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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第60回「Bobby Harrison」(5)

youtu.be

 ベーシストWalter Monaghamは、Mick Abrahams Bandに移籍しまして、後任にはPeter Dennis氏が加入。……とされるのですが、『THROUGH THE YEARS』にはMonagham氏が作曲に関与した曲が半分も入っているのでした。プロデュースはRodger Bainさん(Black SabbathBudgieJudas Priestの仕事で有名)、ヘヴィ・ロックの達人。

 

Freedom『THROUGH THE YEARS』(1971)

  1. Freestone
  2. Through The Years
  3. Get Yourself Together
  4. London City
  5. Thanks
  6. Toe Grabber

<メンバー>

 Bobby Harrison(Vo, Dr, Perc

 Roger Saunders(Gt, Piano, Vo)

 Peter Dennis(Ba, Moog, Vo)

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 ボビーさんの軽快なドラム・フィルからなだれ込み、ワウを効かせたロジャーさんのギターが冴え渡る「Freestone」。ファンク度2割増しなのは狙い通りなんでしょうか。Harrison/Saunders/Monagham作。ピーターさんのベースは、前任者ほど暴れ回らず端正ですが、動き回っていることは同じだったりする。おお、途中でテンポを変えてくるという(初めての?)試みもやってきたぞ!野心的でいいじゃないですか。

 

 Saunders単独作の「Through The Years」は、アコースティックの使い方やリフワークなどでそこはかとなくLed Zeppelin『Ⅲ』あたり)を思い起こさせます。これまたバンドにとっては新味では。ソーンダース氏の器用さに比して、バックの二人がやや頑固一徹気味なのは、まあ愛敬としておきましょう。彼らはZEPではないのだから、このくらいがよいのです。

 

 再びHarrison/Saunders/Monagham作の「Get Yourself Together」。彼らにしては軽快なノリを持つロックソング。さっきは前任者に比べて地味であるかのような書き方をしましたが、Peter Dinnisさんのベースもおとなしくなんかなかった。3分50秒過ぎにはベースソロもフィーチュアされているしねえ。終盤にはドラム・ソロも登場か。トリオで出来ることを限界までやろうという心意味は悪くない。CreamJimi Hendrix Experienceもなくなっちゃったけど、「トリオでロックしてやるぜ」ってとこかな。(といいつつ、次作では4人組になるのであるが。)

 

 「London City」はHarrison/Monagham作の微疾走ロック。ちょっと不思議なリフ&コード感でしてね、焦燥感を感じさせる部分と開放感を与える部分が交互に来るの。かと思うと、途中からStatus Quoのブギーみたいなシャッフルになだれ込んじゃって、ヴォーカリストはシャウトりまくり。元に戻るとまたさっきのサンドウィッチがお待ちかね。モナガンさんの置き土産なんでしょうか、ヘンな曲だけど、いい。これもバンドが前進してる証左でしょう。

 

 「Thanks」は、「Let It Be」みたいなピアノに導かれる、ドリーミーなバラード。Harrison/Saunders作。アコギにピアノにと八面六臂の大活躍はRoger。むう、才人だ。こういう曲でもドラミングは十八番の“♪ドタタ・タタタ・タタタ・タタタ”を繰り出しちゃうお茶目なボビーさん(?)。曲調だけなら初期Billy Joelの風味もある、これまた前作では想像できなかった味わい。

 

 ラストはHarrison/Saunders/Monagham作の「Toe Grabber」。7分を超える大作です。やや勿体ぶったイントロ(パーカッション主体)から、必殺のヘヴィ・リフレインに突入、ファンク度ちょい増しでお届けされるFreedom流ハードロック。こういう流れだとボビーのバタバタ・ドラミングがより美味しいって寸法だ。ベースはやや引きながらギターを押し出す。ロジャーさんというギタリストは過小評価どころか忘れられているのではないかと思われますが、なかなかの凄腕ではないのかと。後半のパーカッション(コンガとか?)をフィーチュアしたパートも善哉善哉。唐突に終わところも含めて、彼らも外連味というものをいい意味で意識し演出に取り入れるようになったんですね。

 

 ということで、前作『FREEDOM』と甲乙つけがたいなかなかの力作。そうですな、シンプルなハード・ブルーズロック(ドゥームのルーツとしても)を好む人は『FREEDOM』を、ファンキーなハードロック(+英国的ヒネリ)が好きな人は『THROUGH THE YEARS』を、まず聴いてみたらいかがでしょう。最終的には両方聴けばよいんですけど。

 

 なおこの後にもう一枚『FREEDOM IS MORE THAN A WORD』(1972)があるのですが、私は未聴です。しばらく前にどこかのCD店で見かけた時に思い切って買っておけばよかったと後悔しても、もう遅いのであった。

<続く>