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Todd Michael Hall「Overdrive」(『SONIC HEALING』2021)
Riot VのヴォーカリストTodd Michael Hallが、全面的にKurdt Vanderghoof(Metal Church)と組んで仕上げたソロ・アルバム。トッド曰く「音楽には人を癒すはたらきがある」、「いまはヘンなときだから、『ソニック・ヒーリング』はポジティヴなロックを目指した」。ここでいう「いま」というのはコロナ禍にみまわれている“現在”のことでしょう。
トッドの実力はすでに広く知られていると思います。私も数年前のLoud ParkでRiot Vのステージを観て、「ライオットは強力なシンガーを得たなあ」と感じたものです。歴代のヴォーカリストの曲を何れも歌いこなせるという意味でもね。ただ、作曲者としてどうなのかはよくわかりませんでした。Riot VではDon Van StavernとMike Flyntzがメインソングライターですから。そんな彼がソロアルバムを出したというんで、“Riot関連は何でも手に入れたい”私がスルー出来るわけがない。
アルバムそのものの前に、まずネット上に出てきたMVをチェックしました。この「Overdrive」……「Overdrive」っていうタイトルを聴いて反応しないヤツはRiotファンじゃないですが(記念すべきファーストアルバム『ROCK CITY』に同名の曲があるのです)、こういうタイトルをつけてくるところにどれだけ意気込みがあるのか?まず聴いてみます。
……これはこれは、もろに70年代ハードロックのテイストではないですか!良い意味で。“♪You shift my motor into overdrive……。”まさに初期Riot(70年代)の味わい。
トッドとカートという組み合わせからパワーメタルを想像したのは勘違いで、この曲によらずアルバム全編もっと前の古き良きハードロックのテイストに溢れております。例えばこれまたMVが作られている2曲目の「Let Loose Tonight」も、軽快なシャッフル・ブギーで、80年代未満のフィールしかない。“♪Music is my tried and true release, and when I hear it ,my caged spirit is set free……”音楽賛歌そのままの歌詞なんていうのも古風でよいよね。
こんな調子で、パワーメタルファンというよりはクラシックロック好きに向いてる作品です。あと、録音の品質の良さも特筆できると思う。おすすめの新作です。