DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳238

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Gates Of Ishtar「Red Hot」(『AT DUSK AND FOREVER』1998)*2016年リマスター版

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 今回も極端音楽でいっときますか。デス・メタルは、スラッシュ・メタル以上に(私が)疎いジャンルで、何を聴いたらいいのかよくわからない。笑っちまうぐらい極端なCryptopsy(最初に『NONE SO VILE』を聴かされた時は驚いた)、ジャンルの創造者Death(テクニカルだから偉いんじゃない、デスにもフックがあるというのが凄いのだ)を除けば、北欧のメロデスをちょこちょこ聴いたくらいなものでした。あ、CarcassNapalm Deathはちょっと好きかも。かくのごとくデス・ヴォイスそのものに抵抗は(さほど)ないのですがね……

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 Gates Of Ishtar『AT DUSK AND FOREVER』は、某専門店(中古)でお買い得になってたのでジャケ買いした代物。「イシュタル」なんて名前についてるから、神話趣味なのかな、くらいの(例によって)いい加減な認識。

 で、アルバム本編は気に入りました。アタマの「Wounds」、続く「The Nightfall」、タイトルトラック「At Dusk And Forever」と、程よいアグレッションの発散とテクニカルな演奏の組み合わせ。ドラムがよいね!Oskar Karlsson氏……と調べたら、2016年に亡くなっていました。なんという……。素晴らしいドラマーは、顕彰し続けていかねばなりませぬ。

 

 私が手にしたのは2016年のリマスター版だったのですが、本編をずーっと聴いていった後に、どこか聴き覚えのある曲が始まったのね。あれ?と思うとコーラスで“♪Red hot!”を連呼し始めたので判明、ご存じMötley Crüeの「Red Hot」でした。どうやら1998年のオリジナル・リリース時は日本盤オンリーのボーナス・トラックだったようなのですが、リマスター再発するにあたり、曲順を少し変えて収録した模様。

 この曲がほかのオリジナルより良いという意味ではないのですが、デス/スラッシュ系ではなくL.A.メタルの代表的楽曲(だ、よね?)をとり上げている心意気に妙に感じ入りましてなあ。スウェーデンGates Of Ishtarオリジナル・ナンバー(特にドラム)を堪能した後にコレを味わうのもオツでしたよ。

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どんぱす今日の御膳237

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Celtic Frost「Into the Crypts of Rays」(『MORBID TALES』1984

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 メタル愛聴歴はそれなりに長い当方ですが、スラッシュ・メタルの熱心なファンではありませんでした。有名どころ(四天王)をいくつかと、TestamentWatchtowerMekong Delta、くらいにしか興味がなかったというのが正直なところ。

 

 最近になって、Burrn!叢書のスラッシュ・メタルの真実』『スラッシュ・メタルの誕生』を続けて読み、当該ジャンルの意外な面白さ――取り組んでる面々の“メタルバカ”な熱さも――に気づいてちょっとずつ手を出すようになった次第。さらにアメリカン・スラッシュだけに飽き足らず『ユーロ・スラッシュ・メタルの源流』『同2』も読むに至るわけです。(こうしてみると私は活字をかなり情報源にしておるね。奥野さんに毒されてることになるなあ……。氏の古典的HR/プログレへの造詣の深さには好感と敬意を覚えますけれども。)

 

 Celtic Frostという名前はもちろん昔から耳にして(目にして?)いたわけですが、音を聴いたこともなかったし、はっきり言えば興味もなかった。前述の書籍で当事者の言を知って、はじめて探してみることになりました。

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 アルバムごとにやっている音楽性が変わる、といわれているので、どこから聴けばよいのか迷いましたが、「そういう時は初期作品から」というわけで、『MORBID TALES』をゲット。おそるおそる再生すると……

 

