DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳233

233

Scorpions「The Sails Of Charon」(『TAKEN BY FORCE』1977)

www.youtube.com

 おそらく王者イングヴェイ・マルムスティーンが、リッチー・ブラックモアと並んで「足を向けて寝ることのできぬ」ギタリストがこのウリ・ジョン・ロート(Uli Jon Roth)でしょう。ハーモニック・マイナーを大胆に取り入れた滑らかなプレイが持ち味。イングヴェイはかつてインタビューでUliについて「俺と似ていることをやっているなと思った」と発言していますが、実は彼がアマチュア時代に(Uliの在籍した)Scorpionsの曲をカヴァーしていたことが判明しています。

 ウリは自他ともに認めるJimi Hendrixのフォロワーとしても知られ、とりわけ精神的な面ではHendrixのスピリットに傾倒しているようです。プロとしては、ドイツ産ハードロックバンドの祖ともいうべきScorpionsの二代目リード・ギターとしてデビュー(1974年)。1978年に同バンドを脱退後は、自らのバンドElectric Sunを結成、3枚のアルバムを発表。その後はソロ・アルバムを出しています。発表する作品のクオリティは高いのですが、寡作で知られ、予告された新作がなかなか出ないなんてこともありました。

Primary

 「The Sails Of Charon」はスコーピオンズ第5アルバム所収の一風変った雰囲気の曲で、作曲もUli。とにかくイントロのソロを聴いて下さい。これが1977年です。のちにYngwie Malmsteen『INSPIRATIONS』というカヴァーアルバムでとり上げていますし、スラッシュ・メタルの名バンドTestamentがカヴァーしたり、ウリ自身さえ近年のSCORPIONS REVISITED』でも再演しているまさに古典ですが、この“妖しさと美しさの共存”は77年版オリジナルならではのもの。

 

 Electric Sun時代は、自身のヴォーカルにちょっと弱点はあるものの、より独自性の高い音楽を創造。私はハード・ロック支持者なのでトリオ編成の最初の二枚が特に好きです。「Electric Sun」(1979)は名曲と言わざるを得ない。

 あとは、いまや著名になった、彼のメインギターである「スカイ・ギター」(通常よりかなり高い音域を表現できる)を極めた二枚組『TRANSCENDENTAL SKY GUITAR』(2000)、その冒頭曲「Sky Overture」が素晴らしいですね。

www.youtube.com

どんぱす今日の御膳232

232

Billy Cobham「Quadrant 4」(『SPECTRUM』1973)

 前回の主役ジョン・マクラフリンが主宰したマハヴィシュヌ・オーケストラのドラマーだった凄腕Billy Cobham……のアルバムからですが、今回注目するのはそのギタリストTommy Bolin。

www.youtube.com

 アメリカのバンドZephyrJames Gangを経てRitchie Blackmore脱退後のDeep Purpleに加入(ほぼ同時期ソロも発表)した人。Ritchieの後釜というなんともやりにくい立場に立たされ、当時ハード・ロック・ファンからはあまり評価されなかった人ですが、今になってみると彼の才能をハード・ロックのみで測るのは間違いであることがわかります。

 自らヴォーカルも披露したソロ・アルバム(『TEASER』)も秀逸ですが、パープル加入以前に参加した、ジャズドラマーBilly Cobhamのアルバム『SPECTRUM』でのプレイは凄絶です。Jeff Beckがこのアルバムを聴いてオールインストの作品を作ろうと決心した、という伝説がありますが……実は、ベックが後に共演するキーボーディストJan Hammerこそ、このコブハムのアルバムでBolinとリードバトルをしている相手なのです(ヤン・ハマーも第一期マハヴィシュヌ・オーケストラのメンバー。世間は狭い?です)。

Primary

 「Quadrant 4」は、Billy Cobhamの凄まじいフットワーク&スネアワークがドライヴする中で速弾きギター……に極限まで似せたヤン・ハマーシンセサイザーが炸裂。そして中盤から満を持してトミーの独創性に満ちたトーンとフレージングのギターが場を制覇するという、トンでもない強力作。ジャズ好きの人にはどうだかわかりませんが、ハードロック野郎の小生にはこれ一曲で十分でした。トミー・ボーリンて、こんなに凄かったのかい!

