もう一つ、“関連作品”枠で。
*2013年のリイシュー版に基づく(注)
1.魔王凱旋
2.地獄の皇太子
3.ROCK IN THE KINGDOM
4.X・Q・JONAH
<メンバー>
デーモン小暮(Vo)ほか

リリース当時、当時はまだ構成員ではなかったゼノン石川和尚(デーモン閣下のサークルの先輩にあたる)が、「小暮もとうとうプロになったかあ!」と感銘を受けた(‟もっとも印象に残っている”)という作品。もちろん、偉大なグループ聖飢魔Ⅱの始まりを知らしめる重要作品なのですが、些か不思議な事実が有ります。レコードにクレジットされているのはデーモンの他エース・ジェイル・ゾッド・ライデンなのですが、歌以外はプレイは彼らではないのです。(「そもそも……〔ファーストでは〕叩いてない」(by ライデン殿下)などと当人たちが書籍等で証言していますので、事実としてよいでしょう。)
セカンド・アルバム以降の作品を聴き込めばわかりますが、聖飢魔Ⅱの演奏陣は、それぞれに演奏の癖というか個性をはっきりとお持ちです。エース長官のメロディセンス、ジェイル代官のタイム感、ワン・バスでスピードナンバーもバラードも味付けして見せるライデン殿下……などなど。
ところが、ファースト・アルバムにはそれらが聴き取れないのです。「これはやっぱり別の人がやってるんだなあ」というところまでは、ロック好きの人なら気付くかと思います。ただ、「じゃあ、あれは誰?」っていうのは、私にはわからなかった。タイプが違うとはいえ、かなり「うまい」人たちが演奏していることまではわかっても。
個人的に理解が追い付いたのは、前にも何回か言及した山田晋也著『聖飢魔Ⅱ激闘録ひとでなし』(パンプロダクション2006年)を読んだあと。聖飢魔Ⅱの初期の侍従長だった平野氏がフュージョン界に人脈を持っていたというお話(のちのRXもそれで実現した由)、『聖飢魔Ⅱ』のプロデューサー渡辺建さんがPrismのメンバーだったということなどを踏まえると、巷間いわれていた「あれは演奏はPrismでは?」説に裏付けが取れた気がしたのです。
誤解されたくないので申し添えますが、私はPrismが代替演奏をしているから良いとか悪いとかいう話をするつもりはありません。楽曲が聖飢魔Ⅱ(当時はダミアン浜田およびデーモン小暮の作品が主)のものであり、そのクオリティが素晴らしいものであったことに間違いはないので。単に、セカンド以降とは「音のイメージが異なっている」という事実を指摘しているだけです。
これは推測になりますが、聖飢魔Ⅱのメンバーが固まって、ミサや教典制作を積み重ねていくうちに、「あのアルバムの曲を現行メンバーで録り直したい」という思いも募っていったのではないでしょうか。
初めてのベスト盤『WORST』には、ファーストからは「ROCK IN THE KINGDOM」が収録されていますが、アルバム版ではなく、デーモン・エース・ルーク・ゼノン・ライデンのラインナップによるリレコーディング版が入れられていますし、ライヴアルバム『LIVE! BLACKMASS IN LONDON』(1992)の掉尾を飾るのは同ラインナップの「悪魔組曲」(正確には、英題で“THE DEMONIC SYMPHONY SUITE OPUS 666 IN Dm”)でした。
「地獄の皇太子」は、解散年に出た新録中心のベスト『1999 BLACKLIST(本家極悪集大成盤)』(1999)にニューヴァージョンで入っており(序でに言うと、「悪魔組曲」のスタジオ再録版も入ってる盤)、このヴァージョンが『XXX-THE ULTIMATE WORST』(2015)という最新ベスト盤にも採られています。
「魔王凱旋」も、解散ミサでダミアン殿下登場時に演奏されたのを除いては聴けなかったのですが、近作の『全席死刑-LIVE BLACK MASS東京』(2016)でついに再演版が通常音源化されました。オリジナル後半の疾走パートのないヴァージョンになりますが、デーモン・ジェイル・ルーク・ゼノン・ライデンのラインナップによるもの。
その後の再録・再演のない「X・Q・JONAH」を除いては、本人たちの演奏による『聖飢魔Ⅱ』楽曲を聴けるようにはなったわけです。三十年かけて。で、こうなってみると信者というのは勝手なもので、むしろオリジナルアルバム『聖飢魔Ⅱ』の演奏陣が気になったりするものなのです(私だけ?)。おそらくベースはプロデュースもつとめた渡辺建さんで、ギターは和田アキラさん。ドラムは当時Prismに関わっておられた人ならば木村万作さんかと思われます。(1985年当時のPrismは和田さんと渡辺さんのユニットで、他のプレイヤーはゲスト。なお、この頃のPrismのアルバムには深町純さんもKeyで参加されていた様子。『聖飢魔Ⅱ』の方にはさすがに関わっておられないかと思いますが。)繰り返しますが、以上はあくまで公表されている情報のみをもとに推理したものに過ぎず、クレジットには一切無いことでございます……。
<続く>