 うわ、なんだこれ! 「Human (Intro)」が無茶苦茶怖え!コラージュ音源なんだと思うんですが、ヒトの声(断末魔の叫び的な)が延々繰り返される恐怖劇場。暗がりで聴きたくねえな。40秒間そのホラーに耐えると始まるのが、今回の「Into the Crypts of Rays」。途中にダークでドゥーミーなパートを挟みますが、基本的には突進型リフ・ロック。こりゃ確かにスラッシュ・メタルブラック・メタルの始祖の一つといえますな。

 ドタバタしてるドラム、技巧的とは言えぬ弦楽器と歌。私の乏しい語彙でいえば、“Venomっぽい感じ”なんですが、あっちが“ジョークをジョークとしてやる”ようなところがあるのに対し、Celtic Frostはどこか“しゃれにならん感じ”を醸し出してる気が。イントロの「Human」が怖すぎるせいかもしれんけど。

 みなさまにお勧め!とは言いませんが、「怖いもの見たさ」がご自分のなかにある人は一度どうぞ(!?)。

どんぱす今日の御膳236

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Testament「The Haunting」(『THE LEGACY』1987)

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 ファーストアルバムの曲ですが、2001年のベスト盤『THE VERY BEST OF TESTAMENT』で初めて聴きました。というか、私は同ベスト盤ではじめてテスタメントを聴いたのでした。スラッシュ・メタルなんてのもよく知らず、“なんかかっこよさそう”くらいの感じで手に取ったんだと思いますが、冒頭に入っていたコレ「The Haunting」を聴いて「おっ!」と思いましたね。一本調子でないリズムチェンジ、メロディアスなリードギター(Alexのソロ)、程よくアグレッシヴながら決して雑にならない唄。正統派メタル好きの者からすると、とっつきやすかったといえるでしょう。

 

 前述のベスト盤には、メンバーによる楽曲回想がついていました。(日本盤を買ったので対訳もあった。)この曲については、最初期の彼らがお互いの家に上がり込んでリフを練りまくってた、みたいなことが記されていたと記憶しますけど、そういう“バンドやろうぜ”な気概っていいですよね。

 

 その後もう少し細かく(オリジナル・アルバムも少しずつそろえて)聴くようになってみると、歴代ドラマーの妙技も楽しいバンドだと思えるようになりました。『DARK ROOTS OF THE EARTH』における“atomic clock”Gene Hoglanのプレイは、ブラスト・ビートの導入なども含めてバンドの表現力を増しましたよね。『LIVE AT THE FILLMORE』のJohn Detteもナイスな安定感だった。

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 そういう人たちに比べると、オリジナル・ドラマーのLouie Clementeはワン・バスでしたし、手数も決して多くなく、地味に思われそうなところですが……私は彼のドラミングに捨てがたい魅力も感じる、のです。初期の名曲「Over The Wall」なんかを聴いても、機械的“でない”彼の太鼓がGreg Christianのベースと生み出すドライヴ感には深い味わいが。80年代後半のライヴ音源を聴いても、手数も安定感も後任諸氏ほどではないのに、バンドを後ろから煽りまくっているルイのドラミングのアツさに感動できます。

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どんぱす今日の御膳235

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Status Quo「Little Lady」(『LIVE ALIVE QUO』1992)

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 史上最高のヘヴィ・ブギー・バンドStatus Quoの黄金期は70年代中盤だと私は思っていますが、その他の時期がつまらないということではありません。初期のサイケ・ポップ時代も一筋縄でいかないし、80年代以降のポップな味わいも捨てがたい。

 とはいえ、70年代の曲は70年代のライヴ盤で聴けばいいよね……とコレを流していた自分に説教をしないといかん。クオはいついかなる時代でも最高のライヴを披露していた(いる)、というのは、比喩ではなく文字通りの事実だったのであります。

 

 Rick Parfitt(故人)のペンによる本作「Little Lady」は、75年のアルバム『ON THE LEVEL』の冒頭を飾った爆走ブギー。次のヘヴィ&スロウな「Most Of The Time」(Francis Rossi/Bob Young作)と組曲のようにして演奏される(つまりアルバム同様ってことですが)ことが70年代には多かったようです。この『LIVE ALIVE QUO』では単独で、しかもクロージング・ナンバーになっているのがちょっと新鮮。

