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Riot特集:時系列全作品紹介(14)『IMMORTAL SOUL』

Riot『IMMORTAL SOUL』2011

  1. Riot
  2. Still Your Man
  3. Crawling
  4. Wings Are for Angels
  5. Fall before Me
  6. Sins of the Father
  7. Majestica
  8. Immortal Soul
  9. Insanity
  10. Whiskey Man
  11. Believe
  12. Echoes
  13. Fight or Fall(Live)[bonus]

<メンバー>

Mark Reale(Gt)

Mike Flyntz(Gt)

Bobby Jarzombek(Dr)

Don Van Stavern(Ba)

Tony Moore(Vo)

 

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 前作から5年もたってようやく出た新作……であり、Mark Realeの遺作。

『ARMY OF ONE』発表後、Mike Dimeoは脱退(Masterplanに加入・専念の為)しました。Mike Tirelliが後任となるという告知があった気がしますが、その実現の前に「Thundersteel Reunion」という企画が動き出すことになったため、ティレリさんは音源を残していません。2008年は『THUNDERSTEEL』の発表から20年ということで、当時のラインナップ(+Mike Flyntz)が再集結することになったのです。

 

 Bobby Jarzombekは元Riot組ではおそらく一番の出世頭で、メタル・プログレ界隈では引っ張りだこの名ドラマーになっていましたから、おそらくスケジュールさえ合えば問題なかったでしょう。

 ベースのDon Van Stavernは、かつてのRiot脱退後はメタル表舞台では見かけなかったのですが、インダストリアル系のPitbull Daycareなどで活動していたのでした。Riot関連音源は何でも欲しい小生、今は亡きHMV(たしか渋谷)でPitbull Daycare『UNCLEAN』(2004)を発見・購入し聴いたものです。音楽的には私の趣味には合わなかったんですけど、DVSが確かに音楽をやってることがわかってちょっと安心したものです。

 たぶん一番のネックはTony Moore。Riotの後はほとんど音楽ビジネスから退いていたように聞いていたので……。とはいえ、当ブログ(第37回「Faith And Fire」(1))でも取り上げましたFaith And Fireというプロジェクトで2007年に突如(?)私たちの前にカムバックを果たしており、そこではMike Flyntzとも同僚だったので、Riotに関わってくることは無理筋ではなかったよう(だと後からわかるのですが)。

 

 経緯はともかく、Mark Realeのもとに、かつての仲間が参集してきまして、レコーディングも行ったようですが、まずは『THUNDERSTEEL』20周年を記念したコンサートが執り行われました。一生の不覚で、私はこれを観に行かなかったのですけど……往年の名曲を全盛期と遜色ない力量で歌うトニー・ムーアなど、概して好評だったようです。

 

 そして待望の新作音源を待つことになるわけですが、これはなかなか出ませんでした。確か、「Wings Are for Angels」だけ先行リリース――コンピレーションに入るような形で――があったように記憶しますが、アルバムの形で登場したのは2011年の秋のことでした。いやー、ホントに待ちましたよ。(トニーが脱退したとか、帰ってきたとか、真偽不明の色んな情報も飛び交ってたのよ。)

 

 さて、「音」についてはここ数作の流れを汲んでBruno RavelとPaul Orofinoの手を借りてるので、安心の高品質。特にブルーノはマスタリングとミックスも担当して大貢献。Westworldの縁がここまで効いてるね。その他ではとりたててゲストなどもいれず、「バンドとしてできることをやった」っていう潔さが感じられるつくりになっております。で、話題性や音質ばかりのリユニオン作だったらがっかりですが、とんでもない、これがまた名作といってよい内容だから恐れ入る。

 

 例えば冒頭の「Riot」。史上初めてバンド名が曲名になったわけですが(Iron MaidenとかBlack Sabbathとかと逆パターンですな)、これが隙の無い名曲。アタマにオーヴァーチュア的なギター主導のイントロが鳴ると、「Thundersteel」をさらに展開させたような高速リフと疾走リズムが加わって本編開始。まず耳が行くのは、必殺の字余りリリックも交えながら炸裂する、トニーのハイトーンヴォイス。“What’s it gonna take to make you riot ?”のコーラスも良いよね。マークとマイクのギター部隊の鉄壁さは言わずもがなですが、些か古風なツインのキメ・フレーズにしても、アグレッシヴなリフィングにしても、ヴェテランが作る正統派パワーメタルのまさにお手本。テクニカルに迫るソロも決まってる。そして最も素晴らしい――と私が思った――のが、ボビーさんのドラミング。いまやRiotよりビッグなバンドもテクニカルなバンドも経験済みだと思いますが、このアルバムでは全力で出し惜しみなくプレイしてくれてます。ヴァースの裏のフットワークの細かさ、金物の鳴らし方の繊細さ、音の切り方の巧さ……超一流というほかない。3分50秒辺りからの、タムを入れたフレージングも速さと重さを両立させたスーパープレイ。こんなのを涼しい顔で(ついでに両足裸足で)演るんだからとんでもないお方じゃ。私は、Mark RealeはWestworldRiot(2005)で観たことがありますが、ボビーさんだけは生で観たことがないのよね。Spastic InkとかFates Warningとかで来日してくれませんかね。

