DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳062

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Firebird「Working Man」(『DELUXE』2001)

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 まえにCarcassの話しましたけど(どんぱす今日の御膳040)、その創始人ギタリストBill Steerのバンド。初期はベースがCathedralのLeo Smeeでした(本作も)。カーカスとは違ったハード・ブルーズロック。

 本編も骨太なロックが楽しめますが――ファンキーなリフの「Hammer & Tongs」、Led Zeppelin風のビックロック「Lonely & Sober」、題名に反してハイパーなブギー「Slow Blues」などなど――、日本盤ボーナスがRush「Working Man」のカヴァー。Ludwig Wittのドラムも70年代っぽくてよい。(RushオリジナルはNeil Peart、ではなくて前任John Rutseyが叩いてた曲です。)それにしてもRawな音像だなあ。

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 この曲、みんな大好きみたいで、Magna Cartaレーベルから出たラッシュ・トリビュート『WORKING MAN』(1996)でも1曲目に入っていました。あっちは歌がSebastian Bach、リードギターJake E. Lee、ベースにBilly Sheehan、ドラムにMike Portnoy、リズムギターにBrendt Allmanという布陣。巧手が揃ってカッチリまとめた感じでいいですけど、いま聴くとFirebirdの轟音トリオVer.のほうにより魅力をおぼえますなあ。

第60回「Bobby Harrison」(2)

 英国が誇るファンキストBobby Harrison渾身のソロ作を味わう。

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Bobby HarrisonFUNKIST(1975)

  1. Cleopatra Jones
  2. Whiskey Head
  3. Thinkin’ ‘bout You
  4. King Of The Night
  5. Little Linda Lovejoy
  6. Spotlight
  7. Long Gone
  8. Looking For A Friend

<メンバー>

Bobby Harrison(Vo, Dr)

 +

Micky Moody(Gt)

Tony Iommi(Gt)

Henry McCullough(Gt)

Chris Stewart(Ba)

Herbie Flowers(Ba)

Walt Monaghan(Ba)

Clem Cattini(Dr)

Ian Paice(Dr)

Matthew Fisher(Key)

Bob Sargeant(Key)

Ray Owen(Vo)

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近年のボビー・ハリソン翁


 さあ、聴こう。ボビーのソウルフル歌唱が聴ける冒頭の「Cleopatra Jones」は、オーケストラとブラス・セクションが入るゴージャスな仕様。Led Zeppelinの中期曲のような高揚感もある壮大な曲調だけど、あまり引っ張ることなく3分40秒で幕。あ、この曲の立役者はベーシストだと思う。骨太なプレイ、っていうのかな。

 

 続いてはファンキーな「Whiskey Head」。ホーンも鍵盤も入るけど、耳が行くのはドラム。このスネアの軽やかさはBobby Harrisonさん本人ではなさそう……Ian Paice先生かもなあ(不明)。粘っこいギターソロも味わい深いですが、何といっても歌ってるご本人が楽し気だ。

 

 軽快なピアノが盛り立てる「Thinkin’ ‘bout You」はロックンロール風味。バッキングにソロにと大活躍のスライド・ギターは、Micky Moodyさんかな?1分13秒からのコンパクトで粋なギター・ソロは聴き所。初期Whitesnakeが好きな人も要チェック。

 

 7分を超える「King Of The Night」は、重厚(ヘヴィ)な仕上がり。ボビーさんの歌は美味いんですが、ここまで聴いてきて何となく個性が判ってきました。ブリティッシュHR界のファンキストといえばGlenn Hughesが想起されますが、彼よりも太く力強いヴォイス。ブルージーな楽曲を歌いこなすという点ではDavid Coverdaleにも負けてない(Micky Moodyさんは両方と組むことになるわけでして、‟ミッキーが偉い“可能性も有るが……)。

 ボビーさんはブラック・ミュージック的なフィーリングの醸成は一級なのですが……逆に言うと、どんな曲を歌っても「熱く、あつくるしく、ソウルフルに」なっちゃう。“憂いを感じさせる”要素が少ない気がします。この辺が上記のシンガーたちとの違いで、一般受けしなかったのかもしれませんなあ。上手すぎて逆に……と考えると皮肉な気がします。いまこうして時を隔てて聴くと、驚くほど良いのですが。

 

 この「King Of The Night」も、Davidが歌えばWhitesnakeRobert Plantが歌えばLed Zeppelinの曲といっても通じるような大作佳曲。尺が長い分、中間の浮遊感ある間奏(ピアノ、キーボード)を楽しんだり、後半・終盤のきわめて印象的なギターソロ(これがTony Iommiだったりするんじゃないのかなあ……?)に浸ったりできるんですけども。英国人が長尺曲をやって「プログレチックにならない」っていうのは珍しくて(そうでもないですか?)、他にはStatus Quoの名人芸があるくらいじゃないのかと。

 

 折り返して「Little Linda Lovejoy」は、シンプルなリフレインが耳に残るウォーキング・ハードロック(造語)。やっぱりスライド・ギターが美味しいところを持っていくね。グッと腰の据わったビートが心地好い。

 

 アコースティック・ギターの調べ+ストリングスで始まる「Spotlight」は、ソウル・ファンクというよりはフォーク・カントリー調の明るい曲。少し肩の力を抜いてこういう曲も歌える、っていうところを押し出したらデイヴィッドに負けないポピュラリティを得たんじゃないかと(余計なお世話か)。アルバムの流れの中ではいい位置に来ますな。リラックス出来る。

 

