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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第42回「Jimmy Barnes」(2)

 ジミー・バーンズ関連作。

youtu.be

 

2Living LoudLIVING LOUD2004
1. Last Chance
2. I Don’t Know*
3. Every Moment A Lifetime
4. Crazy Train*
5. In The Name Of God
6. Flying High Again*
7. Push Me Too Hard
8. Mr. Crowley*
9. Tonight*
10. Walk Away
11. Over The Mountain*
12. Crazy Train[Live/bonus]*
13. Good Times[Live/bonus]
<メンバー>
Jimmy BarnesVo
Steve MorseGt
Bob DaisleyBa
Lee KerslakeDr
Don AireyKey
 
イメージ 1

 

 私が初めてJimmy Barnesなるお名前を拝見したのはこちら。スティーヴ・モーズ大好きの小生、氏が歌モノをやっていると知り興味津々。ベースとドラムは初代Ozzyバンドのボブ&リー(リーさんについては、Uriah Heepでの名演も尊敬してたのだ)、鍵盤が名手ドン・エイリーだっていうのも盛り上がるポイント。ジミーさんのことは(すみません)存じませんでした……。
 
 曲目をみてお気付きでしょうが、Ozzy Osbourneのカヴァー(*)がいっぱい。これには理由がありまして、さきにも記したようにBobLeeがオジーさんの初代リズムセクションで、初期アルバム(BLIZZARD OF OZZDIARY OF A MADMAN)では作曲にも関与してたから、だそうです。あくまで自分たちのレガシーを扱ったということなんでしょう。(楽曲のクレジットをめぐって、オジー側とその直前の時期まで揉めていたという話も有り。)まあ、政治的な思惑はさておいてですね、これがなかなか面白い出来なんですよ。
 
 因縁のオジー・ソングですが、リズム・セクションは基本的にオリジナル通りの演奏をしてます。まあ、予想通り。オジーのバンドの後を継いだ者たちが「メタル的」プレイを深化させていくのに対し(オジーのライヴ盤を聴いてみて下さい)、二人はあくまで「70年代ハードロック」の色彩なのが興味深い。で、ジミーとスティーヴは原作にとらわれず独自の解釈を大炸裂させております。ジミーのヴォーカルスタイルはオジーとは全然似ていませんし、スティーヴ先生もソロ部分ではお得意のスケールを披露しちゃう。
 
ところが面白いもんで、「原曲を台無しにしやがって!」とはあんまり感じないんですよね。「I Don’t Know」なんかは「こんなに魅力的な歌メロだったっけ?」と再発見できたりしますし、「Crazy Train」のソロには「こんな解釈もあるか!」と膝を打つこと請け合い(……まではしませんが)。「Mr. Crowley」みたいな曲は、オリジナルの禍々しさが慕わしくなるのが正直なところですが、アルバム中では最後にくる「Over The Mountain」なんかはアリ。朗々と歌うジミー版も良いじゃないの。終盤のリフ展開はヘヴィなんだけど、さっき言ったようなわけでリズム隊が過度の重さを排しているので、ありきたりな「メタル」になってない。個人的には好印象です。
 
さて、残りの1.3.5.7.10曲目はLiving Loudオリジナル・ソング。「ジャーージャッジャー、でれれれれー」という切れ味良いリフで始まる「Last Chance」はジミー歌唱の味を活かした最高のオープニング。220秒からのギター・ソロも短い中に起承転結が詰め込まれていて完璧。モーズ先生、最高です。いっぽう、「Every Moment A Lifetime」は、グッとテンポを落としたナンバー。ドンさんの古風なオルガン・サウンドが心地好い。“♪Every moment in a lifetime…….”ていうコーラスの、ジミーさんの貫禄たるや。
 
少々風変わりなサウンドとリズム(中近東風を狙った?)の「In The Name Of God」。モーズさんの器用さと、バーンズさんの(いい意味での)不器用な熱さの、組み合わせの妙。リズム隊はちょっと影が薄いかね。「Push Me Too Hard」も、イントロからの流れはSteve Morse Band風(歌が入るから勿論同じじゃないが)。130秒辺りから(強いて言えば)Rushっぽいバンド・サウンドに切り替わるのも、プログレッシヴ。ここのコード進行もいいなあ。これもボブ&リーのテイストじゃなさそうです。本作中最もチャレンジングな曲かもね。私は大好き。
 
Walk Away」はミドル・テンポのオーソドックスなロックソング……と見せかけて、各所で小技が効いてる熟練工の仕事。Mahavishnu Orchestraを吸収して、Dixie Dregsを育ててきたSteve Morse先生のセンスが活きてると思いますね。それを小難しく“ない”ように聴かせるのが凄え。
 
ちなみに、アルバムの最後2曲はライヴ。「Crazy Train」の演奏が完璧なのは言わずもがなですが、聴衆の盛り上がり方が物凄い。最後の「Good Times」はオーストラリアン・ロックの大先達The Easybeatsのカヴァー。この曲を作った一人はメンバー(ギタリスト)のGeorge Youngさん。ご存知AC/DCMalcolm及びAngusのお兄さんでございます。オーストラリアはシドニーでのライヴゆえ、これまた甚だしき盛り上がり。純粋に曲もいいしねえ!1968年のオリジナルThe Easybeats版も聴きましたが、Steve Wrightの塩辛ヴォイスもカッコいいし、Harry Vandaリードギター/この曲の共作者)のギター・ソロもクール。……ネット上の情報じゃあ、1986年にINXS with Jimmy Barnesが「Good Times」をカヴァーしてたんだってね。成る程。じゃあ、十八番だったでしょうね。
 <続く>