 

 というわけで、「Riotってどんなバンド?」って訊かれたら、従来なら「Warrior」とか「Swords And Tequila」、あるいは「Thundersteel」を聴かせるところだったと思いますが、新しい時代では「Riot」を聴かせるのがいいやな、って思えるくらい。DVSとトニーの共作。

 

 2曲目「Still Your Man」は、“♪Hey Johnny, brother take may hand. I remember I am still your man.”などと歌われる、「Johnny’s Back」の続編みたいな(?)楽曲。いきなりのドラムソロも凄いことになってますが、ベースがリードするあたりがあの曲に似てる。DVSのベースは、音の像がピート・ペレツと対照的な気がします……Pete Perezは硬質な音で細かな動きを粒立ちによって聴かせる感じだったんですが、ドンさんは音の粒を立たせずに全体を包むようにしてる気がするんですね。これはRiot V時代に入っても同じ。起承転結の練られたギターソロもナイスですが、これはMike Flyntzのお手柄。

 

 なお本作では、ギターパートはほとんどマイク・フリンツによって録音されました。レコーディング時にはマーク・リアリの体調がかなりわるくなっており、ほとんど弾けなかったというのです。このことはマークが亡くなった後から知ったのですが、言われなければわからなかったくらい、マイクのプレイ(特にメロディアスなフレーズの構築法)はマークの味わいを会得したものとなっていました。ソングライティング時に、元気なマークがフレーズやソロのアイディアをマイクに示していたのか、マイクがマークに“なりきって”考えたのかはわかりませんが、「ツイン・リードのバンド」としての味わいをきちんと保っているところは素晴らしいと思います。

 

 さて、次へ行きましょう。アジアか中東かわかりませんが、ちょっと非欧米っぽいリフが印象的なミドルテンポの「Crawling」。ギターソロもここでは速弾きよりも美旋律構築を優先。ヘヴィというか陰鬱な雰囲気を演出。“♪I’m sorry, I’m sorry……”。1・2曲目がDVS/Tony Moore作品だったのに対し、これはDVS/Moore/Flyntz作。

 

 「Wings Are for Angels」は、アルバムより前に、『ONE FOR ALL, ALL FOR ONE』(2011)という「東日本大震災チャリティ・アルバム」に入って世に出ていました。Flyntz/Moore作、「Riot」に続くスピードナンバーで、ボビーさんのバスドラが心地好すぎる。トニーによるシリアスな歌詞は磨きがかかって、響きも美しい。スリリングなギターソロもナイス。マーク・リアリの流儀に倣って、三番ではオブリを其処此処に挿入するマイク、堂に入ってます。フリンツさんもこの曲は自信作みたいで、Riot Vになってからも演奏し続けていますね。あ、ボビーさんのタム回しが最高っていうのも付け加えとく。

 

 ヘヴィなリフィングで幕開けるミドルテンポの5曲目「Fall Before Me」。途中で転調していくギターソロのパートや、トニーによる多重ヴォーカル(ほのかに)が聴き所かな。おもいのほか起伏に富んだメロディラインでもあるね。

 

 ここでまた比較的ストレートな疾走ナンバー「Sins of the Father」が来ます。この曲、わが(勝手に決めた)黄金の方程式「Riot+3分50秒=名曲」にあてはまるのでありますが、如何。DVS/Moore作。トニーが抑えるところと張るところをうまく切り替えるのもメリハリを生んでますが、短い曲の中でドラマを強調してるのはやっぱりフリンツさんの起承転結ギターソロかもね。

 

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 次の「Majestica」はFlyntz作の短いインスト。アルバムのオープニングなんかに使われそうな感じの序曲っぽさ。LPならB面の幕開けなんですかね。そこから次の「Immortal Soul」は続けて聴くと劇的で良いね。アルバムの題名にもなったこの曲、Reale/Moore作でした。ここで漸くリアリ作品が登場。古き良きハードロックを感じさせつつも、硬派なメタルミドルに仕上がっております。聴き所はギター・ソロの後半。Riot歴二十年余りの小生なけなしの意地にかけて申しますが、ここ「だけ」がたぶん本作中Mark Realeの手になるソロ。“♪One more immortal soul……”に始まるコーラスをトニーが歌いきった後、2分15秒辺りから、まずマイクがフックのあるコンパクトなソロを披露します。2分30秒辺りから、転調するバックを背景にソロが交替――実は音質もよく聴くと違う――しまして、ひときわ粘っこいプレイがあらわれる。スピードは抑え目、絶妙のタメとヴィブラート、弦二本を絡めたお得意のフレーズ……これぞ「マーク・リアリ印!」な名プレイ。さきほど述べたようなわけ(体調)で、本作ではマークのプレイ自体はほとんど聴けないのですが、ここがあるからやっぱりこのアルバムはマーク・リアリの作品なのだ。他のメンバーもそれがわかってるからタイトルナンバーとして立てたんじゃないのかな。

