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どんぱす今日の御膳197

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Faith And Fire「Fallen (Rehearsal)」(『ACCELERATOR』[再発]2021)

 RiotのMike FlyntzとTony Mooreを擁したバンドFaith And Fireについては当ブログ「第37回」第37回「Faith And Fire」(2)ですでにご紹介しました。あのバンドはもう完結したので続報は無いと思っていたのですが、なぜか昨年(2021年)唯一作『ACCELERATOR』(2007)が大量のボーナストラック付きで再発されました。Riot信者としてはチェックせぬわけにいかず……専門店でこの2枚組を入手いたしました。

 

 作品は大きく3種類の音源に分けられそうです。

(1)まず、本編ですね、これは当然。但し、私がリリース当時にゲットしたオリジナル盤とは一部の曲順が異なっておりました。

※☟こちらは「本編」から「Radio Superstar」

youtu.be

(2)ボーナスのメインは「デモ」ヴァージョン。未発表曲を含む15ものテイクが収録されています。

(3)さらなるお宝が「Rehearsal」テイク。5曲のスタジオ・リハーサルが聴けます。

 「デモ」の多くは歌入り・ギター入りですが、リズム(少なくともドラム)は打ち込みのようでした。トニーのヴォーカルやマイクのギターは割と早いうちに組み立てられていた様子がうかがえますね。リズム・パターンは完成版とさほど変わりませんが、やはりダイナミズムに乏しい。ここはJohn Miceliさんの生ドラムに置き換わった完成版と聴き比べて下さい。「人力生ドラム、それも名手によるものは、最高だ!」とわかりますので。

 

 個人的には「リハーサル」音源がめちゃくちゃ嬉しい。このバンドはアルバムを発表しましたが、ライヴ活動はしなかった(筈な)ので。(何と言ってもリズム・セクションが多忙な人達ですから仕方なかったんでしょうけども。)

 

 そんな彼らが、ちゃんと顔を突き合わせて「一緒に演奏した様子」(要はスタジオライヴですな)が聴けるというのは、ありがたいというしかない。音質こそ(おそらく記録用だったのでしょうから)それなりですが、その分手直し無しで生々しいのですね。

 さっきの「デモ」と比べて、やっぱり生ドラムが入ると活き活きするなあ――繰り返しますが、ミセーリさんのドラミングは素晴らしいです!――というのがまずあります。スタジオライヴですからギターが一本になりますが、マイク・フリンツさんはすごくきっちりした人ですからバッキングからソロまで隙無くカヴァー。後に一時期(Mark Realeが病欠した際)Riotのステージをシングル・ギターにて支えることになる、片鱗をすでに見せております。Danny Miranda氏のベースは音源では少し引っ込んでいますが、やはり躍動感がある。トニーのヴォーカルも往年のRiot時代を思い出させる力の入ったもの。

――といいつつ、こんな名手名工揃いでも“ミス”はあるんだなあなんていうのも楽しみだったりして。歌い続けでしんどかったのか、ところどころトニー・ムーア氏の声が裏返ってしまっていたり。珍しく構成を間違えてマイクとダニーが別のコードを弾いちゃってたり。ドラマーの鑑、ジョン・ミセーリ先生だけはほぼ完璧(だと思う)!誰が戸惑ってもドラマーだけは楽曲を把握していなければならんという基本を再確認した次第。

 そういう場面も含めて、ハードロック・ファンには堪らぬお宝音源なのでありました。