DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

臨時号・コンサート感想「Jazz meets Classic」(2)

若干の休憩時間をはさんで第2部へ。第2部は“Jazz session”ということでこちらも楽しみ。でも、なかなか始まらないな。と思っていると、なぜかホール後方からお客さんの歓声が上がり始めます。「なんだあ?」と思って振り返ると、後方から小曽根さんとピーターさんが客席の間を歩いて降りて来るではありませぬか。あの、よく演歌とか歌謡曲とかの番組で歌手が客席をとおりながらステージに抜けるっていう図が出てきますが、ああいう感じ。私の席の近くをピーターさんが通ったのですが、握手してもらえるほどの距離ではなく、ああ残念。
 
観衆のテンションが再び上がったところで第2部へ。冒頭、小曽根さんによるトークが少し。先ほど記した、バーンスタイン作品上演への道のりのほか、ピーターさんとの馴れ初め(?)についても興味深いエピソードを聞きました。音楽活動の為渡米した小曽根さん、Gary Burtonのバンドで活動していた当時(1984年?)、ピーターさんの入っていたバンドと対バンになったので楽屋に「ピーターさん、初めまして」と挨拶に行ったそうなのですね。するとピーターさんが「初めてじゃないよ」、「1978年に大阪で会ったよ」と仰ったのだとか。小曽根さんはびっくりしたそうですが……実は1978年にWeather Reportが日本公演を行った際、ピーターさんと仲間は大阪のホテルに滞在していたようです。そのとき、“オスカー・ピーターソンみたいなピアノを弾くヤツがいる”と聞いてそのホテルのラウンジに繰り出したピーターさんと仲間は、そこでピアノを弾いていた若者――まだ学生だった小曽根さん――をいたく気に入り、興が乗って二人して飲み物のグラスを叩いたりぶつけたり(?)して盛り上がったらしいのですね。「あのときグラスを割っちゃったアメリカ人を覚えてないかい?」と84年のピーターさんは言ったわけです。ちなみに、ピーターさんと一緒に、というかむしろ煽ってグラス割りをやっちゃったのは、Weather Reportのベーシスト、ジャコ・パストリアスでしたとさ。いやあ、すごい話。

 

そういうふうに付き合いの長いお二人に、ポーランド出身でアメリカで活躍するベーシスト、ダレク・オレスDarek Oleszkiewicsさんを加えたトリオで繰り広げられるのが第2部のセッション。以下、聴きながら感じてたことを中心にメモ風に記します。
 
1.Leonard BernsteinSome Other Time」:穏やかなバラード。もとは歌入りの曲のようですが、Bill Evansによるインスト・ヴァージョン(今回もおそらくこちらがベースでは。)が有名なようですね。ダレクさんのジェントルなプレイがいい感じ。

 

2.Peter ErskineTwelve」:ピーターさん作の軽快な一曲(初出は1999年のJUNIかと)。ノッテきた。第1部から感じてたことだが、ピーターさんのドラミングの中で特にグッと来るのが、「右手で刻むハイハット」。「チッチキ、チッチキ……」「チッチッチッチ」「チキチキチキチキ」と微妙に表情を変えながら、どのパターンもドライヴ感が物凄い。ライドの時は他のパートを「受けて」る感じなのに対し、ハイハット刻みになると「推進する」側に。決して大きな音を出しているのではないのに!脱帽。

 

3.小曽根真Nova Alvorada」:ボサノヴァ。作曲者小曽根さんのジェントル・リズミカルなピアノプレイが心地好い。ピーターさんの変幻自在パーカッションも聴きもの。MY WITCH’S BLUE2012)に収録。

 

4.小曽根真Wishy Washy」:“優柔不断”という意味の言葉らしい。“行きそうな所へ行かない、終わりそうで終わらない”(小曽根さんMC)曲。2017年の新作DIMENSIONSからとのこと。

 

5.小曽根真Mirror Circle」:“クラシックとの共演を積み重ねてきて出来た曲だと思う”(MC)。ちょっとプログレ的に聴こえる。ある部分の展開(コード進行とテンポチェンジ?)から、どことなくMoraz & BrufordMUSIC FOR PIANO AND DRUMSChildren’s Concerto」あたりを思い出してしまった。私は今回この曲が一番気に入った。上と同じくDIMENSIONSより。

youtu.be

 

6.小曽根真Before I Was Born」:12年前に発表された、ピーターさんとの共演曲とのこと。アルバムNATURE BOYS1995)はドラムがPeter Erskine、ベースがJohn Patitucci

 

7.Peter ErskineBulgaria」:ピーターさん大フィーチュア。中盤とエンディングにドラムソロ!本公演中ではもっとも派手だったかな。といっても、アクションはいたって控え目、シンバルからタムまでフルに活かした色鮮やかな感じの名演。TIME BEING1994)が初出。

 

8.〔アンコール〕小曽根真Popcorn Explosion」:熱烈な拍手に応えて再登場した3人。ラストの曲ではまず小曽根さんの華々しいピアノソロを堪能。溜息をつく間もなく次はリズム・バトルに突入。このときは、小曽根さんくつろいじゃって、ピアノの椅子に座りながら足なんか組んじゃってました。ダレクさんとピーターさんの応酬!ダレクさんもソロ的な見せ場はここが一番だったかな。二人のやり取りがまとまるところに小曽根さんが合流し、みんなで盛り上げて終了!ロックンロール!(違う)……2013年のTIME THREAD収録曲。
 
 いやあ、楽しかった。会場(オリンパス・ホール)の音響もなかなか良かったのではないかと思います。うちから行きやすいところなんで、ここでもっといろいろ音楽のイヴェントをやってほしいなあ。ジャズはもちろん、ロック系もぜひよろしくお願いしますよ。<完>