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どんぱす今日の御膳393 The Damned

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The Damned「I’m Not Like Everybody Else」『NOT LIKE EVERYBODY ELSE』(2026)

 たまにはちゃんと新譜を紹介するぜ!

 ……といいながら「カヴァーアルバム」というのは反則気味ですが、ダムドのれっきとした新作であります。リリース前から情報はぽつぽつ出されていたのですが、少し前に亡くなったバンドの創設メンバーBrian Jamesへのトリビュートとしてのカヴァーアルバムなんですね。CDのケース内側にバンドからのメッセージが載っているのですが、「収録曲はブライアンに影響を与え、翻って僕らをもインスパイアした曲」で、「願わくば次の世代にも受け継がれていってほしい」というようなことが記されています。「ブライアンは先見の明があり、唯一無二のソングライターであり、革新的なギタリストであり、そしてツルんでてスゴく楽しい奴だった」というコメントも。

Not Like Everybody Else, プライマリ, 1/14

 レコーディングメンバーはDave Vanian(Vo)+Captain Sensible(Gt, Vo)+Rat Scabies(Dr)というオリジナル組に、今やバンドに欠かせないPaul Gray(Ba)& Monty Oxymoron(Key)という布陣。ちょっとサイケデリック風味なアルバムジャケットからうかがえる通り、60年代後半あたりのサイケ・ガレージ・ブルーズロックのナンバーが中心のようですね。いろいろ興味深い曲が並びますが、ラストがThe Last Time(The Rolling Stones)というのはグッときます。89年のライヴアルバムThe Damned『FINAL DAMNATION』(当時のメンバーによるステージと創設メンバーによるステージの二部構成からなるライヴ盤でした)の締めもこれでしたけど、「ブライアンの(またバンドの)お気に入り中のお気に入りだったんでしょうねえ。クレジットによるとこのトラックのみ“ブライアンが参加している”とのこと。(エンディングでバンドメンバーが名乗っている中に、ブライアンが入っていますね。)泣かせます……

youtu.be

 今回の注目曲は、アルバムのタイトルの元にもなったI’m Not Like Everybody Else(The Kinks)です。まあ、私がキンクス・フリークだからってのもあるんですが、“アルバムタイトル曲なのに、事前情報が全然なかった”んですよう。See Emily Playとかは試聴できたのにね。ネット上に出ないんだから、買って確かめるしかないじゃないですか。レビュアーとかレコード会社も「キンクス」にちゃんと触れないし(ぷんすか)。

 というわけで、嬉々としてCD買ってきて、いきなり6曲目を再生する邪道な私。アコースティック・ギターをフィーチャーしながら、鍵盤(モンティの仕事はホントいい!)のレイヤーのうえでデイヴ・ヴァニアンが「俺はほかの誰とも違うぜえ」と歌うという、素敵なカヴァー。というかこの曲、「これはほかの誰とも違うんだ。他のやつみたいにあくせく走りは回りたくないし、他のやつらみたいに生きたくなんかないし、他のやつらみたいに『ああ、良い気分ですね』なんて言わねえよ……」って、パンクスピリット全開過ぎるだろ!これが1966年のシングルですよ?キンクスどんだけ尖がってんの!(←贔屓の引き倒し)

 リアルパンク(っぽいワイルドなイメージの)デイヴ・デイヴィスがリードヴォーカルで、仲の悪さで定評のある(うふ)レイ・デイヴィスがぴったりバッキングヴォーカルを添えているアレンジも最高過ぎる。どう考えても世間を平然と敵に回してるぞこの兄弟。

 

 この最高の曲(?)をわざわざカヴァーする人もいて、The Chocolate Watchband(1968)とかJimmy And The Boys(1979)がいるとウィキペディアにも出てくるんですが、個人的に「おっ!」と思ったのはChris Spedding。1980年のソロアルバムでカヴァーしてるんですが、そのアルバムのタイトルがこれまた『I'M NOT LIKE EVERYBODY ELSE』なんですよ。今回のダムドと同様……「俺は、違うんだあ!」っていうのはアーティストの心の叫びなんでしょうなあ。レイ・デイヴィスがそれをあからさまに言っちゃったんだなあ。クリスのヴァージョンは、ヴォーカルはボソボソしてるんですけど、ストリングスが絡めてあったり、ドラムが名手Dave Mattacksだったりして、それはそれで味があります。

 

 ダムドはどうかというと、先ほど言った通りで、楽曲の雰囲気はオリジナルに近いかもしれません。ブライアンはこれが好きだったのかあ、と思うとおもしろい。それから、これはこの曲だけじゃなくて他の収録曲にも言えることですが、「音」があたたかくまろやかで素晴らしいです。デジタル時代の味気ない音、の対極にあるような。いずれ彼ら自身が語ってくれるかもしれませんが、「音づくり」から“60年代ふうにしよう”と頑張ったんじゃないかなあ。(もともとダムドは活き活きとした良い音のバンドですけどね。)

 

 他の収録曲もいいです、もちろん。先行公開されたSee Emily Play(初期Pink Floyd)やSummer In The City(The Lovin’Spoonful)といったサイケポップの魅力、ダムドが敬愛するThe StoogesのGimme Danger、歌メロのよさがあらためてわかるYardbirdsのHeart Full Of Soulなど、聴く人によって楽しみいろいろだと思いますが、個人的に「へえ!」と思ったのは、When I Was Young(Eric Burdon & The Animals)。何といっても、私の大好きなRiotもカヴァーしていた(『RESTLESS BREED』に入ってます)曲ですのでね……。

youtu.be

 ダムドはもちろんオリジナル(エリック・バードン&ジ・アニマルズ版)に準拠しているんですが、イントロ部分を聴いていて初めて気付いたことがあります。この部分のギターの低音のベンド(ドゥーンと音が下がるやつ)、Black SabbathのIron Manよりも「早い」よね(1967年ですので)。ああいう小技(レコーディング時の工夫?)って色々あったんでしょうな。ダムドもそこを完コピしてるというわけで。もちろん。楽曲本編もよいです。60年代末のサイケな浮遊感が深めのリバーブと共に再現されてて。

 

 カヴァーアルバムって、微妙なこともありますけど、さすがダムド、この作品は――あっさり30分強で終わっちゃう潔さも含めて――楽しめます。そして、ブライアン・ジェイムズという偉大なパンク先駆者を偲びましょうね……