DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第60回「Bobby Harrison」(1)

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 ドラマー兼シンガーBobby Harrisonの仕事をざっと見ていこうと思います。この人、やってることはなかなか頑固なんですが、英国ロック史を彩るいろんな面々と関わってて、送り出してきた作品はなかなか面白い。

【ちなみに、英国ロック界における人脈・人間関係をくわしく知ることができる「60s/70s英国ロック・データベース」という素晴らしいサイト(日本語)がありまして、今回Bobby HarrisonFreedomSnafuNobody’s Businessについて調べるのにもたいへんお世話になりました。ありがとうございました。】

 

 さて、ボビー・ハリソンをご存知の方もそうでない方も、まずはもちろんソロ作のこれをどうぞ。

 

Bobby HarrisonFUNKIST(1975)

  1. Cleopatra Jones
  2. Whiskey Head
  3. Thinkin’ ‘bout You
  4. King Of The Night
  5. Little Linda Lovejoy
  6. Spotlight
  7. Long Gone
  8. Looking For A Friend

<メンバー>

Bobby Harrison(Vo, Dr)

 +

Micky Moody(Gt)

Tony Iommi(Gt)

Henry McCullough(Gt)

Chris Stewart(Ba)

Herbie Flowers(Ba)

Walt Monaghan(Ba)

Clem Cattini(Dr)

Ian Paice(Dr)

Matthew Fisher(Key)

Bob Sargeant(Key)

Ray Owen(Vo)

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 この“でっかいオレンジどーん!”のジャケット写真は、柑橘類で有名な(?)「SUNKIST」のパロディ……なんじゃないですかね?誰もちゃんと説明してくんないけど。

 それはともかく、ボビーさんって人は、70年代闘士たちの中では割と早くからブラック・ミュージックへの憧憬を露わにしてきた人物だと思うんですよね。もちろん他にもいろんなバンドはありますよ?あと、個人でいえばGlenn Hughes先生とか“ソウル!ファンク!”推しの名プレイヤーもいますしね。でも、(今日における知名度こそさほどではないですが)ボビー・ハリソンの「ファンキスト」振りは筋金入りではないか、と。このたびまとめて作品を聴きなおして、なおさらそう思いました。

 

 それにしてもこの参加メンツ、凄くないですか。元Juicy Lucyで、この後ボビーとSnafuを結成するミッキー・ムーディーさんは、後にWhitesnakeで大成功。WingsPaul McCartneyの)で活躍したHenry McCulloughや、あんまり課外活動の多くないTony Iommi(言わずと知れたBlack Sabbathマスターマインド)も引っ張り込んでて、ギターセクションは大御馳走。

 ベースでは、Spooky Tooth他多数に参加しGraham Bonnet『LINE UP』(1981)でもプレイするChris Stewartがいるかと思えば、英国ジャズ・ブルーズ・ロック界で引っ張りだこだったHerbie Flowersもいらっしゃる。お、むかしFreedomで一緒だった仲間Walt Monaghanもいたのか。

 ドラムはすべて自分でプレイ……かと思いきや、Johnny Kidd & The Pirates他でプレイの名セッションマンClem Cattiniと、これまた言わずと知れたスターIan Paice(当時も今もDeep Purple)を招聘。(自分でも叩いてるとは思うが。)

 Matthew Fisherはアルバムのプロデュースにも参画した、Procol Harum時代からの盟友。Bob SargeantはMick Abrahams(この人も頑固一徹なブリティッシュ・ブルーズロッカー)ともプレイした職人。おまけに、Juicy Lucyでリード・ヴォーカルもつとめたRay Owenがヴォーカルで参加、と。

 集めようと思ってもなかなか集まらん(実は)豪華なラインナップ。で、そこから出てくる音がちゃんとボビー色だってことも大したものだ。……いや、ゲストのプレイが地味、ってことじゃないよ?(どの曲で誰がプレイしているかはクレジットがないんだけど……)

<続く>

どんぱす今日の御膳059

059

Fates Warning「Prelude to Ruin」(『AWAKEN THE GUARDIAN』1986)

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 プログレッシヴ・メタル創始者のひとりといってもよいだろうFates Warningのサード・アルバム。ところがこれも私は回り道でたどり着いたのであった。

