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Herbie Hancock「Ostinato(Suite For Angela)」(『MWANDISHI』1971)
名ジャズ・ピアニストHerbie Hancockの第9作。1971年録音。電化マイルスのような音を狙ったんじゃないかと思いますが、ああいう(『IN A SILENT WAY』とか『BITCHES BREW』とかみたいな)音かな。“Mwandishi”というのはスワヒリ語で「作家」という意味なんだとか。この辺のインフォメーションについてはまあいいでしょうか。
私個人の興味は2点。まず、この15/8拍子の反復ファンク「Ostinato」(“執拗音型(執拗反復)”の意)の副題に「Suite For Angela」とあること。70年代にいくつかあった音楽界からのアンジェラ・デイヴィス支持の動きの一つという点がまず興味深いのです。(Angela Davisは1944年生の米国の活動家・学者。70年には不当な逮捕・起訴を受けたが、これに対して全米でデイヴィス釈放要求・運動も起こった。当ブログでだいぶ前にとり上げたBayeté (Todd Cochran)『WORLDS AROUND THE SUN』にも、「Free Angela」っていう曲があったなあ。)
もう一つは、この曲「Ostinato」のみギターでRonnie Montroseがクレジットされていること。ロック的なプレイではなく、反復グルーヴの土台に加わっているのみなので目立つところはありませんが、MontroseはおろかEdgar WinterやVan Morrisonとプレイするよりも前にHerbie Hancockの配下(?)だったことがあるなんて、それだけでこっちはゾクゾク来ます。Miles Davisの電気バンドにおけるJohn McLaughlinの立ち位置……というほどの裁量と待遇は与えられてないようですが(なにしろアッチの『BITCHES BREW』には「John McLaughlin」なんていう曲まであるからね)、ロニーがかなり早くからジャズ人脈と関わっていたという事実にはやっぱりグッとくる。70年代末ごろにTony Williamsと一緒になるのも必然というところでしょうか。
このブログではやたらロニー・モントローズやリック・デリンジャーの仕事を紹介してる気がしますけど、それはひとえに世間の彼らに対する過小評価に納得がいかないから。確かに彼らはわがMark Reale(Riot)に最も影響を与えたアメリカン・ロックの偉大な先達ですけど、単なるロック野郎じゃなくて、総合的な米国音楽家としても見直されるべきだと思うんですよね。
※↓最後はボーナストラックで、RiotがMontrose「I Got The Fire」をカヴァーしてる(地下室のリハーサル)音源。