 その後の「Long Gone」で、得意の弾んだロックに戻ります。洒落たピアノのバッキングも素敵ですが、泣きのフレージングを多用したギター・ソロ(スライドではない)が良いね。有名どころのブリティッシュ・ハードロックの王道的味わい……ではありますが、Bobby Harrisonさんの趣味なのかどうか、曲の構成はきわめてシンプル。トリッキーなリフとか大掛かりな転調とかが無いの。さっきもちょいと書きましたが、ボビーの作法の中には「プログレ」は無かったんでしょうね。

 

 そういえばまだバイオグラフィーの話をしていませんでしたが、ボビーさんは初期Procol Harumの楽曲に参加していた(そしてすぐに脱退となった)のでも知られる人なんですが、こうしてみると、プロコル・ハルムにおさまらなかったのは当然でしょうね、やっぱり。

 

 ラストの「Looking For A Friend」は、ピアノとオルガンの二重鍵盤が美しいバラード。これはひょっとするとMatthew Fisher(こちらもまた元Procol Harum)による仕掛け及びプレイなのではありますまいか。この曲の抒情的歌唱は、さっきの「Spotlight」と並んでボビーさんの意外な一面を知ることができる好サンプル。要所要所だけ熱い歌唱で盛り上げるメリハリも素敵。ハードロック・ファンは、Tommy Bolin「Dreamer」(『TEASER』所収)を想起されるとよいかな、あの感じよ。(あっちでは終盤に「だけ」グレン・ヒューズが登場して盛り上げていくよね。)

 

 このアルバム、レコーディングは1972年だった(つまりFreedom解散直後)らしいのですが、発表されたの1975年でした。72年の作品と考えると、(すぐリリースして)売れたかどうかはともかく、英国産ファンク・ソウル・ロック作品としての歴史的評価はもっと高くてしかるべきでは、と思います。Trapezeこそ存在はしていたものの、Whitesnakeなんて形もない頃。ボビーさんがそういう世俗のポピュラリティにこだわりがあったかどうかは存じませんけど。

(ライナーノーツに掲載のインタビューでは、「(75年にはそこそこ売れたはずだが)まったく銭は入ってこなかった」と仰っていました。やはり彼はマネージメントや会社に恵まれなかったのでは……)

 

 まあ、ジャケットもイカすこのアルバム、何かの折に聴いちゃっても損はしないと思いますぞ。

<続く>

どんぱす今日の御膳061

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Fiona Apple「A Mistake」(『WHEN THE PAWN HITS THE CONFLICTS HE THINKS LIKE A KING WHAT HE KNOWS THROWS THE BLOWS WHEN HE GOES TO THE FIGHT AND HE’LL WIN THE WHOLE THING ‘FORE HE ENTERS THE RING THER’S NO BOSY TO BATTER WHEN YOUR MIND IS YOUR MIGHT SO WHEN YOU GO SOLO, YOU HOLD YOU』1999)

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 凄いアルバムタイトル。こんなのどうやって邦題つけんのか?…………さすが日本のレコード会社は熟練ね、なんとこれをあっさり『真実』と名付けました。

 それはともかく、こちらの方も私の日ごろの趣味には入ってこない人。米国のシンガー・ソングライター。中古CD店でお手頃だったので、「なんか名前を聞いたことあったっけ?」くらいの感じで買った。それでも掛けてみるとやはり米国でメジャーになる人にはそれだけのワケがあるもので、この「A Mistake」なんかも後期ビートルズ風のバッキングに不思議に説得力のあるダル・ヴォーカルが乗っかる印象的な一曲。メジャーな音楽も忌避しちゃいけませんでしたね。

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 ついでに。後期ビートルズといえば、本作の日本盤ボーナスで「Across the Universe」も聴けます。

ロックンロール青果店(7)

(7)The Amboy Dukes「Why Is A Carrot More Orange Than An Orange」(1968)

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 「なんでニンジンはオレンジよりもオレンジなの?」

 Ted NugentとSteve Farmerが率いた(少なくとも初期はそういう認識でいいよね?)バンドThe Amboy Dukesにこんな曲がありましたわ。セカンドアルバム『JOURNEY TO THE CENTER OF THE MIND』(1968)に入ってる。

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 同アルバムではテッドとスティーヴ共作のややハードなタイトル曲「Journey to the Center of the Mind」がヒットしたんですが、アルバム全体はサイケがかった作風なんですね。この「Why~?」もゆったりリズムの上で気怠いヴォーカルが乗っかるふわふわした曲。ヴォーカルが多重になるところやオルガンの音色が時代を感じさせます(いい意味で)。

 The Amboy Dukesでは前述「Journey~」のほかにも、ファーストアルバムでCreamの「I Feel Free」やBig Joe Williamsの「Baby Please Don’t Go」のカヴァーを披露していたりと、ハードロック好きを惹きつける要素が多々ありますが、一方でやはりサイケ/ガレージロックの(時代の)風雲児でもあったことがわかるのであります。

どんぱす今日の御膳060

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Finntroll「Trollhammaren」(『NATTEN MED DE LEVANDE FINNTROLL』2014)

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 2008年アムステルダムでのライヴの記録。これしか持ってませんうえに、フォーク・メタルにも疎い私。Korpiklaaniを面白がって聴いてた時期はありますが……

 で、なぜかこの曲だけは聴いたことがあったのだが、なぜでしょうね?初出のEP(2004)も持ってないし。Korpiklaaniの「Wooden Pints」のヴィデオをげらげら笑いながら観てたころに、関連動画で出てきたのかもしれません。

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 アコーディオンの音で牧歌的に始まったかと思うと、フルバンドになってどっかんどっかん(The Trollhammer?)すすんでいきます。サビがキャッチー(?)なので、お客に歌わせるのもいい感じ。