DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳112

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Pharaoh「Dark New Life」(『BE GONE』2008)

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 些かマイナーな作品かもしれない。アメリカのパワーメタル・バンドPharaohのサード・アルバム。一時期は、というか新宿にDisk Heavenがあった時代は、Destiny’s EndだのRivalだのといったのを掴んだこともありましたが、最近はワケもなくアメリカン・パワーメタルに興味を持つこともなくなってしまっていたのですが、これだけは別。正確には「この曲だけは」別。

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 なんとなれば、わが崇敬の対象たるMark Reale(Gt)&Mike Flyntz(Gt)のRiotギターコンビが、同曲のギターソロでゲスト参加しているから。マークは長いキャリアに反して他者作品へのゲスト参加はほとんど無いのですが、いったいどういう経緯があったんでしょうね。

 

 楽曲は、アップテンポ三連の古典的なメタル。ヴォーカルもなかなか力強くてわるくない。でも聴き所はギターソロだわな。3分03秒からがたぶんフリンツさんで得意の細かいスケールを絡め、3分16秒からツインになって両雄の一糸乱れぬ共演、3分29秒から満を持して御大マーク・リアリの艶やかな十八番フレーズが登場……と。約30秒くらいしか出番はないですが、完全にRiot印でしたね。Pharaoh側の用意した曲が、「Altar of the King」をモダンにしたような曲だったことも奏功、か。

 Riotマニアは頑張って探して聴いてちょうだい。

どんぱす今日の御膳111

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Personz「Midnight Teenage Shuffle」(PERSONZ1987)

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 リアルタイムではPersonzは知りませんでした。毎度のことながら申し訳ない。関心持った理由はまた妙なもので……ケーブルテレビの番組で本田毅さん(Gt)という方が、お気に入りの(あるいは影響を受けた?)ギタリストやアルバムを紹介されていたのです。

 

 失礼乍ら本田さんが何者かも知らなかったのですが、Andy Summers(The Police)やAdrian Belew(King Crimson)のプレイがいかに衝撃的であったかを語られていたので、「ああいうタイプのギタリストの魅力って気づいてなかったな」と反省するとともに、勝手に「この本田さんのプレイもそういう系譜なのだろうか」と想像。

 

 後で調べたらエフェクターを活用するギタリストとして第一人者であらせられるということでした。あ、元Ziggyの大山さんがやっていたSham-on『陰陽』(1998)でもプレイされていたんですね。持ってたはずなんだがどこへ行ったか……

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 手に入りやすいところでパーソンズのファーストを(スミマセン中古で)ゲットして拝聴。1曲目の高速シャッフル「Midnight Teenage Shuffle」が元気でいいです。本田ギターも堪能出来ますし。

このドラミングがすごい“mini”(6)

(6)Sean Taylor

【曲】Blitzkrieg「Unholy Trinity」(『UNHOLY TRINITY』1995)

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 NWOBHM勢力中最高のバンドの一つSatan。その名盤『COURT IN THE ACT』で叩いているドラマーがSean Taylorさんであります。SatanBlind Furyと名を変えたり、元に戻したり、またもPariahと名乗ったりといろいろありましたが、近年またSatanとして旺盛な活動を行っているのはご存じのとおりです。彼らの作品の質の高さは、Russ TippinsとSteve Ramseyのギター隊のリフ・アイディアの豊富さに負うところが大きいですが、個性的なヴォーカリストと強靭なリズムセクション(Graeme English+Sean Taylor)の存在も忘れてはいけませんな。

 

 ショーン・テイラーさんのドラミングは、スタイルとしてはオーソドックスだと思いますが、バンドを押し出すドライヴ感が凄い。ライヴを聴くと走り気味な時もありますが……。グレアム・イングリッシュさん(Ba)との相性は絶妙で、スピードナンバーでも“スラッシュ的”にならず、ヘヴィナンバーでも“ドゥーム的”にならない、古き良き「ハードロック」の味わいを感じさせてくれます。『COURT IN THE ACT』で聴ける、多彩なリフに対応するドラミングは、当時のNWOBHM界隈でも抜きんでていたのではないかと思います。

