最近あまりチェックできていないのですが、中国のヘヴィ・メタルには個人的にずっと関心を持ってまして……以前単発でいくつかご紹介したこともありましたが、ここらで少しまとめて取り上げておこうかなと考える次第。各バンドの楽曲名・出典も載せとくので、各自で探して聴いて下さい(丸投げ)。【検索にそのまま使える簡体字表記は文末に】
第一弾は、超載楽隊(超载乐队 Overload)!
1.超載「祖先的陰影」(オムニバス『揺滾北京』1993)5:40
2.超載「破砕(Trashed)」(オムニバス『中国火Ⅱ』1996)4:18
3.超載「荒原困獣(Cornered in the Moor)」(1stアルバム『超載』1996)5:22
4.超載「生命之詩(Poem of Death)」(1stアルバム『超載』1996)8:48
5.超載「一九九九(1999)」(1stアルバム『超載』1996)4:48
<メンバー(1)>
高旗(Vo)
韓鴻賓(Gt)
謳歌(Gt)
欧洋(Ba)
趙牧陽(Dr)
<メンバー(2-5)>
高旗(Vo)
韓鴻賓(Gt)
李延亮(Gt)
王学科(Ba)
王瀾(Dr)
超載(Overload)の『超載』は中国初のスラッシュメタル・アルバムという評価を受けています。同時代の欧米のスラッシュというよりは、往年のMetallicaやMegadethに影響を受けたんだろうなあというくらいのもので、現在ではさほど過激には感じませんが、当時は絶叫(シャウトする)型のヴォーカルは珍しかったということです。演奏レベルも当時としては高く、楽曲もよく構築されていると思います。
1「祖先的陰影」はアルバム未収録ですが『揺滾北京(ロック北京)』といういまや伝説的なコンピに収録されている名曲。アコースティック・ギターの調べからおもむろに始まり、劇的に加速していき……転調やテンポチェンジも絡めた知的なナンバー。まずはこれを!
2「破砕」もアルバム未収録(オムニバスアルバムに収録)。メンバーがファーストアルバムと同じになりまして、バンドとして固まった時期の曲でしょうか。ここから参加の李延亮氏も名ギタリストで、ソロアルバムも多く出されています。(何枚かは、小生も持っておる。)ツインギターのキメも巧妙になりましたか。後年には失われていく「突進感」がイイ。
3~5はこれまた伝説的なファースト『超載』から。3「荒原困獣」はヘヴィなオープニングナンバー。『METALLICA』あたりのメタリカっぽい感じがある。かも。器楽と楽曲構成(展開)がよいのはいうまでもないとして、リードシンガー高旗の歌唱も(いま聴きなおすと)やっぱり良い。唐朝の丁武あたりと並んで、タフさと繊細さと個性を兼ね備えておられる。
4「生命之詩」は9分弱になる大作。いわば「祖先的陰影」の劇的路線の究極系。前半は敢えて無機的にスタートし、中盤でアコースティックも絡めた劇的ブリッジを置いて、後半は突撃を敢行。endingに向けては「愛楽女合唱団」をフィーチュアして荘厳に終わる……凄いです。なお、原題は「死亡之詩」だったそうで、名残りが英題にのみ残っております。
じゃあ、この人らは入り組んだ曲ばっかり作っていたのかというと、そうでもない。比較的ストレートな疾走ナンバーもありまして、それが5「一九九九」であります。My favorite……とりあえず気合入れたいときはこれを掛けるのだ!功労者はドラムの王瀾さんかなあ。バスドラ踏み踏みで良い圧力、終盤ちょっとだけブラストっぽいフレーズも披露。李延亮先生のテクニカルなソロも美味しい。
彼らはかなり良質のアルバムを作ったにもかかわらず、レコード会社から「もっとポップにせよ」と言われたとかで、2nd以降は作風が変わってしまいました(楽曲の質は悪くないのですが)。余所でもよくある話が中国でもあるのですね。
路線転換後の作品『生命之詩』(2枚組のアコースティックライブ・アルバム)も私は入手しました。もちろんスラッシュ・メタルではありませんでしたが、高旗や李延亮たちの才覚はやはり光っていましたね。タイトルにもなっているように「生命之詩」も演奏し目玉にしたところに彼らの心意気がある、のでしょう。
<この企画続く>
【簡体字表記】
超载乐队
ALBUM《超载》
SONG《祖先的阴影》《破碎》《荒原困兽》《生命之诗》《一九九九》