DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳035

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Bruce Hornsby「Jacob’s Ladder [Live]」(『GREATEST RADIO HITS』2003)

 ブルースがHuey Lewis & The Newsに提供して彼らがチャートNo.1を獲得することになった曲。ヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースのヴァージョンはゴージャスでビッグなロックでしたが、セルフ・カヴァーとなるBruce Hornsby版(2002年の演奏)はカントリータッチの軽快なアレンジ。“♪Step by step, one by one…….”。ライヴではベースやキーボードのソロもたっぷりフィーチュア。

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 昔職場で同僚だった人が、AORなどに詳しい音楽ファンだったんですが、「ブルース・ホーンズビーはライヴで観た」「ビリー・ジョエルいじょうにピアノの腕前が凄かった」と仰ってたなあ。プレイヤーとしても名手のようですねえ。

 

※☟こちらはヴァージョン違い

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時代の産物を追う?〔続〕(24)

<2019年作品>

 

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(3)Nick Beggs『WORDS FAIL ME』(UK)

 プログレ界隈で引っ張りだこのベーシスト/スティック奏者Nick Beggsさんのソロアルバム新作。ニックさんというと私にとってはLifesigns(キーボーディストJohn Youngさんのバンド)のデビュー作で弾いてた人。あと、Steven Wilson『THE RAVEN THAT REFUSED TO SING』への参加とかね。但し本作は、エレクトロニックとかアンビエントとかにカテゴライズされるような、Nick Beggs(Chapmanstick)の独奏もの。

 

 スティック(チャップマンスティック)っていう楽器とは……?

「スティックは、1970年代初頭に、アメリカのエメット・チャップマンによって発明された電気楽器である。彼は1969年に生み出した、両手をフレットに対して並行にして弾く、“フリー・ハンズ”タッピング奏法のための新しい弦楽器を設計した。スティックの最初のモデルは1974年に出荷された。」〔WIKIPEDIA

だそうです。私の知る範囲だと、King Crimsonに居る(あるいは居た)Tony LevinやTrey Gunnがスティック遣いですね。あと、せんだって亡くなったSean Reinert(Dr)とCynicGordian Knotで同僚だったSean Maloneだとか、Dream TheaterのJohn Myungだとかね。別にベーシストが弾かなきゃいけない決まりはありませんが、大抵はベーシストのアナザー・ウェポンですね。

 

 Nick Beggsさんて人の名前を私が始めて意識したのは上述のLifesigns『LIFESIGNS』(2013)。バンドメンバーの一人という扱いでしたので(現在は脱退、後任はJon Poole)、アルバムへの貢献を感じました。

 

 それから同年のSteven Wilson『THE RAVEN THAT REFUSED TO SING (AND OTHER STORIES)』(2013)にも参加されてましたね。同作については、伊藤政則さんのPower Rock Today(ラジオ番組)を偶々聴いてたら「The Watchmaker」というのが掛けられまして、「おお、この古くて新しい叙情プログレは何?」となりました。アルバムを探して再生してみたら、一曲目「Luminol」がベースがバッキバキの超絶テクニカルナンバーでびっくり。ドラムがMarco Minnemann、ギターにGuthrie Govanとか、テクニカル展覧会をやったら金賞をとるような連中が勢ぞろいしてました。

 

 で、そのイメージが強くあったので、ニックのソロ作もバリバリのプレイが聴けるのではと思って入手したら……まったく異なる作風でした。スティック一本(乃至多重録音)なので、ゴリバリのプログレではなくて、アコースティック・ギターのインストものを聴いてるような雰囲気。

 Nick Beggs『WORDS FAIL ME』(UK)

  1. Blue Eyes
  2. Portrait Of Tracy
  3. Midnight Cowboy
  4. Katerina
  5. Night Porter
  6. Tarantella
  7. Sheep May Safely Graze
  8. The Rainbow Connection

 

 クラシカルな雰囲気ありの「Portrait OF Tracy」など美しい曲がいろいろですが、面白かったのはリズム的に他と異色な「Tarantella」。あとは、繊細な音で組み上げられた「The Rainbow Connection」がいいなと思いました。

<続く>

どんぱす今日の御膳034

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EnoBrian Eno)「Third Uncle」(『TAKING TIGER MOUNTAIN(BY STRATEGY)』1974)

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 以前ブログ本編(第36回「You Really Got Me大特集」(7))で801というグループのライヴ盤(『LIVE』、1976年)を紹介しましたが、そこに入ってる疾走曲(10曲目)のオリジナル。こちらもギターはPhil Manzanera。パーカッションがポコポコ入ってるけど、クレジットによるとRobert Wyatt(元Soft Machine, Matching Mole)なんですか。イーノさんの平板なヴォーカルもあって呪術的なテイスト有り。

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 アルバムタイトルの「Taking Tiger Mountain by Strategy」(虎の山を策略で取る)というのは何かというと、中国の京劇(現代革命京劇)の演目『智取虎威山』の英訳(と同じ)なんだそうで。ジャッキー・チェン成龍)の映画プロジェクトAがコレのプロットを参考にしているというのは有名な話。ブライアン・イーノさんのこのアルバムには「Taking Tiger Mountain」っていう曲も入ってます(べつにロック京劇ではないですが)。

第56回「XTX & Cold Blooded Animal」(2)

 で、バンド名を改めたのちの作品となる、事実上のセカンドアルバムがこちら。

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XTX & Cold Blooded Animal謝天笑与冷血動物『X.T.X』(2005)