(1)Riotが気に入る。

(2)メンバーがやってるというサイドプロジェクトSpastic Inkを聴く。

(3)Spastic Ink のギタリスト(Mr. Ron Jarzombek)がむかし加入してたというWatchtowerに手を出す。

(4)CD店で「ウォッチタワー好きにお薦め!」という煽りのついたアルバム=Spiral Architect『A SCEPTIC’S UNIVERSE(2000)を買い、聴く。

(5)『A SCEPTIC’S UNIVERSEにボーナストラックで収録されていた「Prelude to Ruin」がカッコ良くて気になる。

(6)原曲にあたるFates Warning版を探す。

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 「何やってんだお前は?」という世界ですな。こうやってたどり着いた『AWAKEN THE GUARDIAN』は、なるほど(ドリーム・シアター以前の)プログレッシヴ・メタルが生まれる土壌を涵養した重要作品でありました。拍子や歌メロの捻じれっぷりが素敵な「The Sorceress」なんかも良かったですが、お目当ての「Prelude to Ruin」の大仰さ、プログレ趣味満開ながらメロディアスな曲がやっぱりグレイト。John Archは声が細めですが、よくこんな奇っ怪なラインを歌えるなあ……

 振り返るってえと、私をFates Warningに導いたそもそものきっかけはRiot(とSpastic Ink)だったわけだが、その元RiotのBobby Jarzombek(Dr)がいまやFates Warningの正式メンバーだというのは実に感慨深いですねえ。

ロックンロール青果店(6)

(6)Strawbs「Lemon Pie」(1975)

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 「レモン」ていうのはよく歌の題材になる方で、Led Zeppelinの「The Lemon Song」だとかが浮かぶ方もおられるでしょうけれども……Strawbs(イチゴ?)が「Lemon Pie」っておもしろくありません?という一点からこちらが登場。

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 英国フォークロック・プログレッシヴロックの古豪Strawbs。私は、Yesを聴くようになってから、「Rick Wakemanが居たのかあ」っていうので興味をもった様なニワカ野郎なんですが、そんな私めもしっかり楽しませてくれるのがさすがの名バンド。

 リーダーはDave Cousinsさんで、この曲の作曲も彼。アルバム『GHOSTS』(1975)に入っております。……ああ、シングルでも出されてたみたいですな。

 アコースティック・ギターの開放的な響きに、端正な鍵盤――元RenaissanceのJohn Hawken先生によるプレイ!ピアノからハープシコードまで何でもお任せ!――が重なりながら、爽やかに展開。デイヴさん自身によるあたたかな歌唱も素敵。

どんぱす今日の御膳058

058

Eyes of Shiva「Eyes of Soul」(『EYES OF SOUL』2004)

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 伊藤政則さんのRock City(テレビ番組)でPVを観たんじゃなかったかなア。Angra以来パワーメタルバンドも多く出るようになったブラジルから、期待の新星みたいな扱いだったと思います。それに乗せられてデビュー作『EYES OF SOUL』に手を出しましたが、アタリだったといえますね。

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 スピードナンバーの「Eagle of the Sun」や「Just A Miracle」(特に後者)の出来も優れていましたが、実は最も印象深かったのはこのタイトル曲。ブラジル音楽のことは詳しく知らないのですが、民俗音楽の要素を積極的に入れてみようという心意味に感じ入りました。それでこそAngraの後継者よ。ロック的ゴツゴツ感も残しつつメロディアスであるという、こりゃあ意欲作ですよ。(といいながら、セカンドアルバムを出した後に解散してしまったようなのですが。)

第59回「Automatic Man」(6)

 Automatic Man関連枠最終回。(作品は前回の続き。)

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Various Artists『THE DUTCH WOODSTOCK』(2013)DVD+Audio CD

【DVD曲目】

  1. Santana「Gumbo」
  2. Al Stewart「Zero She Flies」
  3. Canned Heat「Human Condition/ The World's In A Tango/ So Sad」
  4. Quintessence「Giants」
  5. Jefferson Airplane「Won't You Try/ Saturday Afternoon」
  6. It's A Beautiful Day「Wasted Union Blues」
  7. Pink Floyd「Set The Controls For The Heart Of The Sun」
  8. Country Joe And The Fish「Oh Freedom」
  9. Dr. John and the Night Trippers「Mardi Gras Day」
  10. Family「Drowned In Wine」
  11. It's A Beautiful Day「Bulgaria」
  12. T. Rex「By The Light Of The Magical Moon」
  13. The Byrds「Old Blue」
  14. The Flock「Big Bird」
  15. Soft Machine「Esther's Nose Job」
  16. Jefferson Airplane「White Rabbit/The Ballad Of You And Me And Pooniel」
  17. Santana「Savor / Jingo」
  18. Pink Floyd「A Saucerful Of Secrets」

