なんでコイツはあんなにBrian Howeにこだわってたの?とお思いでしたろう。それはですねえ、コレを先に聴いてたからです。
Bad Company『WHAT YOU HEAR IS WHAT YOU GET:The Best of Bad Company Live』(1993)
- How About That
- Holy Water
- Rock ’N’ Roll Fantasy
- If You Needed Somebody
- Here Comes Trouble
- Ready For Love
- Shooting Star
- No Smoke Without Fire
- Feel Like Makin’ Love
- Take This Town
- Movin’ On
- Good Lovin’ Gone Bad
- Fist Full Of Blisters
- Can’t Get Enough
- Bad Company
<メンバー>
Mick Ralphs(Gt)
Simon Kirke(Dr)
Brian Howe(Vo)
Dave “Bucket” Colwell(Gt)
Rick Willis(Ba)
“Are you ready for some trouble?......Let’s hear it for Band Company!”というMCから「How About That」で幕を開けるライヴ大会。ここにはオリジナル・メンバーはミックとサイモンしか居ません。ボズ(Boz Burrell)不在も残念ですが、バンドの顔ポール・ロジャース(Paul Rodgers)が居ないので、このライヴ盤も軽んじられている気がします……が、ちょっとお待ちなさい。一聴の価値ありなんじゃないの!、と言いたいよ。
まず私の趣味からいえば、グレイト・ドラマーSimon Kirkeのライヴプレイが全編聴けて、ドラムソロ(13)まで入ってるなんておいしすぎる。サイモンさんについては当ブログでソロ作紹介(時代の産物を追う?(6))もしましたが、FreeとかBad Companyとか、バンドでプレイしてる時がやっぱり最高よ。彼のスネア・ロールの心地よいのなんの。
ミック・ラルフスさんのプレイも派手ではないけどツボをおさえてるし、サポート的なデイヴとリックも丁寧な仕事してる。そして、やっぱりブライアンですよ。ポール・ロジャースは絶対的な個性の持ち主だから、おなじようには歌えないはず。ブライアン時代のバッド・カンパニー作品(『HOLY WATER』『HERE COMES TROUBLE』など)は問題ないとして、ポール時代の曲はどうなるの?っていうのは当然の懸念でしょうが、じっさい彼はポールの真似はしてません(と思う)。それがむしろ奏功してると私は思ってまして。楽曲の新たな魅力を提示した、とまでいうとさすがに大袈裟なんですが、ホントに悪くないの。まあ、サイモンのドラミングにこちらが(勝手に)幻惑されてる可能性もあるけど……
1曲目は当時の新作『HERE COMES TROUBLE』(1992)から「How About That」、次が『HOLY WATER』(1990)からタイトル曲、3曲目にポール時代の「Rock ’N’ Roll Fantasy」(『DESOLATION ANGEL』(1979)に収録)という具合。「How About That」はキャッチーなサビがいい感じだし、ヘヴィな「Holy Water」もブライアンのソウルフルな歌唱&ミック達の切れ味鋭いプレイがナイス。「Rock ’N’ Roll Fantasy」はもともとBad Companyにしてはちょっとディスコ調の乗りをもつダンサブルな曲でしたが、ライヴではよりストレートなハードロックになっててそれも良い。
バラード「If You Needed Somebody」(『HOLY WATER』)、ビッグなビートのロック「Here Comes Trouble」(『HERE COMES TROUBLE』)といった自作曲も、ポール時代の名バラード「Ready For Love」・ドラマティックな「Shooting Star」も、Brianはかなり丁寧に歌ってます。ここまでで約半分ですが、新旧の楽曲が違和感なく並んでると思うのよ。
「No Smoke Without Fire」(『DANGEROUS AGE』(1988)収録)もヘヴィリフに導かれる曲でありながらキャッチーなコーラスを持つ佳曲。初期の名曲「Feel Like Makin' Love」は、ブライアンの歌もいいが、ミックとデイヴのツインギターが美しい。ちなみに、『DANGEROUS AGE』『HOLY WATER』『HERE COMES TROUBLE』のメインソングライターはBrian Howe(Terry Thomasという人との共作が多い)でして、Rodgers-Ralphsの遺産(?)に負けない楽曲を作り続けていたのには敬服いたします。(私は、彼の作るややハードポップ寄りのキャッチーなハードロックは好きなんで。)
「Take This Town」(『HERE COMES TROUBLE』)という少しアップテンポの曲で観衆を乗せた後は、勢いを途切れさせず初期の名曲「Movin’ On」を畳みかけるのもグッド。シンプルなロックンロールが良いのよ。“♪Wowow~~”。さらに「Good Lovin'Gone Bad」(『STRAIGHT SHOOTER』(1975)収録)という元気な曲――Freeの「Little Bit Of Love」の一節に近いところがあると昔から思ってるんですけど……――で会場の雰囲気は最高潮に。
そこで繰り出されるのが、我らがサイモン・カーク師のドラム・ソロ「Fist Full Of Blisters」!1分くらいの短いものですが、シンプルなビートキープからスネア連打+タム・ワークに移り、最後はお得意のスネア・ロールで次曲への地ならしをして……やったあ、「Can't Get Enough」につながる!わけ。名人芸。バカテク・ドラマーも凄いと思うけど、シンプルなプレイで曲を活かせる人はもっと偉い。「専門家の個人の見解です」。
「Can’t Get Enough」は、シンプルなんだけどやっぱり名曲……である秘密はやっぱりサイモンのドラム。スクエアに叩いたら台無しだけど、いわゆるシャッフルともちょい違う、絶妙な間合いで、しかもグイグイギタリスト達の背中を押してる。……褒め過ぎ?むかしアマチュアバンドでやってみようかと思ってドラム練習したら意外に難しかったのよ。閑話休題、本盤ではミック&デイヴのツインギターも決まりましたよ。
最後は当然これ、「Bad Company」。クレジットによるとここでは鍵盤はミックさんが弾いてるそうです。(オリジナル・メンバーではポールが弾いてたと思う。)ポール色の強い大作ですが、‟現行メンバー“でしっかり重厚に仕上げてきましたよ。後半にミックさんのソロもフィーチュア。仕上がりの核を荷ってるのは作曲者の一人でもあり、本ライヴ盤のプロデューサーでもあるサイモン・カーク先生。
おかしいな、ブライアン・ハウ擁護をしようと思っていたのに、気がついたらサイモン・カーク礼讃になっているという。まあいいでしょう、このライヴ盤久し振りに通して聴いたけど、やっぱり良かったから。
(※先日の第55回「White Spirit」(2)にも注記しましたが、Brian Howeさんは今年の5月6日に亡くなりました。ご冥福をお祈り致します。)
<完>