DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳379 Ozzy Osbourne

379

Ozzy Osbourne「Over the Mountain」『DIARY OF A MADMAN』(1981)

 2025年7月に、“バーミンガムで凱旋公演”から“同月内に亡くなった”Ozzy Osbourne。Back To The Beginningという大公演の印象は、多くの方が語っていますので、ネットでニュースを見た程度の私が付け足せることはあまりありませんが、オジーブラック・サバスのステージは(さまざまな意味合いにおいてですが)“素晴らしかった”ようですね。

 

(ちなみに翌月の、Black Sabbathが表紙になってるBURRN!!』誌は、買いましたよ。Back To The Beginningについて触れてるライターやアーティストはたくさんいるんですけど、そうちの少なからぬ方々が、「わざわざ観に行くほどじゃないと思ってた」みたいなことを言ってて意外でした。いや、配信があるからそれでみればもちろんよいわけですが、“なんか、たくさんアーティスト出るっていうけど、興味ない連中観てもしょうがないし”(大意)とか、正直すぎでしょ。つまりこれ、業界の手練れたちでも、「まさかあれがオジーを観られる最後の舞台になるとは、思ってもいなかった」っていうことですよね。)

youtu.be

 さて、なんで「Over the Mountain」なのかといいますと、まあ好きな曲だからなんですけど、そういえばだいぶ前に「バンドでこれやってみましょーよ」って話が出て練習しかけたこともあって個人的にちょっと思い入れが深いのね。何度も言ってますが私ドラマー(の端くれ)なので、この曲もスタジオ版のドラミングをかなり繰り返し聴いたおぼえがあります。そのときも、「メタルっていうけど、意外に軽やかでダイナミズムにも富んでるなあ」と感じてたのを思い出しましたが、最近聴き直しまして、この曲のドラムパートの「すごさ」にあらためて気づきました。ドラマーはLee Kerslakeさんなのですが……

 ご存じの通り、リー“熊さん”カースレイク(*「熊さん」は私が勝手につけた愛称)は、Uriah Heepの黄金時代を支えた名ドラマー。「重さ」「速さ」とはちょっと違うところに味があるのは、そんなキャリアも関係してるんでしょうか。この「Over the Mountain」を聴けば、リーの凄さがよっくわかります。つまりですね、ギターのリフ、ベースライン、そしてオジーの歌の“すべてと”平仄が合っていて、フィルインにも一切無駄がないのです。打楽器に使うのが適切な表現かわかりませんが、「メロディアス」なドラミングなんですよ。これは、ジョン・ボーナムにもイアン・ペイスにもビル・ウォードにもなかった個性のはずで、いまこそ再評価したいところです。

                                  Diary Of A Madman, プライマリ, 1/2

 このころのというか初期オジー・バンドのリズムセクション(ボブ・デイズリー&リー・カースレイク)とオジー&シャロンの間には“摩擦”があったのも有名な話でしょうか。作曲のクレジットをめぐってとかいろいろ報じられましたが、初期2作(『BLIZZARD OF OZZ』『DIARY OF MADMAN』)の“リズムセクションを差し替えた盤を出した”のは、オジーさん(シャロンさん?)の間違いだったと思うんですよねやっぱり。

 ネット上でも“ファンを怒らせた”とか言われてますけど、純粋に作品として別のものになっちゃうので……差し替えドラムを担当した(させられた?)Mike Bordinは、いいドラマーだと思いますけど、オリジナルの熊さん歌ごころはさすがに再現できなかった。

 

 で、ちょうどこのころリーさんとボブさん(Bob Daisley)は、主催していたバンドLiving Loudでこの曲を含む初期オジー曲を数曲セルフ・カヴァーしているんですよね。オジー側への“反撃”とすると、少し大人げない気もしなくはないですが、Jimmy Barnes(Vo)とSteve Morse(Gt)をフィーチュアしたそれらの出来が上々なもんだから困っちゃいます。

(このあたりのことは、当ブログでも前に書きました。https://yes-outsiders.hatenablog.com/entry/35926268 )

youtu.be

 

 おっと、オジーに戻りましょう。あと少しだけ。『DIARY OF A MADMAN』は2011年に30周年アニヴァーサリーエディションという2枚組CDが出てまして、私はこれを買ってるんです。1枚目はもちろん当時のバンドのスタジオ演奏。2枚目がお宝で1981年のアメリカツアーのライヴ音源。当時もうリズム隊は入れ替わっていて、ベースはRudy Sarzo、ドラムはTommy Aldridgeです。強靭な体力と圧倒的なパワー感の彼らのおかげ(彼らのせい?)で、スタジオ版にあった“70年代的HR感”は薄れ、“80年代的メタル”になってました。これはまあ好みの問題で、「メタルっぽくなった、よかった」っていう人も多いのかもしれませんね。

 ただ、コンサート音源を通して聴いていちばん思ったのは、「オジーは歌がうまい」ってこと。“何をいまさら”とか言われそうですけど、世間であまり彼のヴォーカリストとしての力量を正面から評価してこなかったんじゃないかい?と言いたくなるくらい、「独特のメロディを歌い上げてぶれない」「あんなタフステージを踏んでても衰えない」ノドは、やっぱり凄い。まさに余人をもって代えがたいわけですが、とにかく聴いてて「この人は歌うのが心底好きなんだろうなあ」っていうのが伝わってくるのがいいの。

 

 で、それに寄り添って(と敢えて言いましょう)美麗極まりないギターを弾くRandy Rhodesが素晴らしすぎる。いや実は、世間がというか評論家とかがやたらと「ランディは天才!すごい!」みたいなことばっっかり(説明を省いて)するもんだから、「ふうん?」と斜に構えていたところがコチラにはあるんですが、虚心に聴くとやはり凄い、というか彼もオジーと同じで「ギターを弾くのが楽しくて仕方ない」ふうなのが感動的なんですね。そして、ルディ+トミーの轟音の中でも埋もれないトーンと流麗な旋律は、たしかにこりゃ別の人には無理だね。なんでみんながあんなに「ランディ!らんでぃ!」言ってたのか、すこし判ってきました。

 

 さ、最後はオマケ。オジーにかこつけて今回の陰の主役はリー・カースレイクさんなのですが、生前の彼がイアン・ペイスDeep Purple)と遊んでる映像がYouTubeにありました。これ、イアンとリーが電子ドラムで“遊んでる”だけなんだけど、最高最高最高!リーさんは歌もうまいことがよくわかる。イアン翁がぼそっと言ってる「俺たち(の世代のドラマー)には、先生(*手本になる存在)なんてなかったからね」が印象的です。 

www.youtube.com