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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

中国メタル名曲紹介(10)霜凍前夜楽隊

 これまで9団体紹介してきましたが、ほかにも以前このブログで特集的に取り上げた爆漿楽隊(Explosicum)第35回「Explosicum(爆漿楽隊)」(1)

〕、同特集で付随的に言及した軍械所楽隊(Ordenance)第35回「Explosicum(爆漿楽隊)」(4)〕など、力量と情熱を兼ね備えたアクトは出てきています。2000年代後半に登場――結成時期はだいぶ遡るグループも多いですが――した彼らは、第何世代とカウントするのでしょうかね。それはともかく、

 

 第十弾の、霜凍前夜楽隊(Frosty Eve)も、その枠に入るのかな。

  【検索にそのまま使える簡体字表記は文末に】

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1.霜凍前夜「垂死的夢境(A Dying Dream)」(1stアルバム『極夜Polar Night』2009)4:04

2.霜凍前夜「鏖戦(The Fierce Battle)」(1stアルバム『極夜Polar Night』2009)3:56

3.霜凍前夜「毀滅交響」(EP『垂死的夢境Dying Dreamland』2007)4:06

<メンバー(1-2)>

苗振中(Vo)

張軼(Gt)

郝昕(Gt)

趙暉(Ba)

王東(Dr)

楊天光(Key)

<メンバー(3)>

苗振中(Vo)

張軼(Gt)

郝昕(Gt)

趙暉(Ba)

王東(Dr)

戴大名(Key)

 

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 霜凍前夜(Frosty Eve)は2003年結成ということです。アルバム『極夜』を聴いてもらえばおわかりの如くメロディックデスメタル……というかもろにChildren Of Bodomの影響下にありますね。

 

 「近年若手メタル・バンドが多く出て来るようになったのはよいのですが、それぞれが奉じるアーティストへの傾倒が露骨過ぎるという事例は少なくありませんね。技術的な水準は充分に高い霜凍前夜が、個性的な存在になるかどうかは今後次第というところでしょうか。」

 

 っていうのを十年位前に添えて友人に音の紹介していたのが懐かしい(偉そうな書きぶりでしたな)。でもねえ、“本家”のアレキシ・ライホが亡くなるという悲しいことがあった2021年、もうフォロワーでもいいですから頑張ってもらいたいなと少し考えを改めました。

 

 1「垂死的夢境」は、もろChildren Of Bodom(COB)の作風。歌い方、フレーズのキメの置き方、鍵盤の音色、太鼓の感じまで、よくまあフォローしたなと。いや、私はこうしたわかり易いのは好きです。小生デスメタル・マニアではないので、このくらいメロディアスでわかり易くテクニカルなのはありがたい。

 

 でも、もう少し個性を出してくれても……と思ったら、なんだ、あるじゃないの。アルバム最後の「鏖戦」(2)。この一曲だけで俺はこのバンドを中国メタル史に残してイイと思うね。COB味のメロデスではあるのですが、イントロから“京劇”っぽさを出してきて、ツイン・ギターの絡むフレーズが民族音楽風味を程よく取り込んだものになってて絶妙。疾走曲でないこういう曲で味わいを感じさせられるのは素晴らしいよ。いつもの鍵盤の音の代わりに、琴らしい音色を投入したのも正解。ちょっと説明が難しいので、何とか探してこれだけでも聴いて下さい!アルバムの監修が(われらが)陳曦先生(@冥界楽隊)なんだからクオリティが折り紙付きなのはわかるっしょ?

 

 彼らがアルバムを出すよりさらに前に発表してたのが4曲入りEP『垂死的夢境』なのですが、そこに入ってる「毀滅交響」もついでにどうぞ。タイトルでわかりますかな?

 

 ……Megadeth「Symphony Of Destruction」のカヴァーですよ。これもね、まるでチルボドがカヴァーしてるみたいになってる、よ。鍵盤によるオーケストレーションを加えて“シンフォニー”風にしてるのが微笑ましい。

 

 などど偉そうに述べてしまいましたが、彼らは2010年代もコンスタントに作品を出している働き者。近年の作品はチャンスが無くて聴けていないのですが、“中国旋死”(チャイニーズ・メロデス(中国旋律死亡金属)――漢字で書くと凄いね)の担い手として頑張っていただきたいものです。

<続く>

 【簡体字表記】

霜冻前夜乐队

ALBUM《极夜》

SONG《垂死的梦境》《鏖战》

EP《垂死的梦境》

SONG《毁灭交响》

どんぱす今日の御膳142

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Helloween「Faith Healer」(『METAL JUKEBOX』1999)

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 ジャーマン・メタル大御所Helloweenが作ったカヴァー・アルバム。ScorpionsDeep PurpleCreamFrank MarinoといったHR系のいかにもな曲もあれば、The BeatlesABBAのようなポップス寄りのもの、Jethro TullFocusといったプログレ……とまあ、何でもあり。

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 Andy Deris(Vo)さんは音域の広いタイプじゃないから、必然的にオリジナルとは違う仕上がりになることも多い。ハロウィンというバンドは、軽快な乗りを出すのが得手なわけじゃないから、「All My Loving」なんかは高速&重い妙な仕上がりに。本人たちは楽しんでるからいいんですけど。あと、ジャケットはイイ。

 

 で、そういう中で、「これはうまくいってるのでは?」と思ったのがThe Sensational Alex Harvey Band「Faith Healer」(SAHBの原題は「The Faith Healer」である。1973年。)です。元の曲が素晴らしいブリティッシュ・ハードロックの名曲であるということもありますが、アンディのヴォーカルもよく合ってるし、何やっても重くなっちゃうハロウィン楽隊のパワーが活かされてます。誰の趣味で選んだのか知りませんが、ナイス。(日本語盤ライナーノーツには選曲理由などが書かれていた気がしますが、いま手元に無い……)

