ここらで毛色の違うのを紹介。第九弾は海市蜃楼楽隊(Mirage)です!
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北京のCDショップ(not専門店)をうろついていた際に、ロックのコーナーに並んでいた。いや、いなかった……トールケースとは違うのですが少しサイズの大きいブックレットを挟むようにしているためフツーの棚に並ばないヘンなCDがあったのね。「なんだろ?」と思って手に取ると、オモテに「技術型前衛揺滾」などと書いてある。「テクニカル・プログレッシヴ・ロック」ですかね。「そういうのも出てきてるんか?」と思って、頑張って買いました。
1.海市蜃楼「海市蜃楼(Mirage)」(1stアルバム『海市蜃楼Mirage』2009)9:08
2.海市蜃楼「金銭(Money)」(1stアルバム『海市蜃楼Mirage』2009)4:22
3.海市蜃楼「天堂(Paradise)」(1stアルバム『海市蜃楼Mirage』2009)6:30
<メンバー>
金悟空(Vo)
顧鍇(Gt)
王亜東(Ba)
大梁(Dr)
李楽君(Key)
音の方は、所謂ドリーム・シアター系のプログレッシヴ・メタルでした。1999年結成で2009年にファーストアルバムですから、だいぶ下積み(?)期間があったようですが、演奏・歌唱とも相当のレヴェル。現在は脱退してしまっているようですが、金悟空氏の伸びやかなヴォーカルは心地好い。変拍子ももちろんふんだんに用いられるわけですが、歌モノとしての魅力がしっかりあるのは好印象ですね。
アルバム冒頭の1「海市蜃楼」からいきなり9分超の長尺ソングなんですが、タフなリズムの妙、メロディアスに決めるギターや鍵盤の見せ場、歌で引っ張る盛り上がり、さらには民族音楽の風味もかすかに振り掛ける周到さ……聴き手を万華鏡世界もとい蜃気楼世界に引き込みます。ライヴでこれを再現していたとしたらワールドクラスですね。
今回あげていませんが「寂寞之旅」あたりの短めの曲(ったって4分半あるが)の快活なところなどは、私の好きなFlying Colorsっぽい雰囲気があって嬉しくなる。その一方で2「金銭」のようにヘヴィなリフで引っ張るハードなロック・ソングもあるのが愉快なところですわ。シンプルなようでいて、メインのリフの拍子はヒネってある……かと思うと朗々とした歌い上げはきちんとフィーチュアされてるし、なかなか巧妙な人たちです。
もう一つ挙げた「天堂」(3)は、アタマから変拍子でこっちを揺すりにかかる、プログレ野郎御用達の一曲。ベースがブンボコ引っ張りまわす上で、一味違う(敢えて無機的だったりするパートも有り)歌もからめてくる隙の無さ。中盤のピアノ、からのキーボード・ソロも良い。ドラマティックに展開する6分半に大満足。
こういう作品を作れるバンドが新作を次々送り出してくれれば……と思うものですが、現実は厳しい。彼らはその後一枚EPを出したきりで、フル・アルバムの音沙汰はありません。ヴォーカルを替えて活動は続けているようなので、頑張ってほしいです。
<続く>
【簡体字表記】
海市蜃楼乐队
ALBUM《海市蜃楼》
SONG《海市蜃楼》《金钱》《天堂》