DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第55回「White Spirit」(3)

 さあ、せっかくヤニック・ガーズの名前が出てきましたから、派生作品行っときましょう。……と、ここでIron Maidenに行かないのがどんぱすクオリティ。

youtu.be

Gillan『MAGIC』(1982)

  1. What's The Matter
  2. Bluesy Blue Sea
  3. Caught In A Trap
  4. Long Gone
  5. Driving Me Wild
  6. Demon Driver
  7. Living A Lie
  8. You're So Right
  9. Living For The City
  10. Demon Driver [Reprise]

<メンバー>

 Ian Gillan(Vo)

 John McCoy(Ba)

 Colin Townes(Key)

 Mick Underwood(Dr)

 Janick Gers(Gt)

f:id:yes_outsiders:20200330210937p:plain

 元ディープ・パープルのイアン・ギラン率いるハードロック・バンドGillanの6作目にして最終作。どうやら過去作に比べ売れなかったらしいんですが、イアンの喉はハイパーで調子が良いし、楽曲も決して弱くないんです。

 

 一曲めの「What's The Matter」は全盛期Deep Purpleを彷彿とさせる爆走ハードロック。当時はRainbowにしろWhitesnakeにしろ、他の元パープル組は「こういう」曲はやりませんでしたからねえ。NWOBHMに一番近かったのはやっぱりギランですよ。ギラン・マッコイ・ガーズの共作。イアンのブチ切れ気味ヴォーカルは凄い。ギターソロ前に“♪W~ow~ah!”ってシャウトするところがあるんですけど、翌年参加するBlack Sabbath『BORN AGAIN』での、例えば「Digital Bitch」終盤の叫びまくりを思い出させるんですよ。ギターソロは、水を得た魚の如くヤニックが活き活きと演奏。

 

 次の「Bluesy Blue Sea」はイアン自身好きな曲のようで、2006年に出した自身のキャリアを総括するセルフ・カヴァーアルバム『GILLAN'S INN』でも取り上げてました。(もちろんゲストに、本曲の共作者であるヤニックを招いて、です。)ブルージーなギターが特徴の、ヘヴィなロックンロール。やっぱりヴォーカルワークは強烈で、要所要所でエグいシャウトが決まります。

 

 コリンさんのキーボードが不思議な浮遊感を醸し出しバウンドする「Caight In A Trap」、爽快な展開がハードポップの趣の「Long Gone」(こういう曲もあったのね!?)、巨人ジョン・マッコイのグイグイ・ベースリフに押し出されるタフ・ソング「Driving Me Wild」と、ディープ・パープルではやらないような曲もいろいろ入ってるのが楽しい。

 

 Deep Purpleではやらないような、といえば次の「Demon Driver」でしょうか。どよーんとしたイントロ部分、バンドが入ってきたとおもったら全力疾走になる中間部分、コーラスに向けては転調を重ねシンフォニックに広がって、またドゥーミーになって、疾走して……“ヤバいプログレ”っていう感じ。怪しさ重さは翌年(イアンが)加入するBlack Sabbathに負けてない。この曲にも私はいままで気付いていなかったなあ。Ian Gillan Bandの作風にGillanの攻撃力を載せたら危険極まりないことになりました。ホラー・ハードロックっていうところですか、おそろしい7分16秒!

 

 次の「Living A Lie」は、少なくとも曲調はゆったりしてます。ちなみに本曲を含む3~7・10はギラン&タウンズ作品。コリン・タウンズさんマジ才人……この曲もメインは鍵盤。少しメランコリックなムードになったところで、明るい疾走ハードロック「You’re So Right」来たる。ギラン&マッコイ作、3分もない短い曲。ここまで言う機会がなかったけど、Mick Underwoodさんのドラムがハードで良いです。アタックがキツイ感じで曲が引き締まるの。ミックさんについては(第49回「Quatermass Ⅱ」(3))などもどうぞ。

 

 「Living For The City」は、Stevie Wonderのカヴァー。スティーヴィー大好きっていやあ、パープル関係者じゃGlenn Hughesですけど、イアンも好きだったのかね。原曲はStevie Wonder『INNERVISIONS』(1973)に収録(シングルにもなった)、この曲は楽器も歌も全部スティーヴィーがやってるんだって。私は『AT THE MOVIES』っていうコンピに入ってるのを聴いてますが、こりゃあカッコいいや。で、ギランはどうしたかっていうと、クールなこれをハードロック・フルバンドで全力カヴァーしたわけね。シャウトしまくりだし、暑苦しいわ(笑)。だけど、意外に良いのよ。タウンズさんのピアノが時々涼し気に入ったりさ。BBAの「Superstition」(Stevie Wonder曲「迷信」ね)より私は好きです。それで、ひたすらホットになった後に、「Demon Driver」のリプライズが静かに短く入って(インスト)終わり。

 

 GillanといえばBernie Torméで、実際彼の弾いた『GLORY ROAD』なんかも好物なんですが、Janick Gers時代にも意欲的で面白い作品があったのね。再発見しました。

<続く>