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Riot特集:時系列全作品紹介(12)『THROUGH THE STORM』

Riot『THROUGH THE STORM』2002

  1. Turn the Tables
  2. Lost inside this World
  3. Chains(Revolving)
  4. Through the Storm
  5. Let It Show
  6. Burn the Sun
  7. To My Head
  8. Essential Enemies
  9. Somebody
  10. Only You Can Rock Me
  11. Isle of Shadows
  12. Here Comes the Sun

<メンバー>

Mark Reale(Gt)

Mike Flyntz(Gt)

Pete Perez(Ba)

Mike Dimeo(Vo)

+[guest]Bobby Rondinelli(Dr)

 

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 前作からまた間が空きましたね。その余波で、Bobby Jarzombekが再び抜けてしまいました。ボビーさんはこの間に、当時元Judas Priestロブ・ハルフォードが立ち上げたバンドHalfordに参加し、より名前を知られるようになりました。かくいう私も、2000年に出たHalford『RESURRECTION』はリアルタイムで聴いて感銘を受け、「ボビーさんのプレイも聴けて美味しいじゃん」となったのですが……彼の活躍とは対照的に(?)、古巣のRiotの音沙汰ないのが不安にもなったものです。

 

 そのころから段々使われるようになったインターネット(Riotもこの頃オフィシャル・サイトを開いたんじゃなかったですかね?)で、少しずつ小出しにされるリリース情報だとか、一曲だけ聴ける音源とかにずいぶんヤキモキさせられたものであります。で、ようやくリリースというとき、まずこっちがチェックしたのはやはりドラマーでしたよ。この『THROUGH THE STORM』では結局正規の新メンバーは決まらず、元Rainbow/Blue Öyster CultほかのBobby Rondinelliがゲストに迎えられていたのでした。

 

 こちらのボビーさんにはパワーメタルの印象はなかったので、「どうかな?」とは思っていたんのですが、わたくし個人としては結果的には良かったんだと思います。あとで順次述べますが、本作のハードロック寄りの作風には合っていますから。まあ、バンドとしては、ライヴ活動につながるメンバーが決まらない状況は困ったでしょうけども。

 

 まずは、ジャケットを見ますか。まさに「through the storm」な写真が表紙となっていますが、これは(確かテキサスで)Mark Reale自身が撮影していたピクチャーを利用したものなんだそうです。マスコットのアザラシのジョニー君が姿を隠しまして、些かシリアスな感じにもなっていますが、私はこういうのもいいと思いました。

 

 プロデュースは例によってMark RealeとPaul Orofino、Millbrook Studio謹製。Tony Harnellのバッキング・ヴォーカルもあるし、ヴァイオリンでは以前と同じくYoko Kayumi氏が参加。制作体制は安定してきたといえるのでしょうね。あとは肝心の楽曲という事になります。

 

 冒頭の「Turn the Tables」は、私の記憶が確かならば、アルバムがリリースされる前に前倒しでネット上に公開されてたハズ。で、私はこの曲が凄い好きなんですわ。Riotの新曲に飢えてるときに聴いたから、っていうこともありますが……お得意のリフにナチュラルな疾走感、情感表現のコントロールをマスターしたシンガーによる歌唱、両ギタリストの魅力を余すところなく繰り出すギターソロ……いう事なしでした。(前作との対比でいうと、Peteのベースがややおとなしいかもしれませんがね。)曲終盤で歌に絡むギターも彼ら独自の味わい――「Warrior」から一貫して失われない持ち味。Reale/Dimeo/Flyntz作品。

 Mike Dimeo期Riotの代表作となってもおかしくなかったのですが……フォローアップするツアーがうまくまわらなかったためか、ステージで披露される機会が逸されてしまい、埋もれた名曲になっちゃいました。

 

 次は、Riotには割と珍しい16分のリズム刻みで突進する「Lost Inside This World」。Bメロからトニー・ハーネルのバックアップも受けて歌い上げるディメオ歌唱、捻りなしで得意のスケールを奏でるMark Realeのギター、高低を巧みに織り合わせるMike Flyntzのソロ……とこれまた聴き所いっぱい。終盤フェイドアウトしながらのところで弾かれるギター・フレーズまで美味しい。

 

 「Chains(Revolving)」は、やはり前曲同様Reale/Dimeo作。こちらはグッとヘヴィなナンバー。Bメロ部分のロンディネリ・ドラミングのライドシンバルが心地好い。その後の“♪Let it out, the chains revolving in my mind……”云々のサビも耳に残ります。ここまでの3曲が3曲とも異なる味わいなのは個人的に好印象。『NIGHTBREAKER』以来のアルバムでは、似た曲が続くことが少なくなかったですからね……

