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Riot特集:時系列全作品紹介(7)『THE PRIVILEGE OF POWER』

Riot『THE PRIVILEGE OF POWER』1990

  1. On Your Knees
  2. Metal Soldiers
  3. Runaway
  4. Killer
  5. Dance of Death
  6. Storming the Gates of Hell
  7. Maryanne
  8. Little Miss Death
  9. Black Leather and Glittering Steel
  10. Racing with the Devil on A Spanish Highway [Revisited]

<メンバー>

Mark Reale(Gt)

Don Van Stavern(Ba)

Tony Moore(Vo)

Bobby Jarzombek(Dr)

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 第7作。ボビーが正規のドラマーとして定着しましたが、これは良い方向に作用しまして、アルバムの一貫性は増しました。また、Al Di Meolaのカヴァーなんかからもわかりますように、テクニカルな楽曲の演出がしやすくなったためか、Riot史上最高難度の曲が目白押しになっております。

 

 Mark Realeは、個々の楽曲の出来には自信を持っていたものの、「バラード調の曲が複数ある」ことがネックになるかもしれない、と考えていたようですが、世間の反応はちょっと違いました。それよりも、「ホーンセクションが多用されていること」及び「曲間にかなり長めにSEが割り込んでくること」が賛否を呼んだとのことです。ホーンの方は、Tower of Powerの面々やらRandy Breckerやらが参加しているらしく、かなり贅沢。楽曲によっては必然性が乏しかったりもしますが、個人的には総じて悪くない試みに思えます。

 

 もう一方の長編SEですが、これは確かに聴き手の緊張感を弛緩させる場面が多くて、微妙ですね。CD時代に入ったんだから、SE部分もトラック番号を振って切れるようにしておいてもらえると、「コンセプトアルバム感を楽しみたいときは通しでかけて」、「楽曲単位で鑑賞したいときはSEをスキップする」っていう真似ができるんですがね……。まあそういった点はあるにせよ、マークの自信作だけあって、各楽曲のクオリティは素晴らしいものがありますよ。このあとメンバーチェンジが起こったために本作からの曲がステージで十分に披露されなかったことはバンドの歴史において痛恨事だったと思いますけども。

 

 さて、やや長めのSEのあと、まさしくディメオラ風の早回しフレーズから開幕するのが「On Your Knees」。先に周辺のことを申しますと、キレのあるホーンのフレーズ、いまじゃあ結構好きです。ただし、おそらくバンドはホーンを想定して曲を書いたわけではなさそう……というのも、彼らはライヴでは喇叭抜きでそのまま演りますからな。あくまで、オーヴァーダブ段階で加えられた処置ということでしょう。ギターソロ後のスクラッチ(DJの)の音響なんかもね、むかしはわざとらしい感じがしてキライでしたが、いまはOK。それにまあ、何といっても曲本体が良い。Don Van StavernとTony Mooreの共作。Bobby Jarzombekの高等技術を活かしつつ、要所要所に各パートの見せ場を設け(DVSのブンブンいうベースもいいし、Mark Realeの頑固一徹ロディアスギターもお約束)、バッキングヴォーカルも効果的にTony Mooreの歌唱を映えさせる。終盤までテンションの落ちることのないスピードメタルの名曲ですな。

 

 で、そこから次にすぐ行かないのは、ややつらいところもある。SE長いです、正直。ライヴでは間髪入れずにこの「Metal Soldiers」につなぐので、それでよかったと思うのですがね。前作でいうと「Sign of the Crimson Storm」辺りを彷彿とさせるヘヴィ・チューン。むしろこういう曲で歌やマークのギターのメロディアスさが強調されるのがRiotらしさ。後半のギターをお聴きなさい。「Warrior」後奏の時代からこの人(マーク先生)は変わってない!いい意味で。マーク・ドン・トニーの共作。

 

 3曲目が、マークが――アルバムのタッチをソフトにしちゃったかもと――気にしていたというバラードの「Runaway」。いや、ぜんぜん軟弱なところのない美旋律の硬派ソングですよ。トニーさんの表現力も素晴らしくて、前作の「Bloodstreets」以上に起伏(メリハリ)を感じさせてくれます。そうそう、こういうゆったりしたテンポの曲のとき、ボビーさんはスティック回し(twirling)を両手で交互にやりながら叩いたりするんだよ。

 

 次の「Killer」の前もSEがロング。ホーン入りまくり、ラップ調のAメロ、ゲストを招いてのダブルヴォーカルと、この歌こそ新機軸だったかもしれないね。ライヴで演るときも、この曲だけはホーンセクションをテープ(?)で流しながらやってたはず。あ、ゲストヴォーカルは、元Rainbow他のJoe Lynn Turnerです。トニーさんと半分ずつ歌う感じ。2番では呼応が活き活きしてきて、ジョーの歌終わりに被せてトニーが“♪Well, well, well….”と入って来るところなんか鳥肌もの。もちろんジョーさんは上手なんですが、こういうラップっぽい歌いまわしをさせられるのは珍しいんじゃないかな。ライヴでは彼のパートをマークが歌うんですが、マークの声が(ちょっと細いけど)意外にジョーっぽかったりもする。あと、この曲の歌詞に“The privilege of power”っていうのが出てきまして、それがアルバムタイトルになってます。

