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Paul Gilbert「Karn Evil 9」(『BEEHIVE LIVE』1999)
Mr. Big、Racer X、ソロ……説明不要のスーパー・ギタリスト、ポール先生。“先生”なんて本人が呼ばれたいかどうかわかんないけど、私くらいの世代のモンにとっては、「楽器屋に行くと、ポール・ギルバートの教則ビデオ――DVDじゃないのよ!ビデオだ!――がずっと流れてたものなのですよ。私はMr.Bigのドリル・ソング(「Daddy, Brother, Lover, Little Boy」)で初めて彼のことを知ったので、さぞトリッキーな話をしてるんだろうと思うと、クール・端正に基本から解説してたので印象に残ったなあ。
さて、私は90年代末から2000年代前半までヒドいメタル野郎だったので、「ポールはRacer Xに限る!」みたいな偏見を抱いていたのですが、あるとき「でも、ソロも聴いてみようか……」とベスト盤『PAUL THE YOUNG DUDE:The Best of Paul Gilbert』に手を出したのでした。
比較的ポップな、あるいはストレートなロックがまとめられていて、「(意外と)これもいいなあ」などと思って聴き進めたのですが、終盤に入っていたこの「Karn Evil 9」にはギョッとさせられました。いや、私はプログレ好きでしたから、曲はウェルカムでしたが、キース・エマーソンの鍵盤をどう表現するんだろうと思ったら……丹念に拾ってギターで表しているではないですか。それにこれはライヴでしょ?『BEEHIVE LIVE』に入ってたっていうんだから……
さらにさらに。このカール・パーマー風のナイス・ドラミングはJeff Martinじゃないですか。Racer Xのヴォーカリストという印象が強かったけど、テクニカルなドラムも美味しいじゃないですか。ドラマーとしての彼は過小評価されてるかも。(Scott TravisとかAynsley Dunbarとかといったドラム・モンスターの間にいるせいかもな。)君たち、Racer X時代からこういう“プログレ”やってましたね?
Emerson, Lake & Palmer(「Karn Evil 9」のオリジナルを演奏したグループね)は、かの偉大なる大魔王陛下(ダミアン浜田陛下)がお好きだった(お好きな?)バンドでもありますから、メタル好きはぜっったいチェックしとかなきゃダメ、ですな。