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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

中国メタル名曲紹介(17)Never Before

 近年聴いた中で「こりゃあすげえ、大当たり!」と思ったのが次のNever Before。北京の友人が贈ってくれたもので、“Deep Purpleが好きなのかな?”くらいに思って再生したら、極上のドゥーム/ストーナーが出てきてビックリ。

 あ、今回は第十七弾になりますか。

 

 「Never Before」と聴いたら、古典ロック好きはまずディープ・パープル『MACHINE HEAD』4曲目を思い浮かべるのが約束ですが……この人たちは、ハードロックでももうちょっとサイケ寄りの趣味らしい。意外なことに(?)、この手のバンドとしては、サバス色もあんまり強くないのね。

youtu.be

1.Never Before「Born To Lose」(1stアルバム『KING OF WORMS』2015)

2.Never Before「Wild Dog」(1stアルバム『KING OF WORMS』2015)

3.Never Before「The Man Who Came From Mushroomland」(1stアルバム『KING OF WORMS』2015)

<メンバー>

閔焔(Vo)

Sho Tabata[田端翔](Gt)

Nicola Mazzei(Ba)

Linda Westman(Dr)

 

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 まさに国際的なバンド。ヴォーカルは中国、ギターは日本、ベースはイタリア、ドラムはスウェーデンの出身なんですって。それぞれ、このバンドより前にキャリアがある風じゃないんですが、腕利きが揃っておる。Tabata氏のリフワークはマジカルだし、Linda Westmanさんのグルーヴィなドラミングは心地好いのだ。

 

 1「Born To Lose」はねえ、まずEmerson Lake & Palmerの「Knife Edge」を陰鬱にしたようなベースリフでうねうね始まるのね。ドゥーミーな(スロウ&グルーヴィ)テンポをたたき出すWestmanがやはりすごいと思う。閔焔氏の声質がやや明るく(というか、張りがあって)熱い感じなのも微妙なミスマッチとなって良い、好い。5分50秒辺りのリフレインを合図に疾走パートに突入。ひとしきり盛り上げると、ラストスパートは、気怠いグルーヴの反復へ。なかなかにカラフルな9分14秒。そうそう、録音もよいなあ(録音・ミキシングはFu Boなる人物)。

 

 どの曲もなかなか良いので3曲だけ選ぶのも野暮なんですが、「Wild Dog」(2)はYoutubeにスタジオでの演奏場面(+短いインタビュー)が上がってるのでお薦めしときます。楽曲は、このジャンルなら必須のヘヴィ・シャッフル、彼らにしてはシンプルな楽曲。細腕ながらタフなビートを叩き出すLinda Westmanがカッコいい。Nicola Mazzeiさんの這いずりベースとの相性もばっちりだ。映像では閔さんが曲の含意も語ってたりするので、ぜひご覧あれ。“♪Destiny brought us here, ready to fight, ready to die……”あ、このバンドは全編英詩です。

 

 もう一つ「The Man Who Came From Mushroomland」(3)を挙げときましょう。“ストーナー”だっていうんですからね。怪しげなドンコドンコ・リフレインは、サイケデリックというか、一部のクラウトロック風でもあるなと。私は曲が始まったとたん、Amon Guru「Culture In A Small Room」を思い出してしまいましたが。〔どんぱす今日の御膳010

 で、繰り返しますが、こういうのってダウナーに歌われると「ハイハイ(よくあるアレね)」ってなもんなんですが、閔焔さん歌唱の熱さがうまいこと違和感を生んでくれていまして、個人的には楽しい。

 

 いやほんと、2010年以降中国メタル(と呼んでよければ)の最高傑作の一つじゃないですか?すくなくとも私のような古いハードロック好きの野郎にとっては。Linda Westmanなる名手にも出くわしたし……と思っていたら、メンバーチェンジがすでに起こったようでして、ニコラとリンダはバンドを離れちゃったようです。閔さんとTabataさんが頑張っているようですから、今後にもおおいに期待させていただきます。

<続く>