 

 タイトルトラック「Through the Storm」は6分超えの大作。落ち着いたテンポの8ビートなんですが、ピートのベースは(音量こそ小さめですが)活発に動いてます。キーボードが割と活用されていること、リード・ヴォーカルの歌い上げが活かせる曲想であることから、マイク・ディメオさん大活躍の曲でもありますかな。ギターソロは、速弾き抑え目。むしろ終盤の歌に絡むギターがマークの必殺技で、エモーショナル。この曲、マークのお気に入りなのでしょうか、2005年の来日公演で本作からはこれが選ばれました。(個人的には「Turn the Tables」も観たかったんですが……。)

 

 「Let It Show」は、ディメオ得意のバラード。物悲し気なヴァースから、やや開放的なコーラスへの展開、ギターソロを経ての転調など、ツボをおさえた作り。ギターも徹頭徹尾情感表現優先、泣きのギターを弾かせたら天下無双のリアリ先生の粘っこいプレイが聴けます。強いて言えば、全編にまぶさるキーボードの音色(ストリングス調)がやや単調でチープに感じられるかなあ。

 

 ややまったりしてきたところで疾走ナンバー「Burn the Sun」が登場。Reale/Dimeo/Flyntz作品です。ドラマーの個性もあるのか、パワーメタルにはならず、レインボー風味になってますかね。“♪Fire from the sky, fury from above……”に始まるコーラス部分の詞はメロディによくマッチしていて聴きやすい。奇をてらった部分の無い楽曲ですが、ギターソロ後半の二本の絡み(2分45秒辺りとか)は耳を引きます。

 

 次がRiotには珍しいタイプの、厚めのサビをもつナンバー「To My Head」。“♪It goes right back to my head.......”っていうところね。やはりミドルテンポの「Little Miss Death」(『THE PRIVILEGE OF POWER』)なんかがちょっと近いでしょうか?決して派手ではないんですが、拍の表や裏を巧みに強調して表現するボビー・ロンディネリさんのドラムが見事。

 

 「Essential Enemies」はReale/Dimeo/Flyntzのペンによるタフな8ビート。Aメロのところでスネアを表4つ打ちにするタイプの曲って、Riotにはこれまでなかったんじゃないかな。ヴォーカルにエフェクトが掛けられていたり、ギターも珍しくエフェクターを活用していたり、間奏でテンポを変えつつ鍵盤をフィーチュアして前作の「Cover Me」の中間部分のようなミステリアスな雰囲気を出していたりと、彼らにしては実験的な作品かな。終盤で切り込んで来るギターのフレーズはマークらしさ有り。おお、これも3分50秒で収まったぞ。

 

 「Somebody」は日本盤ボーナストラックとのこと。ゆったり気味のロックソング。テンポのこともあってか、粘っこいヴォーカルが聴けます。半音ずつ下がっていくコード進行のところのあととかね。派手な盛り上げはなく割と淡々と終わります。

 

 次に来るのがUFOの「Only You Can Rock Me」のカヴァー。マーク達はUFOThin Lizzyなんかが大好物ですから、演奏には難なし。無難すぎるくらい。キーボードは、Westworldでマークと協働したIce AgeのメンバーJosh Pincusが弾いてます。(Josh Pincusさんについては、第41回「Ice Age」(1)をご参照。)ディメオ歌唱もあってるんじゃないかな。トニー・ムーアやガイ・スペランザでは違和感があったでしょう。

 

 アルバム本編最後は、『INISHMORE』の「Inishmore」を思わせるインストゥルメンタル「Isle of Shadows」。ディメオのキーボード、ゲストによるヴァイオリンや笛もフィーチュアされてます。ギターが鳴りながらフェイドアウト

 

 ボーナス的に――ボートラではないのですが――入っているのが、「Here Comes The Sun」、もちろんThe Beatlesのあの名曲です。マークが(たぶん)プロデューサーと会話するところから始まります。原曲は歌がありますが、ここではアコースティック・ギターオーケストレーション(おそらく鍵盤)でインストになっています。これは、ビートルズというよりは2001年11月に亡くなったGeorge Harrisonへのトリビュート。マーク・リアリ(1955年生まれ)は、同世代の多くのミュージシャンがそうであったように、1964年のThe Beatles訪米をテレビ(エドサリヴァン・ショウ)で観てしまい、「僕もこうなりたい!」と思ったんだそうです。マークのビートルズ好きはドン・ヴァン・スタヴァンさんなどが証言されていますよね。マークのギタープレイ・コンポジションの「メロディ」の側面はビートルズやジョージから学んだものだったのかもしれないと思うと、興味深いですね。