DON'T PASS MUSIC BY

"Louis XIV, finesse and force......."<Chroming Rose>

第41回「Ice Age」(3)

ホームページがありますので、そこを参照しつつIce Ageのおもなメンバーの来歴などをちょっと拾ってみましょうか。


Josh PincusVo & Key):
6歳でピアノを弾き始め、クラシックも学ぶようになる。後にスクールオーケストラで演奏したりハイスクールコーラスで歌ったりするようになるが、リード・シンガーとしての力量を確かなものにするため、1994年からTNTTony Harnellのヴォーカル・トレーニングを受け始める。

本人曰く、「少年時代はクラシックと映画音楽の影響が大きかった」。ロックとの出会いは、両親が持っていた昔の作品、例えばSimon & GarfunkelBob DylanHarry Chapinなどによるものだったという。また、特にRushSIGNALSには衝撃を受け、楽曲と演奏とともにその深く思索的な歌詞にやられたとのこと。NeilPeartRushのドラマーであり詞作者)が自らにとってのヒーローであり、Rushのお陰でヘヴィな音楽(Led ZeppelinBlack Sabbath、初期Rainbow)やプログレStyxKansasYesJourney)にも向かうこととなった。
 
 Jimmy PappasGt):
 ギリシアで生まれ育ち、ギターは1980年からプレイしているという。欧州育ちのため、英国ロック(Deep PurpleRainbowThin LizzyPink Floyd)のファンとなった。

 18歳でアメリカはニューヨークのロング・アイランドに移住。移住先では様々なタイプのギタープレイ(Steve MorseJeff BeckNeal SchonGeorge Lynchら)に触れることとなった。1992年に友人のキーボーディストJosh PincusIce Ageを結成。彼が影響を受けたとしているギタリストは、Ritchie BlackmoreDavid GilmoreMichael SchenkerGary MooreSteve MorseTony Iommi

 作曲に関しては「楽曲は映画に似ている。歌詞が物語(ストーリーテリング)を供し、音楽が映像を表すんだ」と語っている。
 

 ふむ。ロック・クラシックを好んできたところ、楽曲に構築美・構成の妙を求める姿勢、優れた先達プレイヤーへの敬意といったあたりが二人に共通するようですね。あとは、彼らの音を聴いたらわかりますが、同じくRushの影響を多大に受けながら先行したDream Theaterの作風と成功にも刺激を受けているであろうことでしょうか。

 Dream Theaterの登場以降、‟プログ・メタル“が一ジャンルとなるほどにもなりましたが、「単なる亜流」に終わらないできちんと個性を示せているグループはそんなに山ほどあるわけではない。私の好きなSymphony Xなんかは立派なものだと思いますが、このIce Ageも、少なくとも作品はなかなか見事なもの。Joshこだわりの歌詞やアルバム世界観もしっかりしているし、「歌」がやっぱり力強くてね。(彼らのライヴ活動がどうだったのか――そもそもライヴで頻繁に活動できていたのか――は、わからないのですが。)
 
 では後は、作品を聴いて行きましょうか。
 
Ice AgeTHE GREAT DEVIDE1999
1. Perpetual Child
2. Sleepwalker
3. Join
4. Spare Chicken Parts
5. Because of You
6. The Bottom Line
7. Ice Age
8. One Look Away
9. Miles to Go
10. To Say Goodbye Part.1: Worthless Words
11. To Say Goodbye Part.2: On Our Way
<メンバー>
Josh PincusVo, Key
Jimmy PappasGt
Arron DiCesareBa
Hal AponteDr
 
イメージ 1

 

 いきなり10分越えの「Perpetual Child」ですが、冒頭からギターとキーボードが派手派手しく鳴る変拍子インスト前奏が220秒も。Yesなんかが好物になった今なら何とも思いませんが、「普通の歌モノ好き」だったら置いてきぼりですな。とかいいつつも、Joshが朗々と歌い始めると、そっちに耳が行くようには出来ていますけど。TonyHarnellの弟子(って言っていいんだよね?)だけのことはある。730秒辺りのJimmyのギター・ソロ(上手いです)も強引で良い。難点を挙げれば、「音の洪水で聴いてて疲れる」ってところですかね。まあ、Dream Theaterが大丈夫な人なら余裕でしょう。


 ドラムHal Aponteのフィル・インから始まる「Sleepwalker」も、熱い歌と超絶技巧の器楽が盛り沢山。一曲通じてテンポ・リズムがだいたい保たれる、彼らにしてはストレートな(?)楽曲……。3分頃からのベースが前に出るところとか、後奏(5分あたり)からのキーボード・ソロなんかがいい感じ。Josh作の歌詞は、押韻のよく考えられた凝ったものですが、テーマは“sleepwalker夢遊病)”ということでいいのかな。


