DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳159

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Richard Berry「Louie Louie」(Various Artists『ABC OF THE BLUES』Disc2、2010)

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 キンクス「You Really Got Me」の元ネタ説が浮かんでは消えた、ガレージロックの王者The Kingsmenのヴァージョンが有名な「Louie Louie」。R&BシンガーRichard Berryが1950年代に作った曲であります。

 

 オリジナル(1957年)に敬意を払って聴きましょう、まずは。

 あのリフは同じですが、後発のヴァージョンがリズムギターパワーコード)で奏でるパートが人間の声“♪ラ・ダ・ダ、ダ・ダ……”になっていたのに吃驚。リチャードさんのリード・ヴォーカルもなかなか艶がある。元来はリフ・ロックじゃなくて、ヴォーカル・コーラスソングなんだね。

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私はこのコンピレーションで聴きました


 1963年にキングズメンがヒットを出してから、いろんな人がやるようになったようでして、私の手元だけでも、The KinksJohnny WinterIggy PopMotörheadJoan Jett & The BlackheartsRobert Plantのがありまする。皆さまもお気に入りのヴァージョンを見つけてくださいな。

中国メタル名曲紹介(18)Tumourboy

 今回でひとまず本特集はひと区切り、かな。第十八弾、Tumourboy(腫瘤男孩楽隊)

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 これも北京の友人が贈ってくれたもの。私は予備知識なしで聴いたのですが、なかなか激烈なスラッシュ・メタル。ジャケットからはもっとモダンなハードコア趣味を想像してたのですが、いい意味で裏切られた。私はオールドスクール好みなものでね。

 

  1. Tumourboy「Fatal Extermination」(2ndEP『FATAL EXTERMINATION』2017)
  2. Tumourboy「Executed」(2ndEP『FATAL EXTERMINATION』2017)
  3. Tumourboy「Noise, Beer, Love [Southern Thrash Live Version]」(2ndEP『FATAL EXTERMINATION』2017)

<メンバー>

曲佳樹(Vo, Gt)

楊富文(Gt)

張百興(Ba)

張亦弛(Dr)

 

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 1「Fatal Extermination」は、甲高いヴォーカルの乗っかる突撃スラッシュ。私の好きなExplosicumの初期の感じと似てるかな。やはり、中国スラッシュ勢への帝王スレイヤーの影響は大きいね。ギターソロが意外にメロディアスで泣き重視なのは個性的でおもしろい。Goodよ。もちろん終盤は大疾走するんだがね。

 

 短いドラムソロからスタートする2「Executed」は、BPMの少し下がった(といったってスローでは全くない)8ビートの疾走曲。ギターソロ後のリフの畳み掛けが美味しいね。バスドラ踏み踏みのドラムも頑張ってる。“♪Ha, ha!”

 

 このEPはスタジオ録音上記の2曲のほかに、ライヴ音源が3つ入ってます。どれも元気いっぱいで良いのですけど、「Noise, Beer, Love」(3)の暴走感をとりましょうかね。2010年代は、ステージの演奏力も確かなバンドたちが増えた印象がありますね。この人らもイイ感じ。個人的にはやはりドラムの安定が嬉しい。ビートの切り替え(短くブラストも挟む)もなかなか巧みですしね。

 

 現在はドラマーが別の方にチェンジしたそうですが、さてどうなんでしょう。やはり楽しみなバンドではありますからね。

<本特集完>

どんぱす今日の御膳158

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Xyster「Ardiendo De Pasión」(『LO MAS POTENTE DEL METAL VOL.4』1996)

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 メキシコのメタル・コンピがなぜか手元にあったので。(Vol.4だけ。)わたしスペイン語わからないのですが、コンピのタイトルは『最強のメタル』、曲名は英語風にすると「Burning with Passion」ですかね(翻訳ソフト頼み)。

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 音質、演奏とも、A級とは(遺憾ながら)いえない代物ながら、ローカル言語で歌われるメタルには捨てがたき魅力がありまする。たとえばこのXyster「Ardiendo De Pasión」。

 Queenの――そしてのちにMetallciaがカヴァーした――「Stone Cold Crazy」のメインリフみたいなのを使って突進するパワーメタル。若干弾ききれてないギターソロ、少し苦しそうなハイトーン……だが、それが良い。ヘヴィ・メタルっていうのはこれを許容する精神である。

 

 この音源は、もともとは1987年頃のものだそうです。Xyster1984年から90年まで活動して一旦停止。2015年にまさかの復活を遂げ、同年にファースト・フルアルバムを出したとな。再結成時の面子が、ベース氏を除いて本活動時のメンバーであるというのもポイント高し。

どんぱす今日の御膳157

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中能島欣一「六段」(Various Artists『六段/決定版 筝の名曲』2005)

