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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳298

298

Avenger「Death Race 2000」『BLOOD SPORTS』1984

 前回何の気なしに(というか無根拠に)NWOBHMなるワードを出してしまったので、今回は正真正銘NWOBHMのバンドを出しましょうか。Avenger。といっても、本ファーストアルバムが出たのが84年ですから、ムーヴメントの中では後発組になりますね。(ただし、活動はもっと早くからやっていたようですけど。)

 

 音を聴いたら、というか歌を聴いたら、何かと通じるものを感じることでしょう。そう、このヴォーカル、Brian Ross(SatanBlitzkrieg)っぽくないですか? それもそのはず、このシンガーIan Swiftは初期Satanに居たことがあり(『INTO THE FIRE』デモで歌っている)、そのころAvengerでデモを録ったBrian Rossがその後トレードでSatanに入り名盤『COURT IN THE ACT』を製作する……という不思議な因縁もあるのです。歌い方も心なしか似てるわけよ。

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 Avenverは、Satanに比べればストレートな曲が多く、捻りがないのは物足りない(といえなくもない)ですが、例えばこの「Death Race 2000」など突撃感はなかなか捨てがたい。「Warfare」で歌い上げるIanはなかなか堂々としているし、8曲目「Enforcer」は、確実にあのスウェーデンのNWOTHMバンドEnforcer命名の由来になったんじゃないかと勝手に睨んでいるのですが。❨どっかにバンド名の由来説明がありましたかねえ?)

 録音があまり高クオリティでなく、音がややカルめに聞こえてしまうのだけが残念。

 そして私がこのバンドを「信頼に足る」と認定した根拠は最後に控えているのだ。ラストは何だと思います?「Matriarch」ですよ。Montroseのサードアルバムからのカヴァーっていうところがセンス良い。Sammy Hagar時代じゃなくてBob James時代のロックナンバーを若干の早回し(?)でお届けする心意気よ。

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 そしてさらに素晴らしいのは、Ian Swiftたちが2014年に至って再集結アルバムを出したことですよ。『THE SLAUGHTER NEVER STOPS』なるアルバムが突如出たもんだから、こっちは半信半疑。おじいちゃん、だいじょうぶ?

 “…………なめるな若造め!”とばかりに、アノ感じで歌いまくるイアン、タイトなドラミングでバンドの推進力を担うゲイリー・ヤング(Gary Young)の両翁が、若いギタリストらを従えて正統派メタルの意地を見せる。Satanの復活に刺激を受けた、のかは定かではありませんが、あの時代のヒーローたちが戻ってくれるのは超嬉しい。

どんぱす今日の御膳296

296

Symphony X「Smoke And Mirrors」『TWILIGHT IN OLYMPUS(1998)

 このバンドのことを、当ブログではこれまで正面から取り上げていなかったのか……。いわゆるプログレッシヴ・メタルの中で私が最も好きなグループです。近年は寡作でなかなか待たされますが、出してくる作品の質の高さには毎回唸らされますね。PARADISE LOSTなんかは気に入りすぎて、出た当初に日本盤を買い、数年後にDVD付き特別版をまた買ってしまったのでした。「Seven」は神々しいまでの名曲。

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 で、最初に買ったのはこっち『TWILIGHT IN OLYMPUSでした。ヘヴィメタルのディスクガイドに載ってた、その(本が出た)当時の最新アルバム。買ってきて再生ボタンを押すでしょ、それでいきなり飛び出すギターのこのフレーズよ。素朴だった当時の私はもうそれだけでやられてしまいました。ヴォーカルも熱く、うまいしね。個人的にはドラムにも感銘を受けた……のですが、ドラマーTom Wallingは本作だけの参加でしたね。オリジナルドラマ―のJason Rulloが次作で復帰するからですが、共にテクニカルなタイプでありながら、Jasonはパワーで、Tomは細かさに秀でているようです。(「Smoke And Mirrors」のライヴヴァージョン(played by Jason)は、キックやスネアのアタック感が凄い分、細かなフィルは端折ってる――ように聴こえます。ええ、ええ、私はどっちも好きですともさ。)トム・ウォーリング先生――実際ドラムを教えていたりするようですけど――のプレイをまたどこかで聴きたいもんです。

 本作、イントロから即効性のある曲は他には「In The Dragon’s Den」くらいですが、長尺のプログレッシヴな曲(「Through The Looking Glass」)やメロディアスなバラード(「Lady Of The Snow」)にも佳曲があり、気を抜けません。人気曲の密度では前作『THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY』(1997)――アタマ三曲「Of Sins And Shadows」「Sea Of Lies」「Out Of The Ashes」はライヴの常連!――にはかないませんが、味わい深いアルバム。

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どんぱす今日の御膳294

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Praying Mantis「Children Of The Earth」『TIME TELLS NO LIES』(1981)

 よし、メタルに戻ろうか。NWOBHM中メロディアス派の守護神Praying Mantisの中心メンバーは、勿論TinoとChrisのTroy兄弟ですね。彼らのセンスは実に素晴らしい……とか言いながら、当然私(80年代生)はリアルタイムでは全然知りませんでした。それどころか、最初に彼らの音を聴いたのはオリジナルアルバムですらなかった。

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 『LIVE AT LAST』(1990)っていうライヴ・アルバムがあってですね、“NWOBHM十周年を記念したコンサート”を収録したものなんですが、そこにトロイ兄弟+ポール・ディアノ(Vo、元Iron Maiden)+デニス・ストラットン(Gt、元Iron MaidenLionheart)+ブルース・ビスランド(Dr、元Statetrooper他、のちPraying Mantisに入る)という編成のスペシャルバンドが出たということなんです。(曲によってメンバーの出入りがある。)