  1. Cold Blooded Animal(冷血動物)
  2. Ashima(阿詩瑪)
  3. Sunflower(向陽花)
  4. Rendezvous(約定的地方)
  5. Drawing Near(再次来臨)
  6. Whereabouts Unknown(下落不明)
  7. Song of the String(琴弦之歌)
  8. Who was it who brought me here?(是誰把我帯到了這里)
  9. Picking Teeth(剔剔牙)

<メンバー>

 XTX=謝天笑(Gt, Vo)

 Guo Jian=国囝(Ba)

 Zhao Wei=趙煒(Dr)

                                         

 ブックレットをみるとThanksリストに「唐朝楽隊」「痩人楽隊」「唐朝老五(ギタリスト劉義軍のこと)」などとあるのが、中国ロック好きとしては妙に嬉しい。

 

 さて肝心の音楽ですが、最初に収められている「冷血動物」を聴くと進化がわかります。シンプルな3ピースを基本としていることは相変わらずで、交替したメンバーの力量も十分なのですが、もはやグランジの枠にはとらわれていない。といって急にポップになったわけじゃなくて、ハードロックや民族音楽の要素をより多めに導入することでオリジナリティを高めているように思えました。「冷血動物」ではわかりやすく古箏(「こと」の一種)が取り入れられていますね。次の「阿詩瑪」とは、雲南のある少数民族(彝族・撒尼人)の叙事詩の題目であり登場人物とのことで、こういった題材のとり方も従来なかったものでしょう。オト的にはパンク・グランジ色が強いですけど。

 

 よりオーソドックスな8ビートに寄った「向陽花」は、ストラクチャーやメロディセンスについていうと所謂(当時或いは少し前の)J-Popに雰囲気が近いかもしれぬ。一般的音楽ファンにも聴き易いのでは。歌詞はやっぱり少し暗いけど。そしてその次の「約定的地方」は本作中最短のコンパクトな歌モノ(3分17秒)。この辺りを聴いてると、崔健(‟中国ロックの父”)の影響は広大だなあと思いますね。謝天笑がどれだけ意識してたかはともかく……

 

 またも古箏がフィーチュアされた「再次来臨」、こちらはアコースティック掻き鳴らしのゆったりロック。謝氏のヴォーカルは前作以上にクリアに朗々と響くので、メッセージにしても情緒にしてもストレートに聴き手に刺さります。なお古箏のプレイヤーは、クレジットによると謝氏自身および張嶷氏とのこと。うってかわって耳障りなギターリフとドンドコドラムに始まる「下落不明」は久々のNirvanishなヘヴィ・パンク。“♪無数個人在瘋狂的尋找,従出生一直到年老……”云々と毒々しく。

 

 「琴弦之歌」はまたもアコギ主体の物悲しい8ビート。楽曲後半にパーカッションがふんだんに入るが、これは(クレジットによるなら「小打撃=Percussion」)前任ドラマー武鋭氏によるプレイかと。「是誰把我帯到了這里」はヘヴィなロックナンバーですが、グランジというよりは米国オルタナっぽいリフレインを踏まえて(といっても私はAudioslaveくらいしか具体的には浮かなばいのであるが)、そこにお得意の歌いまわしを乗せた意欲作。

 

 最後の「剔剔牙」はおどろおどろしい始まり方のうえに“敢えて”の平板な歌、箏の音も不気味に入り、陰鬱この上ない流れになっていく……と、ある点でのシャウト(叫び、ですな)から“気持ちの悪い”――Black Sabbathお得意のコード進行ってイミで――疾走パートに突入。何じゃこれ?と思わせたまま一挙にグジャっと終焉になだれ込む。意地でも「爽やかな聴後感は与えないぜ」っていう作りにこだわりを感じますな……終わってみればやっぱりダークなロック作じゃったとな。

 

 本作『X.T.X』は10万枚を売ったとのことなんですが――地下循環を考慮すれば実際はもっと多く出まわたことでしょう――、こういうのがそれなりにヒットしたというのが凄いですね。

 

 2009年頃私が中国(北京)にしばらく行っておりました際には、だいたい同世代か少し若いくらいの中国人青年に「ところで、どういう音楽を聴きます?」って訊いて回ったんですけど、「ロック!」という回答はほとんど得られなかったんだけどなあ。しょうがないので、自分からヘヴィメタル専門店を探して訪問し、ご店主に仲良くなってもらったの。こりゃまた別の話ですな……。

<完>

どんぱす今日の御膳033

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Bodyjar「Next To You」(『RIMSHOT !』1996)

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 オーストラリア出身のパンク・バンド、ボディジャー(Bodyjarのセカンドアルバム『RIMSHOT !』は、メタル好きの私が聴いても満足できる勢いに満ち溢れております。The Police「Next To You」の爆走的カヴァーもいい感じだし、ほかに「5000G」なんていうメタリック・ソングも◎。ダブル・ヴォーカルのスタイルもいいと思います。

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 このバンドのことを教えてくれたのは、高校一年の時のクラスメイト。本作と、デビュー作『TAKE A LOOK INSIDE』を貸してくれました。(そっちでは、ボートラの「Deceive」が一番好きだった私……)

 そうそう、The Offspringの初期作品やGreed Dayなんかも一緒だったっけ。私にとって彼は「パンクの先生」だったなあ……懐かしいねえ。