DON'T PASS MUSIC BY

ラーズ(メタリカ)が“RIOT Fire Down Under”のTシャツ着て御父上(92)と写真に納まってるのが超クール。

第57回「Yellow Matter Custard」(2)

 後半戦。マニアなばかてく野郎どもによるビートルズ・カヴァー・ライヴ盤、その2-1以降です。

 

Yellow Matter Custard『ONE NIGHT IN NEW YORK CITY』(2003)

 1-1. Intro

 1-2. Magical Mystery Tour

 1-3. Dear Prudence

 1-4. Dig A Pony

 1-5. She Said She Said

 1-6. I Call Your Name

 1-7. You Can't Do That

 1-8. When I Get Home

 1-9. Nowhere Man

 1-10. Rain

 1-11. Free As A Bird

 1-12. Come Together

 1-13. I Am The Walrus

 1-14. While My Guitar Gently Weeps

 

 2-1. Baby's In Black

 2-2. I'll Be Back

 2-3. No Reply

 2-4. The Night Before

 2-5. You're Gonna Lose That Girl

 2-6. Ticket To Ride

 2-7. Everybody's Got Something To Hide Except For Me And My Monkey

 2-8. Oh Darling

 2-9. Think For Yourself

 2-10. Wait

 2-11. Revolution

 2-12. I Want You (She's So Heavy)

 2-13. You Know My Name (Look Up The Number)

 2-14. Lovely Rita

 2-15. Good Morning Good Morning

 2-16. Sgt. Pepper (Reprise)

 2-17. A Day In The Life

<メンバー>

 Neal Morse(Key, Gt,Vo)

 Mike Portnoy(Dr, Vo)

 Matt Bissonette(Ba, Vo)

 Paul Gilbert(Gt, Vo)

 

 ワルツ調の「Baby’s In Black」、マイナーとメジャーの交錯する「I’ll Be Back」、さらに「No Reply」と、The Beatles3・4枚目の曲が続きます。次の「The Night Before」は『HELP!』収録のロックンロール。Yellow Matter Custardの才人たちは演奏も歌も大したものですが、シンガーとしての個性はやっぱりジョンとポールに敵わないというのはみとめるしかないでしょうかな。とりわけポール翁はいまだにロング・ステージであの美声を保つんだから、別格と言わざるを得ませんな。次の「You’re Gonna Lose That Girl」のようにコーラスワークで聴かせる曲ならば、フォロワーにも太刀打ちするチャンスは生じますが。この曲のシンプル極まりないギターソロも真面目に弾くポールが良い。

 

 さらに『HELP!』シリーズが続いて「Ticket To Ride」へ。これも多重コーラスがうまく効いてる。これまたカヴァーがありまして、有名どころだとまずThe Carpenters。彼ら流の曲にアレンジされているほか、“♪He’s got a ticket to ride”と歌い替えてますね。それから「You Keep Me Hanging On」で有名なVanilla Fudgeが、『VANILLA FUDGE』(1967)の冒頭でやってます。オルガン入りのヘヴィ・サイケ・ヴァージョン。ヴァニラ・ファッジに影響を受けた連中は数多いですが、例えば英国のDeep Purpleっていう新人はデビューアルバム『SHADES OF DEEP PURPLE(1968)で「Help!」の(同じような方法論による)カヴァーを、『THE BOOK OF TALIESYN』(1968)では「We Can Work It Out」をやってます。Yellow Matter Custardは曲終盤の(原曲でフェイドアウトしていく部分)でポールがものすげえ速弾きをちらっと披露してます。

 

 「Everybody's Got Something To Hide Except For Me And My Monkey」をやるというのはナイス。THE BEATLES(通称『ホワイト・アルバム』)収録のハード・ロックンロール、これも本家ビートルズはステージでやってないですからね。この曲が終わったところでマイクが“I’ve got blisters on my fingers!”と叫びますが、この「名言」はもともとはリンゴが「Helter Skelter」のエンディングで言っていたもの。続いても後期の曲で「Oh Darling」、ポールの強靭な喉には敵わないか、ちょっと歌が苦しそう。

 