 次の「Join」は、爽なコード進行(?)で幕を開ける。ヴァースの部分のバッキングのギターは、It Bites風かな。「Old Man And The Angel」のアタマみたいなやつね。これに限らず、割と先達からの影響を素直に音にしてる彼らですけど、一曲の中で目まぐるしくチェンジしていくので、出来上がったものはそれなりに個性的に(“フランケンシュタインのモンスター”的とは言えるかもしれないけど)。イット・バイツからジェネシスに行って、イエスになってからドリーム・シアターを経由して……みたいにね。あとは歌詞が重要なんだろうけど、私程度の理解力では、何を歌ったものかつかみきれないところもあります。


 なんて泣き言を言っていると、次の「Spare Chicken Parts」はインストゥルメンタルでした。お得意のリズム・チェンジや主役交代を絡めて9分弱の間展開する技巧は見事でありますが……520秒辺りからのAponteさんのドラムソロが聴けるのもドラム・ファンとしては嬉しいのですが……さすがに疲れます(聴き手が)。


 続いて、軽快なギターリフに導かれて進む「Because Of You」。28秒辺りからのギターソロは、後半の音詰め込み過ぎが強引に思えますが、そこの後が“トンネルを抜けると陽が燦燦と輝いていた”みたいな感じになるのは好き。“♪You melted me like the summer sun”とか出てくる歌だしね。5分あたりのところがまたIt Bites-esqueかな?


 「The Bottom Line」は、ミドルテンポ主体の曲。……なんでしょうけど、音が詰まっているのと、Josh歌唱が熱すぎるので、バラード感無し。もちろんバンドの狙いでそうしたんでしょうけど、ここまで聴いて疲れてしまった軟弱者としては、“もうちょっとリラックスして演ってくれてもいいんですけど……”と言いたくなってしまうかな。


 バンドのテーマ曲(?)「Ice Age」は本作中最長の119秒。浮遊感のあるSE風の幕開けから、お得意の「熱い歌+技巧的器楽」の本編へ。“♪We are living in the ice age, a blizzard of blind rage……”という歌い出しから察するに、SF的なテーマ設定なんでしょうか。いや、大作なので後の方まで聴かないとわからないか。45秒辺りからの盛り上げ→短い器楽間奏→ブリッジ、のあたりの展開は(例によって目まぐるしいですが)見事なもの。少なくともこの曲に関する限り、Jimmy Pappasの言った通りで、「楽曲は映画に似ている。歌詞が物語(ストーリーテリング)を供し、音楽が映像を表」しているように思える。などと言いつつも、“♪Life in the ice age, a mystery to me……”云々と歌われる詞の内容がきっちり理解できたわけではないのですが。メタル的に美味しいフレーズ・リフ・ソロが“寒々しい”楽曲のイメージの中でこれでもかと繰り出されるのは◎。特に、終盤の突っ込んで行き方は悪くない、です。


 正直言ってここまででもうお腹一杯。まだ続く?と思うと、次の「One LookAway」はピアノ中心のバラード……というには途中からギターも出張ってくるか。“♪I’ve renamed this earth, in search of “deeper ”things……”なんていう具合で、Joshの歌詞は難解な語句はほとんど出てこないのですが、「誰の視点で」「どういう事柄を」「いかなる心情として」描いているかは容易な解釈を許してくれません。(ネイティヴだったら、すぐにわかるんでしょうか?)次の「Miles To Go」も私には似たテーマに思えたんですが、どうなんでしょう。楽曲としては、この2曲は本作中でも聴きやすい部類に入るんじゃないですかね。「とりあえず聴いてみて!」っていうんならこの辺りから薦めますか。


 最後の2曲は「To Say Goodbye」なる組曲。パート1インストゥルメンタルシンセサイザーもピアノも堪能なJoshが大活躍。パート2は、まあ所謂プログ・メタルしてます。彼らの場合あまりダークな音像じゃないのが他と違うところですかね。「One Around The World」のIt Bitesが“やり過ぎちゃった”みたいなイメージ……ってわかり難いかな。


 繰り返しになりますが、器楽演奏も歌唱もたいへんに上手なので、“なんだよ、弾ききれてないじゃん(歌えてねえよ)”的なストレスは皆無ですが、人によってはやはり疲れるかも。歌詞――かなり深みのあることを巧く表現している感じはする――が楽しめればもっといいんでしょうけど、ね。<続く>