンドコレクション』っていうのがあったから借りて、「シカゴ・バウンド」とか「お政治オバチャン」(「おそうじ~」ではない方)を聴いて「へえ、なるほど」と。歌詞は日本語なのがむしろ自然なわけで――米国の聴衆も基本的に母語を聴いてるわけだから――すが、当時の洋楽かぶれの私には新鮮に思えました。木村(Vo)さんの声も独特だしね。
ただその時点では、作品を頑張って集める方向へは進まず。それなのに、つまりオリジナル・アルバムは一枚も持ってないのに、住んでるところの近隣に「憂歌団来たる」という宣伝を目にするや、音楽好きの友人を誘って見に行ったりしたんだから不思議ですけどね。やっぱり、バンドというより内田勘太郎のギタープレイを見たかったんでしょうねえ。よほどまいっていたと見える。(私はギター弾きじゃないんですけれども。)
たしか、「お歳暮」と銘打たれていたから、年末のライヴだったんだと思います。行ってみてビックリ。そこそこの市の市民会館程度の広さはある会場だったと記憶するんですが、バンド(特にヴォーカルの木村さん)と聴衆の――心理的な――距離感がすごく近いんですよ。私はおとなしく見ていましたが、おそらく長年のファンと思われる方々は平気で曲間に(木村さんに)「オイオイ、弦切るなよ!」、「しっかりしろ!」、「だから弦を切るなって」云々と声をかけまくるんですよ。確かにその時、木村さんのギターの弦が(ピッキングの都合かどうかまではわかりませんが)切れちゃってはいましたけど……。で、それに木村さんもステージから応えるわけ。「スマン」とか「うるさい」とかね。
内田さんのプレイも満喫出来ました。エレクトリック・ギターも使うことはあるのですが、圧巻は他のメンバーが下がった状態でのギターソロ・コーナー。若い頃のエリック・クラプトンみたいなトーンで、弾きまくる!ふだんはこの(ロック的な)テクはしまってあったんだなあ、などと思いました。やっぱり、音楽は生演奏を観ると、得られる情報量がケタ違いですね。
憂歌団で最初に買ったのがこれ↓だったのです。今は亡きヴァージョン・メガストアでこれを買ってからなんとなく家族(親)に見せたら、“カヴァーじゃなくてオリジナル曲のを買えばいいのに”と「ごもっとも」な指摘を受けました。ただねえ、ブルーズを聴き始めたばっかりだったから、本家米国の曲を聴いてみたかったのよ。内田さんの「Sweet Home Chicago」を観た後だったしね。内田さんのスーパープレイを聴きたい私には大満足のもの。
憂歌団『BLUES 1973~1975』(1978)*[ ]内はカヴァー元
- Please Find My Baby [Elmore James]
- Key To The Highway [Big Bill Broonzy]
- It Hurts Me Too [Elmore James]
- Kind Hearted Woman [Muddy Waters/Robert Johnson]
- King Fish Blues [Tampa Red]
- I Can’t Be Satisfied [Muddy Waters]
- Careless Love [Lonnie Johnson]
- Please Find My Baby [Elmore James]
- Walkin’ Blues [Muddy Waters/Robert Johnson]
- Shake Your Money Maker [Elmore James]
- Look On Yonder Wall [Elmore James]
- Rollin’ & Tumblin’ [Muddy Waters]
- Good Morning Little School Girl [Sonny Boy Williamson]
- Take A Little Walk With Me [Robert Jr. Lockwood]
#1~7(1975.5.24)
#8~11(1974.9.28)
#8(intro)・12~14(1973.5)
<メンバー(憂歌団)>
木村充輝(Vo, Gt)
内田勘太郎(Gt, 12 Strings Gt, Harp)
花岡献治(Ba)
島田和夫(Dr)
上の曲目に、彼らが手本とした人々を掲げときました(ライナーノーツに示してあったの)が、エルモア・ジェイムズとマディ・ウォーターズが圧倒的に多いね。ロバート・ジョンソン曲も入ってますが、奥村ヒデマロさんのライナーによると、1975年時点では“ロバート・ジョンソンの曲は一般に発売されてなかった”ようなんです。憂歌団はマディのヴァージョンを参考にしているとのことで……ブルーズのレコードを手に入れるのも大変だったのですねえ。私みたいな青二才がコンプリート・レコーディングスを聴ける時代ってのは、恵まれてたわけだ。ありがたき幸せ。
音源として一番古いのは最後に収められている三曲(及び8のイントロにくっつけられた部分)で、これらはベース・ドラムのお二人が加入する前の木村&内田のコンビによるテイク。リズムセクションが無いので歌やギターは生々しく響きます。木村さんのこの声、内田さんのこのギター、十代なんですよね……信じられん。「Rollin’ & Tumblin’」はマディの必殺ナンバー(エリック・クラプトンも大好きみたいね、『UNPLUGGED』参照)、「Good Morning Little School Girl」はサニー・ボーイ・ウィリアムソンの名曲、「Take A Little Walk with Me」はロバート・ジュニア・ロックウッドの十八番。どれも、バンドスタイルでのカヴァーがいっぱい世に出ていたことと思いますが、どこ吹く風で二人はカントリー・ブルーズに仕上げちゃった。「Rollin’ and Tumblin’」の長あいアコースティック・ギター・ソロが素敵。時々アコギのボディをコンコン叩く音が入ってるのもイイ。
<続く>