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 邦楽(伝統音楽の方面の、語義通りの“邦楽”)も私はどしろうとですが、なぜかこの「六段」は好き。箏の曲というとこれが浮かぶのは、なぜだろう。幼少の折うちにこれの入ったカセットテープがあって(アルバム名は忘れた)、時々聴いてたせいかもしれない。このCDは、実家の正月でお節を食す際にBGMでかけたりしてた……

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 美旋律の繰り出される箏の独奏。中能島欣一さんについては今回の「御膳」用に調べるまで存じ上げなかったのですが、山田流箏曲中能島家の4代目で、“人間国宝”にもなられたとのこと。この「六段」は、いつ頃の録音かクレジットがなく不明ですが、八橋検校(1614-85)が作曲した古典中の古典。

中国メタル名曲紹介(17)Never Before

 近年聴いた中で「こりゃあすげえ、大当たり!」と思ったのが次のNever Before。北京の友人が贈ってくれたもので、“Deep Purpleが好きなのかな?”くらいに思って再生したら、極上のドゥーム/ストーナーが出てきてビックリ。

 あ、今回は第十七弾になりますか。

 

 「Never Before」と聴いたら、古典ロック好きはまずディープ・パープル『MACHINE HEAD』4曲目を思い浮かべるのが約束ですが……この人たちは、ハードロックでももうちょっとサイケ寄りの趣味らしい。意外なことに(?)、この手のバンドとしては、サバス色もあんまり強くないのね。

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1.Never Before「Born To Lose」(1stアルバム『KING OF WORMS』2015)

2.Never Before「Wild Dog」(1stアルバム『KING OF WORMS』2015)

3.Never Before「The Man Who Came From Mushroomland」(1stアルバム『KING OF WORMS』2015)

<メンバー>

閔焔(Vo)

Sho Tabata[田端翔](Gt)

Nicola Mazzei(Ba)

Linda Westman(Dr)

 

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 まさに国際的なバンド。ヴォーカルは中国、ギターは日本、ベースはイタリア、ドラムはスウェーデンの出身なんですって。それぞれ、このバンドより前にキャリアがある風じゃないんですが、腕利きが揃っておる。Tabata氏のリフワークはマジカルだし、Linda Westmanさんのグルーヴィなドラミングは心地好いのだ。

 

 1「Born To Lose」はねえ、まずEmerson Lake & Palmerの「Knife Edge」を陰鬱にしたようなベースリフでうねうね始まるのね。ドゥーミーな(スロウ&グルーヴィ)テンポをたたき出すWestmanがやはりすごいと思う。閔焔氏の声質がやや明るく(というか、張りがあって)熱い感じなのも微妙なミスマッチとなって良い、好い。5分50秒辺りのリフレインを合図に疾走パートに突入。ひとしきり盛り上げると、ラストスパートは、気怠いグルーヴの反復へ。なかなかにカラフルな9分14秒。そうそう、録音もよいなあ(録音・ミキシングはFu Boなる人物)。

 

 どの曲もなかなか良いので3曲だけ選ぶのも野暮なんですが、「Wild Dog」(2)はYoutubeにスタジオでの演奏場面(+短いインタビュー)が上がってるのでお薦めしときます。楽曲は、このジャンルなら必須のヘヴィ・シャッフル、彼らにしてはシンプルな楽曲。細腕ながらタフなビートを叩き出すLinda Westmanがカッコいい。Nicola Mazzeiさんの這いずりベースとの相性もばっちりだ。映像では閔さんが曲の含意も語ってたりするので、ぜひご覧あれ。“♪Destiny brought us here, ready to fight, ready to die……”あ、このバンドは全編英詩です。

 

 もう一つ「The Man Who Came From Mushroomland」(3)を挙げときましょう。“ストーナー”だっていうんですからね。怪しげなドンコドンコ・リフレインは、サイケデリックというか、一部のクラウトロック風でもあるなと。私は曲が始まったとたん、Amon Guru「Culture In A Small Room」を思い出してしまいましたが。〔どんぱす今日の御膳010

 で、繰り返しますが、こういうのってダウナーに歌われると「ハイハイ(よくあるアレね)」ってなもんなんですが、閔焔さん歌唱の熱さがうまいこと違和感を生んでくれていまして、個人的には楽しい。

 

 いやほんと、2010年以降中国メタル(と呼んでよければ)の最高傑作の一つじゃないですか?すくなくとも私のような古いハードロック好きの野郎にとっては。Linda Westmanなる名手にも出くわしたし……と思っていたら、メンバーチェンジがすでに起こったようでして、ニコラとリンダはバンドを離れちゃったようです。閔さんとTabataさんが頑張っているようですから、今後にもおおいに期待させていただきます。

<続く>