 

 そういうわけで、まずはSatanでの仕事を聴けばよいのですが、ここでご紹介したいのはBlitzkriegでのプレイ。Blitzkriegは80年代に活動した、Brian Rossが率いた(Satanとは兄弟のような?)バンドで、85年にアルバム『A TIME OF CHANGES』を出しています。「Blitzkrieg」という曲はMetallicaがカヴァーしたので有名になりましたね。

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 実はファーストアルバムでもドラムはショーンさんが務めていたのですが、十年後に作られたセカンド『UNHOLY TRINITY』――Brian以外のメンバーは一新――でも彼がプレイしていたのには少々驚きました。(むろん、リアルタイムで知っていたのではなく、後でたどって認識したわけですが。)ブライアン御大と仲良しなのでしょうね、やはり。

 

 『UNHOLY TRINITY』の1曲目は「Hair Trigger(Pull The Trigger Pt.2)」という曲なのですが、これはSatan及びBlitzkriegがかつて取り上げた(『COURT IN THE ACT』『A TIME OF CHANGES』の双方に入っております)「Pull The Trigger」という曲の“続編”。こういった曲をBrianが歌ってSeanが叩くんだから、もうSatan/Blitzkriegお家芸の世界。スネアの細かいロールと必殺の頭打ちが心地よいメタル・ソング……

 

 で、今回の対象曲「Unholy Trinity」(歌詞の内容は、“切り裂きジャック”に因んでいるようです)なんですが。不安感をあおりつつ疾走していくリフに合わせてドラムが進むのですが、バスドラムの位置が独特で、“ドッタ、ドッドタッ”のパターンを例にいうと最後の「ド」が16分(一般的なビートより)遅いような、不思議な踏み込み。全般には前ノリ系のショーンさんが、キックの一部だけを微妙な位置に置くことで不思議なグルーヴが生まれています。……意図的なんだと思うんですが。説明が下手ですみませんが、実際聴いていただければおわかりかと。

 

 この曲はバンドのライヴ・セットリストにも残っていきましたので、後任ドラマーのプレイをライヴ盤で聴けるのですが、そこでは通常の8ビートで演奏されていましたね。『ABSOLUTELY LIVE』(2004)におけるPhil Brewisさんのプレイは、“むしろこれが自然だろうなあ”と思わせてくれる好プレイですが、オリジナルを聴き込んでいた耳には“軽く”聴こえてしまうという。おかしなものです。あ、『ABSOLUTELY LIVE』はバンドの新旧佳曲が生々しくい味わえる良作なので、チェックをお願いします。ブライアン・ロス先生もお元気ですぞ。

 

 まさかそこ(『UNHOLY TRINITY』)からさらに二十年弱経って、Brian Ross入りのSatan with Sean Taylorの音源が聴けるようになるとは思いもよりませんでしたが。再集結Satanは活発に活動していますが復活第一弾の『LIFE SENTENCE』(2013)、北米ツアーの記録『TRAIL OF FIRE』(2014)にはとりわけ感銘を受けました。ギター隊のアイディアはまだまだ豊かでしたし、ブライアンはますます盛んだし、ショーンとグレアムは若々しい――この期に及んでライヴでは走り気味なのが微笑ましい――し。

 

 今後の活躍も期待できます、というところで今回は終わり。

どんぱす今日の御膳110

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Omen「Bounty Hunter」(『THE CURSE』1986)

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 Annihilatorが好きなんですよね、私。最初はRoadrunner時代のベスト盤『THE BEST OF ANNIHILATOR』から入って初期作品をざっと聴いたものですが、そのとき最も気に入ったのがセカンド『NEVER, NEVERLAND』(1990)の曲で、「Phantasmagoria」とか「The Fun Palace」とかは最高でした。(否、いまでも最高。)

 