 さて、他にも見どころはいっぱいあるよ。

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 私としてはまずCanned Heatに触れぬわけにいかん。当ブログでもだいぶ昔に熱烈紹介しておいた(第4回「Canned Heat」(1))"最高のグループ"の、黄金時代がとらえられているのであります。個人的に一番好きなヒート・ナンバーの一つ「Human Condition」のライヴが観られるんだからありがたや。

 ほどなく亡くなってしまうAlan Wilson(Gt, Vo)の雄姿をとらえたドキュメントは、合間にオランダの風車の居並ぶ風景も挟み込まれる味わい深さ(観たらわかります)。そしてその後には、必殺の長尺ブギー「The World’s In A Tango/So Sad」が炸裂。こちらは熊さんBob Hite Jr.がリード・ヴォーカルをとって、バンド一丸で聴衆を乗せまくり。Canned Heatも(Santanaと同様に)ウッドストックでの伝説的パフォーマンスがありますが、私は紙一重でこちらの方が好き、かも。

 

 インド音楽を取り入れたプログレ(?)のQuintessenceの「Giants」が観られるかと思うと、It’s A Beautiful Dayの「Wasted Union Blues」や「Bulgaria」が聴けたり、Jefferson AirplaneThe Byrdsが堂々のステージを披露してたりと、全体としてはサイケデリック・ロッカーのフィーチュア度が高いように感じますな。

 Dr.Johnが暗闇の中で明るい呪術ナンバー(?)を繰り出すなんていうのもありますし、T.Rex(こうクレジットされてますが、正確には当時はまだTyrannosaurus Rex)の「By The Light Of The Magical Moon」が挟まれたりもしますけど。

 

 個人的に興味あるのはPink FloydSoft Machine。70年ならいずれもサイケ・バンドというよりはプログレの担い手だったと思いますが、如何にと。ピンク・フロイドは「Set The Controls For The Heart Of The Sun」・「A Saucerful Of Secrets」(ともにアルバム『A SAUCEFUL OF SECRETS』所収)を披露。前者は、やっぱり(このフェスに合わせてか)呪術的なインストで、思いの外Nick Masonのワイルドなドラミングが面白い。後者はまさしくピンク・フロイドの世界ってやつで、彼らから『原子心母』やら『狂気』やらが生まれてくるのも納得の(?)好演。決して個々のプレイヤーがテクニカル、ってわけではないのですが、この吸引力は凄い。

 

 Soft Machineは、セカンド・アルバム収録だった「Esther's Nose Job」をサードアルバム時のラインナップでやってました。Robert Wyatt(Dr)さんの動く姿をまじまじと観られて幸せ。シンプルなドラムセットから、実にカラフルな音が出てくるんだよなあ。サングラスに革ジャンの立ち姿が“Steppenwolf(っていうかJohn Kay)みたい”なMike Ratledge(Org)さんのフリーキーなオルガンも、画付きで観ると一層楽しい。ニコリともしないでスコアをめくりながら吹きまくるElton Deanさん(Sax)や、John Entwistleバリに「微動だにしないのに音だけは物凄いことになってる」Hugh Hopperさん(Ba)……どういう集団なんだ。音だけ聴くより面白いことは間違いなし。

 

 あ、一つ忘れてた。The Flockっていうグループのパフォーマンス(「Big Bird」)もポイント。カントリータッチのフォーキー・ロックは、それだけなら私の理解の外なんですが、やけに目立つ若きヴァイオリニストが……後にMahavishnu Orchestraで名を馳せ、いずれSteve Morseさんの御仲間になるJerry Goodmanさんなのであった。これは観とかないと!

 

 とまあ、いろいろ楽しめます。音楽的にはサイケやプログレ、フォーク好きの方におすすめかな。(部分的にはYoutubeなんかで観られるのかもしれぬね。)あと、1970年夏の時点でのカルチャーがわかるのも歴史の勉強になる。オランダの聴衆のノリ方とか、ファッションとか、お酒・drug事情(?)とか。

 

 例によってわき道にそれましたが、本題は“動くMichael Shrieveを観よう!”でございました。まずはそれだけでもよろしく。

<完>