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 あと、このテイクを紹介したかったのは、『LIVE ALIVE QUO』のジャケットが素晴らしすぎるから。見てくださいこのカッコよさ。Status Quoのブルーのデニムは“制服”みたいなモンですが、Judas Priestのレザーなどと同じ美学に貫かれております。というか、メタル・バンドのヘッド・バンギング文化の先達はそもそもクオのステージングですよね。Status QuoからJudas Priestへの伝承ってあまり語られない気がしますけど、かなり重要なんじゃないかな。70年代のクオは、Judas Priestの同郷の先輩Black Sabbathとレーベル・メイト(Vertigo)だったしね。英国ヘヴィ・メタルの、Status Quoとの関係性は軽んじられてはなりますまい。

 

 もう一曲だけ90年代クオで特に好きなのを挙げとくなら、これかな。「Like A Zombie」なんていうからどんな曲かと思ってアルバム『ROCL 'TIL YOU DROPをおそるおそる再生すると、“ゴキゲンな”(というしかない)ハード・ブギーが流れ出しましたよ!?

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どんぱす今日の御膳234

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Mahogany Rush「A New Rock And Roll」(『CHILD OF NOVELTY』1974)

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 前回のウリ・ジョン・ロート同様、強烈なジミヘン・フォロワーですが、やはり個性派のFrank Marino。カナダでのデビュー(1972年)当初はJimi Hendrixカラーが強かったのですが、徐々に個性を発揮。ドライヴ感のある曲やプログレ的な(凝った構造の)曲を書いたり、様々なエフェクターを組み合わせてカラフルなプレイを見せたりと、他では見られない(聴かれない)試みに踏み出していきました。

 セカンド『CHILD OF NOVELTY』には、疾走するこの曲“新しきロックンロール”ほかにも、魔術的なリフレインが活きるアルバム冒頭の「Look Outiside」、後の名作ライヴ『LIVE』でもとり上げられる「Talkin’ ‘bout A Feelin’」などが入っていて楽しめます。そうそう、フランク・マリノはソウルフルなヴォーカルも上々で、珍しい「歌えるギタリスト」です。

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 私はこの人の音楽がどういうわけかかなり好きで(別にリアルタイムで聴いたとかではないのですが)、諸作品をチェックしましたが、まず一枚と言えば上述の『LIVE』Frank Marino & Mahogany Rush名義)がお薦めですかね。のちにXX Japan)にカヴァーされる「The World Anthem」も入ってるとか、Jimi Hendrix「Purple Haze」のなりきりカヴァーもあるとかいった“外的ポイント”だけでなく、アタマの「The Answer」「Dragonfly」のグルーヴ、ロックやブルーズのクラシックを自家薬籠中のものとした「I’m A King Bee」「Johnny B. Goode」などまで聴きどころだらけ。

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 弾きまくりの印象が強い人ですが、ラフなようでいて構築的なソロも美しいという点を味わうには、Frank Marino名義のアルバム『FROM THE HIP』もイイ。20年近く前になりますが、DU新宿プログレ館をうろついていたら(私が)、このアルバムの冒頭4曲(「Babylon Revisited」「I'm Ready」「How Long」「Rise Above」)が流れ、あまりの美しさに――こういうことは滅多に無いのですが――店員氏に「いま掛かってるこれ、誰なんですか?」と尋ねるほどだったしろもの。「こちらです」といって示されたのが『FROM THE HIP』だったのですが、思わず「え、これ、フランク・マリノだったんですか?」と声をあげてしまったくらい、“フランク・マリノといえばジミヘンぽいことをやってるロックンロールの人”という当方の偏狭なイメージを粉々にする作品でしたね。当然、「これも買えますよね!」とか言って売ってもらったのであります。その日本盤(中古品)には大谷レイブンさんのライナーもついていましたね、懐かしい……

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