 で、そこで歌ってたCoburn Pharrさんが、「元Omen」と説明されてたことから、「Omenていうのもいずれ聴いてみよう」と思い至ったわけです。

 

 あるとき、専門店で『THE CURSE/NIGHTMARES』(LP+EPの内容を一枚に)を見かけ、「おお、これがあのオーメンですか?」。いかにもなジャケット、信頼の(?)Metal Bladeからのリリース、ということで大枚はたいた……はいいものの、帰ってから中をあけてみると、メンバー一覧にコバーン・ファーの名前はなかったのであった(J.D. Kimballさんがリードヴォーカルでした)。

 

 下調べもしないで手を出すとこういう目に遭います。

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 コバーン・ヴォイスを味わうという目的からは外れてしまったわけですが、80年代半ばの正統派アメリカン・メタルは貴重ゆえ、聴かせてもらいましょう。ゴリゴリ強引なリフ、突っ込むドラム、濁った(メタル向きの)ヴォーカル……B級感強めですが好感度は高い。意外にキャッチーなところもあるしね。

 

 そこそこカッコいい疾走曲ではなく、ヘヴィな「Bounty Hunter」を選んだのは、メタルの理想形の一つである“ダサカッコいい”を地で行くような曲だから(?)。“♪I am the hunter, killing is my game……”のところは「でっでけでー、でろれろれー」のリフがあか抜けなくてよい。途中でいきなり頭打ちの疾走パートになる強引さ、捻りなく元に戻る愚直さ……こういうのが許せるかどうか?メタルやろうとして試されてる気すらしました。

 

 本人たちも気に入っていたのか、『THE CURSE』(1986)の後に出されたEP『NIGHTMARES』(1987)にもそのまま入っています。(その結果、私の持っている2in1CDには、「同一曲が2回入っている」状態に。)

 

 あ、EPのほうにはライヴテイクでAC/DC「Whole Lotta Rosie」のカヴァーが入ってますよ。

どんぱす今日の御膳109

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Nina Simone「Mississippi Goddam[Live]」(『THE REAL…NINA SIMONE(THE ULTIMATE NINA SIMONE COLLECTION)』2013)

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 こちらは、映画評論家の町山智浩さんがラジオ番組で『What Happened, Miss Simone?』という映画の紹介をされたのを聞いて知りました。町山さんの解説は懇切なものでして、Nina Simoneの音楽的素養、活動期の社会背景、家庭内の問題、代表曲の魅力をコンパクトに教えていただきました。

 

 中でもこの“過激な”「Mississippi Goddam」は印象に残りまして、ぜひ手元に置きたいと思ってまずベスト盤を探しました。RCAというレーベルから出ている3枚組には、ラジオ解説に出てた曲がいろいろ入ってるようだったのでまずこれを。「Mississippi Goddamn」の他に、「Why?(The King of Love Is Dead)」や「Nobody’s Fault But Mine」、「Ain’t Got No/I Got Life」といった名作もまとめて聴けますし、シモンさんの名人芸“他人の曲をアレンジしてわがものにする”――Bob Dylan「Just Like A Woman」、The Beatles「Here Comes The Sun」、Richie Havens「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」(Yesもやりましたね)、Hoyt Axton「The Pusher」(Steppenwolfがやったのが有名)などなど――も楽しめるお買い得盤。

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 「Mississippi Goddamn」(1964)は、後に“first civil rights song”とされるようになったともいいますが、ミシシッピアラバマで当時起こった人種差別に基づく殺人に対する怒りを表した曲。“♪Alabama’s gotten me so upset, Tennessee made me lose my rest, and everybody knows about Mississippi Goddam……”。軽快なジャズナンバーに載せて繰り出されるメッセージ。

 

 曲調は楽しいし、バックバンドもノリノリなんですが、詞の内容とのコントラストで却って不穏にさえ思えるという。パンクロックみたいに絶叫しなくてもメッセージは伝えられるし、不正への怒りはデスメタルみたいな強烈なサウンドでなくても表現出来る。“♪That’s it !”