www.youtube.com

 先に述べたように、Bolinはその後ディープ・パープルに加入、ソロ・アルバムも発表しますが、その真価を広く認められる前にドラッグが原因で亡くなってしまいました。再評価熱が高まったのは後年のことですが、アーカイヴ音源が出るたびに気になって聴いてしまうと……やはりけっこういろいろなことをやっていたんだなあと思わされますね。

どんぱす今日の御膳231

231

The Mahavishnu Orchestra「Birds Of Fire」(『BIRDS OF FIRE』1973)

www.youtube.com

 ジャズの巨匠Miles Davisと共演したことでも知られる、英国ジャズ・フュージョン界の大物John McLaughlin。1960年代から活躍していますが、中でも70年代のバンドThe Mahavishnu Orchestra(1972年デビュー)は衝撃的だったようです。当時の彼を称して「コルトレーン的なフレーズを、ハード・ロックのマナーで弾けるギタリスト」という人もいますが、確かに壮絶な弾きっぷりです。

 

 かのSteve Vaiは「マハヴィシュヌ・オーケストラのセカンド『BIRDS OF FIRE』は、一家に一枚あるべきアルバムだ」と語ったとか……。「Birds Of Fire」はその火の鳥のタイトルトラックです。

Primary

www.youtube.com

 前回登場したAl Di Meolaとの共作など、アコースティック遣いも巧みですが、長いキャリアの間に実に色々な試みもしています。私のようなロックの側から接近した人間にも面白かったのは、SHAKTI WITH JOHN MCLAUGHLIN(1976)所収の「Joy」や、『CONCERTO FOR GUITAR & ORCHESTRA “THE MEDITERRANEAN"』(1990)所収のタイトル曲などですかね。前者はインド音楽のミュージシャンと真っ向勝負(?)した強烈な実況音源、後者はロンドン・シンフォニー・オーケストラとの共演による壮大なクラッシック。どんなジャンルに取り組んでも「ジョンはジョン」なのが凄い。

www.youtube.com

どんぱす今日の御膳230

230

Al Di Meola 「Race With Devil On Spanish Highway」(『ELEGANT GYPSY』1977)

www.youtube.com

 あけましておめでとうございます。昨年末はドラム(イントロ)特集→クリスマスになだれ込んだのですが、今年はギターの名演からいきましょう。

 

 アル・ディ・メオラ先生は、多くのロックファンをフュージョンに引きすり込んだ一人。(私もこの人きっかけでそっち入りした口です。“Riotがこの曲をカヴァーしてた”せいなんですがね。)

yes-outsiders.hatenablog.com

 氏は1974年にChick CoreaのバンドReturn To Foreverに参加、デビューします。80年代初頭までの彼は、とにかく「速弾き」で知られていました。口の悪い人はそれを“機械的でつまらない”などと言っていたそうですが、そういう人はちょっとセンスが遺憾。重要なことは、ディ・メオラがそれに見合った曲をきちんと書いていたということなのです。

 2枚目のリーダーアルバム『ELEGANT GYPSY』収録のこの曲では彼の必殺速弾きが堪能できますが、それが決して無駄な装飾になっていないことがおわかりいただけるでしょう。ジャズでもメタルでもカントリーでも同じですが、必然性のある「速弾き」は決してつまらなくないのです。

Primary

 彼はほかに次回で取り上げる予定のJohn McLaughlinや、Paco de Lucia(フラメンコ・ギターの名手)とのアコースティック・ギター・コラボレーションもよく知られていますね。そちらもお薦めです。(例えば『FRIDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO』1981)

www.youtube.com

どんぱす今日の御膳229

229

XTC「Always Winter Never Christmas」(『DEMO TRACKS』1992)

youtu.be

 もうクリスマスは過ぎちゃったから、“Never Christmas”な曲を繰り出そうかな。XTC……名義ではあるけど、実のところはAndy Partridgeのデモ。名盤(個人的愛聴盤)『NONSUCH』の頃の小品集から。(当ブログで実は紹介ずみだったりする。)

 この曲は、軽快なノリに凝ったベースといういつものアンディ節なんですけど、歌詞がいつも以上に底意地が悪い(?)のかも。“♪Always winter but never Christmas, always thatmas but never thismas…….”って。まあ、“♪Dear God !”の人だからこのくらいはね。

 

 この曲をボツにしたとしてもアルバムを仕上げるだけの曲が他にいっぱいあったのだと考えると、アンディと愉快な仲間たちの創造性にはまさしく舌を巻くほかないわけですけどね。

 あら、今年のどんぱすはこれで終わりかな?来年もどうぞよろしく。