DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

温故知新旧稿再録(5)「ハードロック前史」(後篇)

 ようやく後篇です。自分で読み直して吃驚、なんだこのラインナップ。どうぞお楽しみ下さい。
------
(7)SteppenwolfBorn To Be Wild」STEPPENWOLF』(1968)
ハードロックはブルーズロックの発展系、とする観点からはどうしてもイギリスに目がいきがちであるが、アメリカでもこうした音楽は育っていた。Blue CheerGrand Funk Railroadなどいくつかのバンド名をあげることができるが、ここでは一つだけ、Steppenwolfをあげておく。

 

ヴォーカリストJohn Kayアメリカでバンド結成を画策してできあがったのがこのバンド。彼らのルーツはブルーズ・ブルーズロックであり、彼らの曲もそうした色彩が濃い。
Born To Be Wild」は彼らの代表曲で、映画の主題歌にもなった。印象的なリフに導かれる疾走感あふれる曲展開とキャッチーな歌メロによってこの曲はハードロックの代名詞のように言われる。余談だが、歌詞にある「I like smoke and lightning/Heavy metal thunder」がヘヴィメタルという呼称のルーツではないかとも言われる。
イメージ 1
 
 この曲も多くのアーティストがカヴァーしている。同じアメリカのBlue Öyster Cultはライヴでよく演奏していたし、RiotというバンドはアルバムNARITA』でこの曲のカヴァーを披露している。
 
(8)Billy Joel「She's Got A Way」『COLD SPRING HARBOR』(1971)
まったくハードロックではないが、選者の趣味で。Billy JoelThe Beatlesにもろに影響されて音楽を志したうちの一人。小さい頃に勉強したクラシック、少年時代に熱中したThe BeatlesThe Rolling StonesJimi Hendrixといったロック、レイ・チャールズらのR&B、ジャズ……ピアニストとして、そしてソングライターとして、吸収したあらゆる素養を彼はそのソロ作で遺憾なく発揮している。
イメージ 2
 
この曲は、ソロデビューアルバムの一曲目。当時はほとんど話題にならず、後にTHE STRANGER』1977)や52ND STREET』1978)で彼が大ブレイクしてからあらためて注目されたという作品。ほぼピアノ弾き語りのスタイルで、繊細なイメージの佳曲である。
 
(9)Attila「Rollin' Home」ATTILA』(1970)
最後に紹介するのは、Attilaというアメリカのバンド。このバンドのCDは正式には出ていない(Epicから出たレコードはとうに廃盤)ので、知名度はきわめて低い。しかし、1970年という段階での作品としては特筆に価する「凶暴性」を具えていると考える。
 
Attilaは、実はヴォーカリスト兼キーボーディストと、ドラマーとの二人によるユニット。歪んだ音はすべてキーボード・オルガンによるもの。Led ZeppelinJimi Hendrixに影響を受けたというその音像はいかにもハードである。手数の多いドラムも凄いが、これだけ弾きまくるキーボードもなかなかいない。ヴォーカルスタイルもワイルドで、シャウト主体となっている。このアルバムが大して売れなかったためユニットは解散となっているが、今振り返ると、もっとはハードロック初期の名作として評価されてよかったのではないかと思う。
イメージ 3
 
いますぐ復刻して発売して欲しいと思うが、当のアーティスト(kbdの方)本人が再発に待ったをかけている、という話も聞く。彼自身が今やっている音楽とあまりにかけ離れているためだろうか。なお彼自身による本作への評語は「Psychedelic Bullshit」だという……若気の至り、というところか。ドラマーJon Smallはこの後音楽をやめカメラマンになったらしい。キーボーディスト・ヴォーカリストWilliam Martin Joelは、西海岸へ渡り、音楽ライターやバーでのピアノ弾き語りなどをして音楽と関わり続けた。

 

この曲は、唯一のアルバム中でも特に疾走感のある曲である。アート・ロック草創期の名キーボーディストというと、Keith EmersonEL&P)やJon LordDeep Purple)、Ken Hensley(Uriah Heep)Rick Wakeman(Yes)Vincent Crane(Atomic Rooster)らがよく挙げられるが、このアルバム、特にこの曲でのW.M.Jもまた彼らと同列に語られて然るべきであろう。再評価を強く望む。<後篇完>
-------
 
あーあ、やってしまってますね。ステッペンウルフはまあ妥当として、ビリー・ジョエルアッティラ(当ブログ第2回参照2回「Attila)ですって!たぶん、「このピアノ・マンが、70年にはハードロックをやってたんですぜ!そういう時代があったっての凄くないですか?」って言いたかったんだろうね。

 

しかもAttilaの方の記述では勿体ぶってBilly Joelの名前を出さんようにしてるし。レジュメには肝心なことを書かず、プレゼンで種明かしをしようという小細工でしょうかな。慚愧慚愧。

 

ただまあ、私の幼稚さと音楽の内容は無関係。「Born To Be Wild」も「She's Got A Way」も「Rollin' Home」もいい曲なのは確かですんで、だまされたとおもって聴いてごらんなさい、とは言っておこうかな。<終わり>