 

 「Insanity」はFlyntz/Moore作の疾走楽曲。さきに細かいこと言いますが、疾走感を出すためには、敢えてツーバスを踏まない方がいい時もあるってことを、ボビーさんはよく心得てますよね。歌がワード少な目で聴かせるタイプの時はこういう方がいいんでしょうか。この曲のギターソロは、緩急のつけ方からしてフリンツ流構築美。フェイドアウトしながらトニーが“♪We fight and we fall, and never recall, our history is a  insanity……”

 

 次もリアリ関与の「Whiskey Man」(Reale/Moore/DVS)。ネット上に、本作のライティングセッションの様子が上がってるんですが(Riot writing session)、そこでマークたちがこの曲のバッキングを合わせてみてる場面がありました。私はこの曲のリフを聴いたときに「Babylon」(『NIGHTBREAKER』)を思い出したんですが、マークがああいうリフ好きなんでしょうか。歌は、ヴァースのところはやや語りっぽいというか長台詞ふうで、ブリッジを経てのコーラスがキャッチーに展開するのです。“Please call me Whiskey Man when the bottle’s in my hand……”。不思議と軽やかな感じもある疾走感が魅力ですかね。

 

 「Believe」も、上記のライティング・セッション動画でマークがカメラに向かって「こういうリフだよ、ドラムは入りに合わせてクラッシュを入れるんだ、云々」とイメージを語ってるのが印象的なの。Reale/Moore/DVS作。実際、そのアイディア通りに全パートがドン!で入るパワフルソング。この曲なんかは前の数曲と逆に、バスドラが空間を埋めるように入ってるのが効果的なんだね。ドラミングは奥が深い……。トニーのヴォーカル操縦も素晴らしいですが、一通りコーラスまで終わった後のテンポを落とした箇所は説得力がある。ソロはフリンツさんが入念に仕上げてます。

 

 本編ラストは、Reale/Mooreによる「Echoes」。疾走ナンバーですが、ビッグな歌のメロディを聴かせる、スケールの大きさを感じさせる曲。ギターの単音弾きによるリーディング・リフレインが耳に残るうえ、コーラスに入っていくところのコードの感じが最高なのです。“♪Echoes on the wind, faces reflected in mirrored eyes, another soul I must have been…….”Riotはメロディにこだわった曲作りをしてきましたけど、この曲は美旋律を極めていると思います。Mark Realeと聴衆の別れの曲となってしまったという感傷を抜きにしても、素晴らしい。The Beatlesあたりから楽曲構築のエッセンスを学び続けてきたMark Realeのメロディセンスが全開。2分50秒辺りからギターソロ。弾いているのはフリンツさんで、3分02秒辺りでは彼がかつてRiot版「Burn」(『NIGHTBREAKER』)のソロに織り込んだ得意のスロウタッピング・フレーズも聴かせます。3分12秒からは、歌のコーラスを発展させたフレーズをツインの様式美で表現。マークとマイクが弾いてるみたいですよ。歌に戻っていって、最後はややしんみりと終わります。

 

 あまりに美しいエンディングなので、蛇足と言えなくもないですが、次はボーナストラック。一曲でも多くRiot音源を聴きたい私は、歓迎しておりますが、「Fight or Fall」(ライヴ)。本作制作のラインナップによるプレイです。かつて『THUNDERSTEEL』期にはオープニングとして重用された曲でしたね。トニーもよく声が出ているし、マークもまだ元気に弾けていたのですが。(ちなみに、私が購入した日本盤はこの曲ですが、ヨーロッパ盤は「Johnny’s Back」と「Metal Soldiers」のライヴが入っているようです。)

 

 2012年1月25日に、Mark Realeは亡くなりました。彼が長年闘病生活を送っていたことは身近な人を除いては知らなかったようですが、私も大変驚き、悲しみました。しばらくして英語で追悼サイトが立ち上がったので、拙い英語でcondolenceを記入したものでした。Riotはその後、「終わる」という話も「続く」という話もありましたが、最終的にはRiot Vという新ラインナップによって継続されることとなり、今日に至っています。Riot VはMark Realeにきちんと敬意を払って活動していますし、内容的にもマークの遺産を活かす存在となっていますが、いちおうは別バンドとみるのがよさそうです。本特集は、「Mark RealeのバンドとしてのRiotの、オリジナルアルバム」のご紹介まで終えたところでいったん締めくくりたいと思います。Riot Vや各種ライヴ盤、アーカイヴ作品群については機会をあらためさせていただきましょう。

<本特集完>