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ロックンロール青果店(26)

(26)Francis Dunnery「Yam」

 むかしむかし、イングランドのカンバーランド(現カンブリア)にNecromandusというバンドがあった。Black SabbathのTony Iommiがプロデュースしてアルバム『OREXIS OF DEATH』をつくった(1973年)。しかし諸事情で音源はお蔵入りし、1999年にはじめて陽の目を見た。2010年にはブリティッシュロックの守護神CathedralのヴォーカリストLee Dorianが主宰するRise Aboveレコードから、ボーナス付きのリイシューが出、多くの人の耳に届くようになった。

 

 レアなライヴ音源まで入って……「有難う、リー!」と思いながら再生する古典ハードロック・マニア(吾輩)。ひねくれていながら爽快なところもあるリフ、ホールズワース系のテクニカルなギター・ソロ……ギタリストが特に凄いね。なになに、Barry Dunnery?ダナリーってどっかで聴いた名前だなあ。うん?カンブリアのバンドってことは、もしやIt Bitesと関係が?

 

 大ありであった。BarryはIt Bites(いまはIt Bites)のFrancis Dunnery(Vo, Gt)の兄上だったのじゃ。フランシスは1962年生まれなので、兄貴がアルバムを作っていたころは小学生か。にしてもギターのうまい兄弟である。一緒に何かやってくれればいいのに……などと私が思いついたころには、Barryさんはもう亡くなっておりました。

 

 そうしたら2013年のこと、フランシス・ダナリーさんがソロアルバム『FRANKENSTEIN MONSTER』を発表。変わったタイトルだなあと思ってネット上に出ている説明を読んでみると、フランシスが兄バリーとそのバンドの曲をリメイク・新録音した(+α)作品だというではないか。む、フランシスのハードロック・ギターが聴けるチャンス!ということでこっちにも手を出す、先方(だれ?)の思う壺な小生。

 

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 で、内容は最高。モトがよいものを、兄への敬愛の念を込めて弟が気心知れた仲間とともに丹念に仕上げるんだから、悪いわけが無い。ただ、Necromandusのアルバムでは「Nightjar」となっていた曲がこちらでは「Don’ t Look Down Frank」、「A Black Solitude」となっていた曲が「Yam」となっているなど、曲名がなぜか大変更。フランシスによると、Necromandus版の曲名は、制作側(トニー・アイオミ?)が付けたものだったそうで、‟もともと”バンド側(カンブリア人たち)はこの『FRANKENSTEIN MONSTER』版のように呼んでいたのだとか。

 

 正直なところ半信半疑だったのですが――カンブリアン・ジョークの可能性をうたがったのであった――、2017年に本家Necromandus(オリジナルメンバーはドラムのFrank Hallだけ……)が出したアルバムに含まれていたリレコ版のタイトルも「Don’t Look Down Frank」。ホントだったのねと悟りました。フランシス、うたがってごめんなさい。あ、Frank HallのNecromandus『NECROMANDUS』(2017)はなかなか良い出来です。当然儂はアルバムを買ってチェックしておるぞ。

                         

 

 「Yam」(ヤマイモ)と「A Black Solitude」(黒き孤独)じゃあイメージがまるで違いますが……フランシスによると、もともとNecromandusはそんなにドゥーミーな(いわばブラック・サバス系の)曲を作っていたわけではなかったというのですね。このあたりは、トニー・アイオミ側の証言も聞いてみたいところ。

 

 楽曲としての「Yam」は、冒頭ジャジーというかプログレ風というか妙な変拍子の畳みかけからスタート。そのイントロが済むと、アコースティック・ギター+穏やかなベース&ドラムによるフォーキー/ドリーミーなパートへ。くつろいでいると、Yesをもうちょっと神経質にしたみたいなインスト展開部を挟んで、後半へ。同様の進展を見せた後、♪ジャララララ……と幕。Necromandus版「A Black Solitude」も構成は完全に同じですから、1973年になかなかプログレッシヴなハードロックをやっていたんですなあ。強いて挙げればCaptain Beyondの様な?つまり私の大好物だったわけだ。

 

 今回は企画趣旨に合うのが「Yam」でしたが、Necromandusでまず一曲!という方は「Don’t Look Down Frank」(又は旧称「Nightjar」)を聴いてみてください。英国70年代にはスゴいギタリストがヤマほどいたんだなあ、とわかりますので。