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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳184

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The Shaggs「My Pal Foot Foot」(『PHILOSOPHY OF THE WORLD』1969)

 いまやこのアルバムは有名過ぎて、私ごときがどうこう言う余地は残されていない気もしますが……ひょっとしてまだ聴いたことがないという方もいるかもしれませんのでね。

 

 演奏が下手とか、歌がヒドイとか、そういう作品は世の中にいくらでもありますな。私は割と楽曲至上主義なので、最低限の作法もわきまえないようなプレイは許せないし(具体例を挙げて恐縮ですが、ジョン・レノンの作品におけるオノ・ヨーコ氏の奇声はホントにヒドイと思う――アバンギャルドというには、毎回同じことしかしていなくてプログレッシヴネスが無いし)、腕はあるのにパンクに見せかけようとして“下手に演奏して見せてる”ようなアザトイ奴らもキライだったりします。

 

 ただ、人力音楽の崇拝者としては、その人たちが全力を注ぎこんでいることが感じとれる限りは、決して否定しようとは思わないのです――なんだこの上から目線――ね。The Shaggsのこの作品は、作為性のない「下手」な演奏が“たのしめる”、奇跡的な作品なのです。

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 どの曲も危なっかしい――演奏力は無です――のですが、特にこの名高い4曲目「My Pal Foot Foot」はスゴイ。ギターもドラムも、「少しでも練習したらこうはなるまい」というポンコツプレイ。20秒過ぎのドラムをきいて下さいよ、「♪てんてけてんてん、ってんてん」て何ダそれは?歌詞も意味が分からない、歌もメチャクチャ。なくせにハーモニーを重ねてるのも腹が立つ(笑)。

 今時中高生が組んだばかりのバンドでもこうはなるまいて……などというと、けなしているようですが、(まあ、けなしてもいるんですが)音源を聴いているとこちらの脳が侵略されてしまって、次の曲「My Companion」に突入するころには、「でも、マジメにやってんだよなあコレ……意外に良くね?」とかって思わされてしまうのです。彼女らのバックにいた人物(おとっつぁん?)の思惑はともかく、演奏にはソウルを感じてしまうのがヤヴァイところ。

 

 Frank Zappaが絶賛したとかいう(都市)伝説?もあるようですが、まあそれはネタでしょう。ザッパ関係で言えば、Captain Beefheart『TROUT MASK REPLICA』こそ、芸術性と意外性を兼ね備えたアートでありまして……おおお、そういえば、これも1969年の作品ではありませぬか!!ビーフハートの「Frownland」とシャッグスの「My Pal Foot Foot」をタテ続けに聴いて、「1969年の前衛」を思い知るっていうのはどうですか?皆さんもヒドイ目に(笑)遭って下さい……いや、まじめな話、人力音楽はやはり素晴らしいという結論に至れることと思いますぞ。