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このドラミングがすごい“mini”(9)

(9)Uwe Heepn

【曲】Helicon「Helicon Part.2」(『HELICON』1993)

 誰もドラマーと思っていなさそうなので、私がひっそりと。ジャーマン・メタルのあだ花的な扱いをされた悲運のバンドHeliconのリーダーUwe Heepenは、ソングライター&ヴォーカリストというだけではないのである。……実はドラマーだったのです。ファーストアルバムでは全曲彼がプレイしているというクレジットがある。

 

 ヴォーカリストとしては、確かに当代の一流人士には敵わぬ。バンドもライヴでは実力が発揮できなかったようだ。いろいろな要素が重なって、なんだか半笑いでこのバンドのことが語られるように見受けられるが、このバンドのおもしろさはHelloweenBlind Guardianのような劇的メタルとは少しベクトルの異なる、アメリカンな(爽な?)テイストの振りかかり具合にあるのです。(セカンドアルバムではその具合がさらに甚だしくなる。)

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そうすると、どうなるか?ちょっと展開が強引になったり(木に竹を継いだ、とまでは言いませんが)するわけね。そこを面白いと思うか、舐めてると思うかなんでしょうが……私は好きなのよ。で、その強引さを支えてるのは、作者ウヴェ・ヒーペン自身によるドラミング。(音質的に打ち込み疑惑が無くもないのですが……少なくともUwe兄貴のアイディアによるパターンであることは間違いない。)

 

 ファーストアルバムの2曲目、いわゆる本編の幕開けとなるこの「Helicon Part.2」はまさに聴き手を篩に掛けるような一曲。Rainbowの「Stargezer」のような(って言ったらちゃんとした人に怒られそうだ)“ピックスクラッチの中のロング・ドラム・ソロ”から始まるのですが、これが些か(中途半端に)長い。そこから“♪G-g-g-g-go-go-go-go-go~”のウヴェ・シャウトが切り込んできてギョッとさせられ、メインのギター・リフがいっぽうで妙に開放的で、「?」。

 

 ところが、各所に割り入るギターのオブリガードはなかなか鋭利でメロディアスだったりもする。中間部分では、HelloweenHalloween」の一部分みたいにテンポとムードを「夜」っぽくするかと思うと、重厚なメタルリフで押す中に速弾きギターソロを突っ込んだりとやりたい放題。“♪Crying in the night!”曲の最後にトコロテン(ドラムの・フィルね)で“ドゥルルル”って終わるのもダサかっこ良……ダサい。

 

 これだけヘンなところがある――断っておきますが、演奏技術や歌がそこまでヒドイわけではない――曲って、なかなか探しても聴けないと思うのね。だから、HeliconというかUwe HeepenのことをHelloweenの亜流とか出来損ないとかいう意見には、つよく反対申し上げたいわけ。Uwe Heepenはもっと……‟根本的なところでユニーク”だったのよ。もし彼のヴィジョンを一緒に練り上げる仲間(プロデューサーやエンジニアも含め)がいたら、ジャーマン・メタルの幅を広げる存在になり得たのかもしれないとさえ思うのですが……

 

 世の中厳しいもので、結局ヘリコンは成功を収められず終わってしまいました。ウヴェは一線から退き……スタジオ経営とかをやっていたようなのですが、2001年と2005年にはソロアルバムを作ったという記録があります。無茶苦茶レアなようで、探しても探しても手に入らないんですが。いつかまた気が変わって、有望な若手とHelicon再編!とかしてくれないかなと願っておったのですが……

 

 2013年、Uwe Heepn氏は亡くなってしまったのでありました。Youtubeに「Helicon/Black and White」の演奏映像がありましたが、そこのコメント欄にも、少数ながら彼を悼む声が上がっていましたね。せめて吾らは彼の遺産を「音を聴くことによって」顕彰していくとしましょうよ、ね……