(5)Ray Hartmann
【曲】Annihilator「The Fun Palace」(『NEVER, NEVERLAND』1990)
考えてみたら「いいバンド」っていうのはたいがいドラマーがいいわけだから、この企画はあまりレギュレーションになっていない気がしてきました。が、始めた以上はもっと続けましょう。“ドコドコドコドコ、おめーはタイコか?”<谷口>
といいながら、この辺になるとわたしがわざわざ喧伝するまでもないのかもしれぬ。Annihilator「The Fun Palace」は名曲中の名曲ですしねえ(セカンドアルバム『NEVER, NEVERLAND』に収録)。今回はとくにオリジナル・スタジオ版におけるレイ・ハートマン先生のプレイを味わいましょう。ツーバスも織り込まれる典型的なメタルドラミング……かと思いきや、そうして聴き流すのは惜しい有機的プレイの雨あられ。
まずはわかり易いところでギターソロのバッキング・ドラムをお聴きください。Jeff Watersの構築されたソロと見事に平仄を合わせた起承転結(漢詩か……)タイコ運び。ソロ後半の3分50秒や4分03秒や同06秒の「ハネ」るところ、無茶苦茶グッときません?どこかで読んだ気がするんですが、Rayさん「クリックが嫌い」で、レコーディングでもほとんど使わないんだとか。現代的メタルでありながらしなやかな音になってるのはその辺も関係あるんじゃないでしょうか。
あとはね、ギターの邪魔にならんように、ツーバスは実は最低限だし、代わりにテンポチェンジの山場ヤマ場で絶妙なブレイクをかませてくるし。それになんといっても、ベースの刻みとの揃え方が素晴らしい(これはベーシストWayne Darleyの手柄でもありますな)。ついでにいうと、アナイアレイターは、ベースがうねうね妖しい曲に名曲がホント多くて、3rdに入ってる「Knight Jumps Queen」なんかもいいよね。
さて、レイ先生はアナイアレイターに出たり入ったりしてますが、2000年の『CARNIVAL DIABLOS』でも好プレイを披露しています。ジェフ+レイの組み合わせは最強だなあと思えるのが、「Battered」。お得意のインテンスなリフ、リズムチェンジ、疾走弾きまくりからUli Jon Rothっぽいスケール(?)のネオクラシカル・シーケンスへつなぐギターソロと、「ジェフ三昧」にぴったり貼り付いて盛り立てる名人芸、あのセンスの良さ。また一緒にやってくれませんかねえ……