 

 実はもう一人、メタル界でこの曲「Faith Healer」好きな方がいましてね……Paul Di’annoっていう人です。Iron Maidenの初代シンガー。(第10回「Iron Maiden」(2))彼は自らのバンドKillersのセカンドアルバム『MENACE TO SOCIETY』(1994)にこれを録音したほか、ライヴでもやったことがあります。(DVD『THE BEAST IN THE EAST』(2003)で観られます。)彼のヴァージョンもなかなかヘヴィであります。

どんぱす今日の御膳141

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Tony Hollins「Crawlin’ King Snake」(『OKEH CHICAGO BLUES』1982)

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 この曲を有名にしたのはJohn Lee Hookerでしょうけれども、先達はトニー・ホリンズさん。Hollins氏のシングルは40年代に出たそうですが……

 

 ブルーズ曲の通例で、トラディショナル的な原型はもっと早くからあったみたい。ロックファンはThe Doorsのをお聴きなされ。(『L.A. WOMAN』

 

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 ジョン・リー・フッカー御大はドスの効いた「デカイ蛇が這ってるような」感じを醸し出しましたが、ホリンズ先輩は意外に声が甲高かった。カントリー・ブルーズのこの味わい、捨てがたいよー。

中国メタル名曲紹介(9)海市蜃楼楽隊

 ここらで毛色の違うのを紹介。第九弾は海市蜃楼楽隊(Mirageです!

  【検索にそのまま使える簡体字表記は文末に】

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 北京のCDショップ(not専門店)をうろついていた際に、ロックのコーナーに並んでいた。いや、いなかった……トールケースとは違うのですが少しサイズの大きいブックレットを挟むようにしているためフツーの棚に並ばないヘンなCDがあったのね。「なんだろ?」と思って手に取ると、オモテに「技術型前衛揺滾」などと書いてある。「テクニカル・プログレッシヴ・ロック」ですかね。「そういうのも出てきてるんか?」と思って、頑張って買いました。

 

1.海市蜃楼「海市蜃楼(Mirage)」(1stアルバム『海市蜃楼Mirage2009)9:08

2.海市蜃楼「金銭(Money)」(1stアルバム『海市蜃楼Mirage2009)4:22

3.海市蜃楼「天堂(Paradise)」(1stアルバム『海市蜃楼Mirage2009)6:30

 

<メンバー>

金悟空(Vo)

顧鍇(Gt)

王亜東(Ba)

大梁(Dr)

李楽君(Key)

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 音の方は、所謂ドリーム・シアター系のプログレッシヴ・メタルでした。1999年結成で2009年にファーストアルバムですから、だいぶ下積み(?)期間があったようですが、演奏・歌唱とも相当のレヴェル。現在は脱退してしまっているようですが、金悟空氏の伸びやかなヴォーカルは心地好い。変拍子ももちろんふんだんに用いられるわけですが、歌モノとしての魅力がしっかりあるのは好印象ですね。

 

 アルバム冒頭の1「海市蜃楼」からいきなり9分超の長尺ソングなんですが、タフなリズムの妙、メロディアスに決めるギターや鍵盤の見せ場、歌で引っ張る盛り上がり、さらには民族音楽の風味もかすかに振り掛ける周到さ……聴き手を万華鏡世界もとい蜃気楼世界に引き込みます。ライヴでこれを再現していたとしたらワールドクラスですね。

 

 今回あげていませんが「寂寞之旅」あたりの短めの曲(ったって4分半あるが)の快活なところなどは、私の好きなFlying Colorsっぽい雰囲気があって嬉しくなる。その一方で2「金銭」のようにヘヴィなリフで引っ張るハードなロック・ソングもあるのが愉快なところですわ。シンプルなようでいて、メインのリフの拍子はヒネってある……かと思うと朗々とした歌い上げはきちんとフィーチュアされてるし、なかなか巧妙な人たちです。

 

 もう一つ挙げた「天堂」(3)は、アタマから変拍子でこっちを揺すりにかかる、プログレ野郎御用達の一曲。ベースがブンボコ引っ張りまわす上で、一味違う(敢えて無機的だったりするパートも有り)歌もからめてくる隙の無さ。中盤のピアノ、からのキーボード・ソロも良い。ドラマティックに展開する6分半に大満足。

 

 こういう作品を作れるバンドが新作を次々送り出してくれれば……と思うものですが、現実は厳しい。彼らはその後一枚EPを出したきりで、フル・アルバムの音沙汰はありません。ヴォーカルを替えて活動は続けているようなので、頑張ってほしいです。

<続く>

 【簡体字表記】

海市蜃楼乐队

ALBUM《海市蜃楼》

SONG《海市蜃楼》《金钱》《天堂》

どんぱす今日の御膳140

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Spirits of RhythmTutti Frutti」(『MAN THAT’S GROOVY : EARLY VOCAL GROUPS 1935-1944』1992)

 

 リトル・リチャードのアノ曲ではございません。あれより前に「トゥッティ・フルッティ」という曲があったなんて!知らなかったので思わずピックアップ。1943年の演奏みたいです。

YouTube上には音源は出ていないようですね。〕

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 古い録音でやや不明瞭なところもありますが、ヴォーカルのノリノリのスキャットが全面展開、軽快なピアノが舞い踊るダンサブル・ナンバー。終演後に聴衆の歓声が入るのでこれはライヴ演奏かな。