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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第50回「Red Dawn」(1)

youtu.be

 しばらく前に中古店で見かけて、どういうグループかも知らずに買った作品。店の説明タグに“Dave Rosenthal参加”って書いてあったというだけでね。通常のハードロックファンなら「あー、Rainbowにいた人ね」となるところでしょうが、私にとってDaveは「Billy Joelバンドの鍵盤マスター」なんですよこれが。あのビリーが認めて鍵盤を弾かせてるんだから凄いに違いない、っていうわけ。

 

 ただ、本作に関してはRainbowを想起するのが正解だったかも。なにしろ、ドラムはやっぱり元RainbowのChuck Burgi、ベースは90年代RainbowのGreg Smithだからねえ。アレ?ChuckもいまはBilly Joelバンドの固定メンバーだから……RainbowBilly Joelって意外に近いんじゃないの?

 

 まあそれはさておき、なかなかいい作品だからちゃんとご紹介しましょうね。

 

Red Dawn『NEVER SAY SURRENDER』(1994)

  1. Flyin’ High
  2. I’ll Be There
  3. Liar
  4. Dangerous Child
  5. Promises
  6. I Can’t Get over You
  7. Christine
  8. Take These Chains
  9. She’s on Fire
  10. Never Say Surrender

<メンバー>

Dave Rosenthal(Key)

Tristan Avakian(Gt)

Larry Baud(Vo)

Greg Smith(Ba)

Chuck Burgi(Dr)

 

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 プロデュースはデイヴ・ローゼンタール自身が務めてます。また、8がギタリストAvakianの単独作であるのを除けば、ローゼンタールは全曲の作曲に関与してますので、彼がリーダーだったことは間違いありませんね。

 

 作品全体のトーンは、メロディアス・ハードロックですね。1や2をちょっと聴けばわかるように、フックがありメロディアスな歌+きらびやかな鍵盤+華やかなギターソロが堪能できるしろもの。私が好んでる作品の中では、Seventh Key(元Kansas・Streetsの面々によるバンド)『THE RAGING FIRE』(2004)あたりがこういう感じを素直に出してます。

 

 いわゆる「メロハー」とちょっと違う個性になってるのは、ヴォーカルの声質じゃないですかね。所謂細くて高い美声、というのじゃなくて、やや野太さを感じさせるヴォイス。ミスマッチじゃないかという感想もあったようですが、きちんと歌えているんだから私は良いと思います。

 

 1曲目の疾走曲「Flyin’ High」からしてイイですよ。「アタリを引いた!」って思ったもんです。この心地よいテンポ、最近じゃ逆に聴けなくなったキラキラした鍵盤のフレーズ、出しゃばらないけど推進力になってるリズム隊。キーボードソロを満喫した後に、さらにギターソロがなかなかテクニカルに攻めてくるのも心憎い。エンディングの‟♪ダダダダっ……”っていうところ、何かに似てるんだけど思い出せない。シンフォニックなフィナーレです。

 

 アコースティック調のギターに導かれて穏やかに始まる「I’ll Be There」ですが、コーラスに入るあたりから全パート参加となって快活なロックソングに展開。ソウルフルというか、暑苦しいくらいのLarryさんの歌唱がいい感じ。この人は他にNetworkっていうバンドに居たそうですが、未聴です。

 

 3曲目はやや不安感をあおるようなキーボードのフレーズで始まり、ヘヴィなギターリフがの便乗から開始する、弾むミドルテンポの「Liar」。軽すぎず重すぎないチャックのドラミングも職人技だなあ。あと、ここではじめて言及しますが、Tristan Avakianさんのギターソロはテクニカル且つメロディアスで素敵ですわ。ほかの仕事は裏方のようなのが多いみたいで、ギタープレイの目立った作品はあまりないみたい。Trans-Siberian Orchestra『THE LOST CHRISTMAS EVE』(2004)で一部弾いてるっていうくらいかなあ。勿体ない。

 

 そのギターがガツンとリフを繰り出すところから始まる次の「Dangerous Child」は、前奏でも短くギターソロが聴ける。プロデューサーとしてのローゼンタールさんはトリスタン君をフィーチュアして目立たせようとしたんじゃないですか。いや、それだけの価値あるプレイをしてると思いますがな。

 

 5曲目の「Promises」は、所謂バラードです。ラリーさん、こういう曲もきっちり歌えてますからいいシンガーじゃないですか。繊細さよりタフなイメージが先行しちゃうのは確かだとしてもね。トリスタンさんの泣きのギターソロもいい感じ。比較的無名のこの二人をヴェテラン(レインボー人士)が引き立ててるっていう図式は美しいと思いますね。というか、Rainbowだって、Ritchie Blackmoreが次々と有望新人を発掘しては世に送り出してきた歴史(クビにしまくったという面もあるが)がありますもんね。

<続く>