 

 前作みたいなストレートな曲は無いのかい?っていう方にはこれを聴かせて黙らせるとよかろう。妙にアジアンなSEから銅鑼が鳴って始まるスピードナンバー、「Dance of Death」。DVSが関与するとタフな曲になるんだなあ。トニーのハイトーン・ヴォーカルが強烈。強烈過ぎて、彼の脱退後はほとんど再演されなくなるんですが……現Riot VのヴォーカリストTodd Michael Hallなら歌いこなせるでしょうから、彼に期待しますかな。トニーによる(と思われる)歌詞は、現代アジアにおける専制・独裁・暴力を描いている模様。あんまり歌詞の話をしてきてないですけど、トニー・ムーア時代になってRiotの歌詞は社会批判の視点を導入するようになっております。

 

 法螺貝かなんか(?)みたいな、戦いを告げる喇叭が鳴り響いてすぐに始まるのが次の「Storming the Gates of Hell」。本作中唯一のマーク・リアリ単独作。これも結構なスピードメタル曲なんですが、DVS曲に比べるとオールドハードロックの香りも残している感じかな。トニーがやっぱり凄い――ギターソロ前の“♪I’m a victim of philosophy”とか――のでメタリックですけども。この曲で特筆すべきはやっぱりギターソロ。入りはマーク・リアリ史上十指に入るであろう速いパッセージ。この弾きまくりのあとは逆に、メロディアスなフレーズをひたすら丁寧に弾くだけ。このギターのメロに心動かされぬ人は、Riot聴くには向いてないよ!……まあそれは暴言としても、マークのここのヴィブラートなんかは、ちょうどこのアルバムの時代にメンバーに加わった(最初はツアー・ギタリストとして)Mike Flyntzがいつまでも絶賛するだけのことはある。そしてこの曲も、黄金の3分50秒弱なのであった。

 

 スピードメタルが続いた後は、二つ目のバラード「Maryanne」。多重ヴォーカルというか、厚めのコーラスが――Riotらしくはないですが――美しい。さっきの「Runaway」もそうでしたが、この辺りにはさすがにホーンはかぶされませんね、それで正解。マークのギターソロも古風、いな、伝統の名人芸。こういうゆったりした曲でもドンさんはなかなかメロディアスなベースを弾いてるんだね。

 

 ちょっと変わった曲、というと私にとっては次の「Little Miss Death」ですかね。作曲に加わっているEric Maukという人のセンスなのかはわかりませんが、マーク達は選ばないようなコードとメロじゃないかなあ。明るいような暗いようなへんな曲、強いて言えばRick Venturaがこういう感じのをつくらないでもなかったけど。これこそ一度もライヴではやっていないのではないでしょうかね?

 

 お次は。おうおう来ましたよ、DVS入りのトリオで作曲、「Black Leather and Glittering Steel」。全員の見せ場ありのパワーメタル曲。トニーの超音波っぽい(比喩)ヴォーカル、空間を埋め尽くさずにはいないボビーの太鼓、終盤ユニゾンで高速フレーズを決める(エフェクターじゃなくて自分で重ねてるんだと思う)ギターソロなど、聴き所いっぱい。聴いてると疲れる。終盤さらにリズムチェンジして無茶苦茶な疾走に突入するあたりもあらっぽい。

 

 ラストは、Al Di Meolaのカヴァー。まず確認一点、原曲は「Race with Devil on Spanish Highway」というタイトル(品詞と冠詞がちょいと違うのよ)。それは別とすると、わりと原曲に忠実なカヴァーといっていいでしょう。ギター+ベース+ドラムのみでやってるんですがね。(ちなみに、デスメタル界の渡り鳥(?)ギタリストJames Murphyがソロアルバム『FEEDING THE MACHINE』(1998)でやっぱりカヴァーしてるんですが、そっちは原曲ふうに鍵盤やパーカッション入り。あ、そのテイクのドラマーはJeremy Colsonじゃないの!最近のMarty Friedmanの右腕の。)ライオットのこのヴァージョンのキモはやっぱりボビーさんかな。後に自らのプロジェクトSpastic Inkでもジャズ系のプレイを披露しますが、この頃からもうそういうのはお手の物だったみたい。あと、技巧派のイメージはさほどなかったドンさんとマークさんの腕前にも吃驚。むかしから好きで聴いてたとか弾いてたとかなんでしょうか、大したもんですよホントに。で、正直に申そう、わたしはこっちを先に聴いて、ディメオラ先生はあとから知った。「アル・ディメオラって誰?」状態から遡って、Al Di Meolaの初期作品やReturn To Foreverの作品に耽溺するに至るんだから、Riotは私のフュージョン趣味にとっても恩人。

<続く>