中期の「Think For Yourself」(ジョージ作)というのも渋いですな。「嘘つき女」っていう邦題はどうなんだと思いますが……。同じく『RUBBER SOUL』からの「Wait」は、オリジナルではダブル・ヴォーカルの曲ですが、面白いことに「ポールは『これはジョンが書いた』と言い、ジョンは『これはポールの曲さ』と言っている」んだそうで。Yellow Matter Custardでは中間部のシングル・ヴォーカル部分をマイク・ポートノイ氏が歌いますが、彼の声はポールやあるいはリンゴというより、キース・ムーンなんだよね……

 

よしよし、後期のハードロックもちゃんと演るか。「Revolution」……うーん?意外に軽い仕上がりなのはなんでだろう、Nicky Hopkins風のピアノが入ってないせいもあるか。もっとヘヴィでいいんだよ?ということで、“She's So Heavy”な「I Want You」へと。マットのブルンブルンいうベースはナイス。ポールは「アイ・ヲン・ユー」と歌うんですが、原曲でジョンは「アイ・ヲンチュー」と歌っていたので不思議な感じ(違和感)が。こういう時は第三者のプレイを聴いてみよう、小生が敬愛するAlvin Lee先生(元Ten Years After)がやってたからね……あれ、大半は「ヲンチュー」だけど、数か所「ヲン・ユー」とも歌ってる。ネイティヴの方々がそうなんだからもうなんでもいいんだろうか。Yellow Matter Custardのこだわりは、原曲通り「ブツっ」と切るところね。

 

 このバンドのヤバさを感じたのは何といっても次の「You Know My Name (Look Up The Number)」。ビートルズ史上屈指の珍曲(私は昔からこの曲が無茶苦茶好きなんですが)を完コピで仕上げるとは。ジャジーな演奏はまあ出来るとして、中間のDenis O’Bellパート“♪You know my name, babababa~”周辺を律儀にやるだけでなく、終盤の奇声パートをマイクの“キース・ムーン・ヴォイス”を活かしてフルカヴァー(捨て台詞的な部分まで全部やる)するという。聴いてる側も試されてるよねコレ。

 

 こんなのやって後はどうすんの?と、思ったらコンサート末尾は『SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND』のラスト4曲をその順番でやるという、ね。ピアノ・ソロも入る軽快な「Lovely Rita」、ソロ前の素っ頓狂な“♪Rita!”も完全再現。ポールのロックンロールの後はジョンのR&R「Good Morning Good Morning」だわな。かねがねこの曲はハードロック向きだと思ってましたが、ストレートにやってやはり問題なし。ここでのニールのヴォーカルはかなり良い、ジョンっぽいよ。オリジナルに敬意を払ったポールのギターワークもよろしい。そして「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band(Reprise)」になだれ込むと。近年でもポール・マッカートニーはこの曲をショウ終盤でよくやりますよね。

 

 締めくくりは大作「A Day In The Life」。先に余談を片付けると、Brian Auger & The Trinityがブライアンの達者なオルガンを中心にしたジャジー・インストをやっていたり(『DEFINITELY WHAT !』(1968)一曲目)、Jeff Beckがライヴでギターメインのインストをやってたり(『LIVE AT BB KING BLUES CLUB』(2003))と、なぜか歌無しヴァージョンがいくつか。あ、StingDEMOLITION MAN』(1993)っていうのに歌モノ・カヴァーがあって(93年イタリアでのライヴ)、割と原曲に忠実ですわ。さてYellow Matter Custardはと……ニールのナイスヴォーカル(ジョン風)で進行し、例のオーケストレーションのところはテープを使って、“♪Woke up, fell out of bed……”のところはポール・ヴォーカルにバトンタッチ。“~got out of bed”って歌ってるけど、ここの歌唱は本家ポールっぽくて良い。マイクとマットはバックに徹してこのシンフォニック大作を完成させます。

 

 やっぱり、聴衆・観衆以上にやってる本人らが楽しんじゃってますなあ。いいけど。

 

 最後にオマケインフォ。イエロー・マター・カスタードはワン・ショットの企画ではなく、後年別作品も出しました、上記の面々からベースがKasim Sulton――Utopiaトッド・ラングレンと一緒に『DEFACE THE MUSIC』を作ったりしてた、マットに負けないビートルマニア……――に交替したラインナップで『ONE MORE NIGHT IN NEW YORK CITY』(2011)っていうのも発表。当然こちらもライヴ、楽曲の重複は一曲も無し。このオタクどもめ……

<完>