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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第55回「White Spirit」(2)

youtu.be

 皆さん、「Midnight Chaser」は聴いてくれましたかな?

 前回の『WHITE SPIRIT』が彼らの唯一のアルバムだったんですが、実際に録音されたものはもう少しあったようで、それらをまとめたのが次になります。

 

White Spirit『WHITE SPIRIT』(*Castle Music盤Disc2)

  1. No Reprieve [demo]
  2. Cheetah [demo]
  3. Backs To The Grind [demo]
  4. Nowhere To Run [demo]
  5. Can't Take It [demo]
  6. High Upon High [『METAL FOR MUTHASⅡ』version]
  7. Red Skies [『MUTHAS PRIDE』Version]
  8. Midnight Chaser [single version]
  9. Suffragettes [single B-side]
  10. Watch Out [demo]
  11. Backs To The Grind [single Version]
  12. Cheetah [single b-side]

<メンバー>

 Bruce Ruff(Vo)*10を除く

 Janick Gers(Gt)

 Malcolm Pearson(Key)

 Phil Brady(Ba)

 Graeme Crallan(Dr)

 +Brian Howe(Vo)*10のみ

 

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 デモ・ヴァージョン、シングルのAB面をかき集めたコンピレーション。オリジナル・シンガーBruce Ruff脱退後、後釜に据わったBrian Howeが歌う曲(10)が入っているのも貴重。

 

 デモ版は総じて、完成版(アルバム版)よりもラフで生々しいプレイが聴けます。ドラムが走り気味だったり、弾ききれてなかったり歌いきれてなかったりするようなところも含めて、こっちの方がライヴ感が有って楽しめたりするのだ。「No Reprieve」は暴走感と未完成な感じがたまらん。当時は未発表曲だった「Nowhere To Run」、これもディープ・パープル風の重軽(おもかる)ロック。「Can’t Take It」は彼らとしては速い方にはいるであろう曲ですが、シングル曲となった「Cheetah」と似てるかな。これもパープル味が濃い目。

 

 7インチシングルで出た曲としてはまず「Backs To The Grind」(11)があります。8ビートの明瞭なロックナンバーで、堅実ながらボンボンいうベースがいい感じ。キャッチーな歌メロもあって、シングル向きだったのもわかりますな。キーボードも派手にカラフルに。この曲のデモ版(3)もさっきまでのパターンと同じで、完成版よりラフだけど溌剌としてる。ドラムの音色、俺、こっちのほうが好きなんだよ。

 

 で、「Backs To The Grind」のB面だったのが「Cheetah」(12)で、こちらはもろパープル風の爆走ハードロック。これまたいま聴くと「Cheetah」(2)の素朴な方が好ましかったりする。この辺は個人の趣味です。

 

 もう一つのシングルはわが「Midnight Chaser」。アルバム版より1分半ほど短い。これは別録音ではなくて、後奏部分をバッサりカットしてフェイドアウトしちゃったみたい。したがって、アルバムで聴けるヤニックの粘っこい後奏リードがありません。知らなきゃなんでもないですが、アルバムの方を聴いてたら物足りないわなあ。 Riot「Warrior」の後奏ソロをぶった切っちゃうようなもんだからさ。

 

 さて、「Suffragettes」はそのB面、アコースティック・ギターで静かに始まります……2分30秒までは完全なバラードで、そこから切り替わってRainbow風のハードロックになります。大仰劇的な展開をした後に、アコギパートに戻って幕。結構な意欲作では?

 

 「Red Skies」は、当時のメタル・コンピレーションに参加したときの音源で、アルバム版とは異なるテイク。曲のストラクチャーや長さはほとんど変わりませんが、なぜか……アルバム版の方がカラッとしてる気がする。(音のキレとか、そういう話ね。)もうひとつ「High Upon High」もコンピ収録の別テイクらしいのですが、こっちはドタバタ性急な感じがあって若さが感じられ良いです。

 

 さあそして「Watch Out」。最後にとっておいたのは、これだけヴォーカリストが違うから。ミスターBrian Howe!私はBad Companyで歌ってるのを聴いて「イイ!」と思ったクチなんですが、こんな早くから活動してたのね。前任者とは声質も歌いまわしも違うので(地声が高くソウルフル)、楽曲が『WHITE SPIRIT』と同質のものであるにもかかわらず、別バンドみたいに聴こえる(悪い意味じゃないよ)。結局彼を迎えてのアルバムは作られなかったわけですが、出来てたらどうだったでしょうね。

【※本稿の初稿は投稿より数か月前に完成していたのですが、この間の5月6日にBrian Howeさんの訃報が入ってきました。たいへん残念です。】

 

 総じてデモ版擁護みたいなへんな感想になっちゃいました。わりあいルーツに素直なバンドだったみたいでそこは微笑ましいですが、「Fool For The Gods」や「Suffragettes」のような意欲的な作品もありましたし、底力のあるグループだったんじゃないでしょうか。結局アルバム一枚でなくなってしまいましたが、私たちはそれを大事に味わっていきましょうや。

<続く>