で、バンド名を改めたのちの作品となる、事実上のセカンドアルバムがこちら。
XTX & Cold Blooded Animal(謝天笑与冷血動物)『X.T.X』(2005)
- Cold Blooded Animal(冷血動物)
- Ashima(阿詩瑪)
- Sunflower(向陽花)
- Rendezvous(約定的地方)
- Drawing Near(再次来臨)
- Whereabouts Unknown(下落不明)
- Song of the String(琴弦之歌)
- Who was it who brought me here?(是誰把我帯到了這里)
- Picking Teeth(剔剔牙)
<メンバー>
XTX=謝天笑(Gt, Vo)
Guo Jian=国囝(Ba)
Zhao Wei=趙煒(Dr)
ブックレットをみるとThanksリストに「唐朝楽隊」「痩人楽隊」「唐朝老五(ギタリスト劉義軍のこと)」などとあるのが、中国ロック好きとしては妙に嬉しい。
さて肝心の音楽ですが、最初に収められている「冷血動物」を聴くと進化がわかります。シンプルな3ピースを基本としていることは相変わらずで、交替したメンバーの力量も十分なのですが、もはやグランジの枠にはとらわれていない。といって急にポップになったわけじゃなくて、ハードロックや民族音楽の要素をより多めに導入することでオリジナリティを高めているように思えました。「冷血動物」ではわかりやすく古箏(「こと」の一種)が取り入れられていますね。次の「阿詩瑪」とは、雲南のある少数民族(彝族・撒尼人)の叙事詩の題目であり登場人物とのことで、こういった題材のとり方も従来なかったものでしょう。オト的にはパンク・グランジ色が強いですけど。
よりオーソドックスな8ビートに寄った「向陽花」は、ストラクチャーやメロディセンスについていうと所謂(当時或いは少し前の)J-Popに雰囲気が近いかもしれぬ。一般的音楽ファンにも聴き易いのでは。歌詞はやっぱり少し暗いけど。そしてその次の「約定的地方」は本作中最短のコンパクトな歌モノ(3分17秒)。この辺りを聴いてると、崔健(‟中国ロックの父”)の影響は広大だなあと思いますね。謝天笑がどれだけ意識してたかはともかく……
またも古箏がフィーチュアされた「再次来臨」、こちらはアコースティック掻き鳴らしのゆったりロック。謝氏のヴォーカルは前作以上にクリアに朗々と響くので、メッセージにしても情緒にしてもストレートに聴き手に刺さります。なお古箏のプレイヤーは、クレジットによると謝氏自身および張嶷氏とのこと。うってかわって耳障りなギターリフとドンドコドラムに始まる「下落不明」は久々のNirvanishなヘヴィ・パンク。“♪無数個人在瘋狂的尋找,従出生一直到年老……”云々と毒々しく。
「琴弦之歌」はまたもアコギ主体の物悲しい8ビート。楽曲後半にパーカッションがふんだんに入るが、これは(クレジットによるなら「小打撃=Percussion」)前任ドラマー武鋭氏によるプレイかと。「是誰把我帯到了這里」はヘヴィなロックナンバーですが、グランジというよりは米国オルタナっぽいリフレインを踏まえて(といっても私はAudioslaveくらいしか具体的には浮かなばいのであるが)、そこにお得意の歌いまわしを乗せた意欲作。
最後の「剔剔牙」はおどろおどろしい始まり方のうえに“敢えて”の平板な歌、箏の音も不気味に入り、陰鬱この上ない流れになっていく……と、ある点でのシャウト(叫び、ですな)から“気持ちの悪い”――Black Sabbathお得意のコード進行ってイミで――疾走パートに突入。何じゃこれ?と思わせたまま一挙にグジャっと終焉になだれ込む。意地でも「爽やかな聴後感は与えないぜ」っていう作りにこだわりを感じますな……終わってみればやっぱりダークなロック作じゃったとな。
本作『X.T.X』は10万枚を売ったとのことなんですが――地下循環を考慮すれば実際はもっと多く出まわたことでしょう――、こういうのがそれなりにヒットしたというのが凄いですね。
2009年頃私が中国(北京)にしばらく行っておりました際には、だいたい同世代か少し若いくらいの中国人青年に「ところで、どういう音楽を聴きます?」って訊いて回ったんですけど、「ロック!」という回答はほとんど得られなかったんだけどなあ。しょうがないので、自分からヘヴィメタル専門店を探して訪問し、ご店主に仲良くなってもらったの。こりゃまた別の話ですな……。
<完>