 

 これを2000年以降に中古で手に入れて、「へー、元メイデンのポールが歌ってんだ?」くらいの気持ちで再生し、はじめはアルバム後半のアイアン・メイデン曲ばかり聴いたわけですが、そのうち前半もちゃんと聴いてみるとそれはそれでメロディアスでなかなかいい。Praying Mantisって、名前しか知らなかったけどちゃんと聴いてみようかな……となってようやくこのファーストアルバムにたどり着くわけね。すでに名盤の誉れ高いので、私が今更追加することはないですが、劇的なこの「Children Of The Earth」(歌はクリス)はもちろん、ティノの塩辛ヴォイスも似合うハードな「Panic In The Streets」や、Steve Caroll(Gt)の歌うオープニングの「Cheated」の爽快さ……やはり良いですな。

                                                               

 そうそう、私がスルーしちゃいけないのは2曲目よ。はいはい、The Kinks「All Day And All Of The Night」のハードなカヴァーです。この曲も「You Really Got Me」あたりと同様、“みんな大好き”でね、のちに(1987年)ロンドン・パンクの長老(?)The Stranglersがカヴァーしてシングルヒットさせてますね。Praying Mantisのヴァージョンは、オリジナルに対し割と忠実な(生真面目な?)カヴァー、かな。パンクからメタルまでみんなに敬われるキンクスがやっぱり偉い!……じゃなくて。Praying Mantisですが、メンバーチェンジを経ながらもトロイ兄弟はロックし続けているわけでして、偉い!

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どんぱす今日の御膳289

289

Stormwind「War Of Troy」『REFLECTIONS』(2001)

 この辺でメタルをいっとかないとね。昔懐かしいStormwindなんて言うと悪いけど、もう20年も前の曲だからねえ。この曲に出くわしたのは、伊藤政則氏のTV番組『ROCK CITY』の新譜紹介CMコーナー“Ship of This Week”でした。(MVですらなかったのだ。)

 ほんの数十秒、流れただけのメロディックパワーメタルに興味をひかれ、名前をメモして後日CD屋へ走る健気な吾輩。買ったらまずライナーノーツをよく読む。なんか、ギタリスト(Thomas Wolf)が空手のチャンピオンだったとかも出てきました。

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 そろそろ再生するかってんで聴くと、第一のポイントはやはりこの強力なヴォーカル。Thomas Vikströmはオペラ歌手でもあるそうで、発声からしてそこら辺の連中とは格が違いました。(もっとも彼の実力は、「War Of Troy」よりも、後年の「Touch The Flames」とかの方が分かり易いですけど。)NHK・BSの『AMAZING VOICE 驚異の歌声』にも出たってんで、有名かな?

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 それから、このバンドのレヴェルを上げてるもう一人の立役者はドラマーのPatrick Johansson。この人もまじで腕利き。突撃系パワーメタルはもちろん、多彩なフレーズを柔軟に叩き分け、それでいて“ヤワ”にはならない硬質さもあるという、理想的メタルドラマー。凄すぎて、この後割と早くにイングヴェイに引き抜かれちゃいました。さらにそのあとインペリテリのトコにも寄り付いたっていうのがイイ。匠は匠を知る!

 

 出会いの作品ゆえ『REFLECTIONS』が大好きな私ですが、世評はなぜかそこまででもない。(この後の作品がより「良くなった」と言われるせいかも。)でもさ、「The Man Behind the Iron Mask」とか「Reflections」のテンポ・チェンジを含む面白さとか、「Queen for Nine Days」とか「Assassin Of Honor」のアグレッシヴな突撃感とか、いいじゃないかあ、ねえ。主宰人の空手トーマスは今何してるのかわかりませんが、またこういうジャンルで作品を出してほしいものよ。

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どんぱす今日の御膳271

271

Iron Maiden「Gangland」(『THE NUMBER OF THE BEAST1982)

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 アイアン・メイデンは名曲・名盤数知れずですけど、これ、どうですかね?あんまりライヴでやってないみたいだし、ベスト盤とかにも入ってこないやつ。

 スティーヴ・ハリスらしくない高速シャッフル……なのはそれもそのはず、『THE NUMBER OF THE BEAST(1982)の9曲のうち、ハリスの手が入っていない唯一の曲なんだね(Adrian Smith+Clive Burrの曲。クライヴが作曲に関わってるのはレアではないかい!?)。

 この曲は、他と雰囲気が違って、いわゆるNWOBHMのテイストが強い(言い換えると、個性が足りないのかもしれぬが)ように思えますね。 そういえば、同じタイトル「Gangland」のスピードナンバーをTygers Of Pan Tangが持ってるよね(これまた名盤『SPELLBOUND』の1曲目)。もちろん別の曲だけど、雰囲気は近いなあ。

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 Iron Maidenはだれがどう考えてもSteve Harrisのバンドだし、彼のコンポジションに絶対的個性があったからHM史……どころかロックの歴史に名を刻む偉大なバンドになったわけだけど、時には彼の手にならない――多くの場合よりストレートでキャッチーだったりする――楽曲がアクセントとなって、いっそう複雑かつ立体的な像が構築されるわけですよね。(自分が「2 Minutes To Midnight」(Dickenson/Smith)好きだから言うわけじゃないですが。)

 そこへ加えて彼らはステージでもハイパーで追随を許さないんだから、HM天下一の座がいつまでも彼らのものであるのも当然なのよね。ただただスゴイです。