楽曲は、アップテンポ三連の古典的なメタル。ヴォーカルもなかなか力強くてわるくない。でも聴き所はギターソロだわな。3分03秒からがたぶんフリンツさんで得意の細かいスケールを絡め、3分16秒からツインになって両雄の一糸乱れぬ共演、3分29秒から満を持して御大マーク・リアリの艶やかな十八番フレーズが登場……と。約30秒くらいしか出番はないですが、完全にRiot印でしたね。Pharaoh側の用意した曲が、「Altar of the King」をモダンにしたような曲だったことも奏功、か。
NWOBHM勢力中最高のバンドの一つSatan。その名盤『COURT IN THE ACT』で叩いているドラマーがSean Taylorさんであります。SatanはBlind Furyと名を変えたり、元に戻したり、またもPariahと名乗ったりといろいろありましたが、近年またSatanとして旺盛な活動を行っているのはご存じのとおりです。彼らの作品の質の高さは、Russ TippinsとSteve Ramseyのギター隊のリフ・アイディアの豊富さに負うところが大きいですが、個性的なヴォーカリストと強靭なリズムセクション(Graeme English+Sean Taylor)の存在も忘れてはいけませんな。
ショーン・テイラーさんのドラミングは、スタイルとしてはオーソドックスだと思いますが、バンドを押し出すドライヴ感が凄い。ライヴを聴くと走り気味な時もありますが……。グレアム・イングリッシュさん(Ba)との相性は絶妙で、スピードナンバーでも“スラッシュ的”にならず、ヘヴィナンバーでも“ドゥーム的”にならない、古き良き「ハードロック」の味わいを感じさせてくれます。『COURT IN THE ACT』で聴ける、多彩なリフに対応するドラミングは、当時のNWOBHM界隈でも抜きんでていたのではないかと思います。
そういうわけで、まずはSatanでの仕事を聴けばよいのですが、ここでご紹介したいのはBlitzkriegでのプレイ。Blitzkriegは80年代に活動した、Brian Rossが率いた(Satanとは兄弟のような?)バンドで、85年にアルバム『A TIME OF CHANGES』を出しています。「Blitzkrieg」という曲はMetallicaがカヴァーしたので有名になりましたね。
『UNHOLY TRINITY』の1曲目は「Hair Trigger(Pull The Trigger Pt.2)」という曲なのですが、これはSatan及びBlitzkriegがかつて取り上げた(『COURT IN THE ACT』『A TIME OF CHANGES』の双方に入っております)「Pull The Trigger」という曲の“続編”。こういった曲をBrianが歌ってSeanが叩くんだから、もうSatan/Blitzkriegのお家芸の世界。スネアの細かいロールと必殺の頭打ちが心地よいメタル・ソング……
まさかそこ(『UNHOLY TRINITY』)からさらに二十年弱経って、Brian Ross入りのSatan with Sean Taylorの音源が聴けるようになるとは思いもよりませんでしたが。再集結Satanは活発に活動していますが復活第一弾の『LIFE SENTENCE』(2013)、北米ツアーの記録『TRAIL OF FIRE』(2014)にはとりわけ感銘を受けました。ギター隊のアイディアはまだまだ豊かでしたし、ブライアンはますます盛んだし、ショーンとグレアムは若々しい――この期に及んでライヴでは走り気味なのが微笑ましい――し。
Annihilatorが好きなんですよね、私。最初はRoadrunner時代のベスト盤『THE BEST OF ANNIHILATOR』から入って初期作品をざっと聴いたものですが、そのとき最も気に入ったのがセカンド『NEVER, NEVERLAND』(1990)の曲で、「Phantasmagoria」とか「The Fun Palace」とかは最高でした。(否、いまでも最高。)
そこそこカッコいい疾走曲ではなく、ヘヴィな「Bounty Hunter」を選んだのは、メタルの理想形の一つである“ダサカッコいい”を地で行くような曲だから(?)。“♪I am the hunter, killing is my game……”のところは「でっでけでー、でろれろれー」のリフがあか抜けなくてよい。途中でいきなり頭打ちの疾走パートになる強引さ、捻りなく元に戻る愚直さ……こういうのが許せるかどうか?メタルやろうとして試されてる気すらしました。
こちらは、映画評論家の町山智浩さんがラジオ番組で『What Happened, Miss Simone?』という映画の紹介をされたのを聞いて知りました。町山さんの解説は懇切なものでして、Nina Simoneの音楽的素養、活動期の社会背景、家庭内の問題、代表曲の魅力をコンパクトに教えていただきました。
中でもこの“過激な”「Mississippi Goddam」は印象に残りまして、ぜひ手元に置きたいと思ってまずベスト盤を探しました。RCAというレーベルから出ている3枚組には、ラジオ解説に出てた曲がいろいろ入ってるようだったのでまずこれを。「Mississippi Goddamn」の他に、「Why?(The King of Love Is Dead)」や「Nobody’s Fault But Mine」、「Ain’t Got No/I Got Life」といった名作もまとめて聴けますし、シモンさんの名人芸“他人の曲をアレンジしてわがものにする”――Bob Dylan「Just Like A Woman」、The Beatles「Here Comes The Sun」、Richie Havens「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」(Yesもやりましたね)、Hoyt Axton「The Pusher」(Steppenwolfがやったのが有名)などなど――も楽しめるお買い得盤。
「Mississippi Goddamn」(1964)は、後に“first civil rights song”とされるようになったともいいますが、ミシシッピとアラバマで当時起こった人種差別に基づく殺人に対する怒りを表した曲。“♪Alabama’s gotten me so upset, Tennessee made me lose my rest, and everybody knows about Mississippi Goddam……”。軽快なジャズナンバーに載せて繰り出されるメッセージ。
曲調は楽しいし、バックバンドもノリノリなんですが、詞の内容とのコントラストで却って不穏にさえ思えるという。パンクロックみたいに絶叫しなくてもメッセージは伝えられるし、不正への怒りはデスメタルみたいな強烈なサウンドでなくても表現出来る。“♪That’s it !”