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Avenger「Death Race 2000」『BLOOD SPORTS』(1984)
前回何の気なしに(というか無根拠に)NWOBHMなるワードを出してしまったので、今回は正真正銘NWOBHMのバンドを出しましょうか。Avenger。といっても、本ファーストアルバムが出たのが84年ですから、ムーヴメントの中では後発組になりますね。(ただし、活動はもっと早くからやっていたようですけど。)
音を聴いたら、というか歌を聴いたら、何かと通じるものを感じることでしょう。そう、このヴォーカル、Brian Ross(Satan、Blitzkrieg)っぽくないですか? それもそのはず、このシンガーIan Swiftは初期Satanに居たことがあり(『INTO THE FIRE』デモで歌っている)、そのころAvengerでデモを録ったBrian Rossがその後トレードでSatanに入り名盤『COURT IN THE ACT』を製作する……という不思議な因縁もあるのです。歌い方も心なしか似てるわけよ。
Avenverは、Satanに比べればストレートな曲が多く、捻りがないのは物足りない(といえなくもない)ですが、例えばこの「Death Race 2000」など突撃感はなかなか捨てがたい。「Warfare」で歌い上げるIanはなかなか堂々としているし、8曲目「Enforcer」は、確実にあのスウェーデンのNWOTHMバンドEnforcerの命名の由来になったんじゃないかと勝手に睨んでいるのですが。❨どっかにバンド名の由来説明がありましたかねえ?)
録音があまり高クオリティでなく、音がややカルめに聞こえてしまうのだけが残念。
そして私がこのバンドを「信頼に足る」と認定した根拠は最後に控えているのだ。ラストは何だと思います?「Matriarch」ですよ。Montroseのサードアルバムからのカヴァーっていうところがセンス良い。Sammy Hagar時代じゃなくてBob James時代のロックナンバーを若干の早回し(?)でお届けする心意気よ。
そしてさらに素晴らしいのは、Ian Swiftたちが2014年に至って再集結アルバムを出したことですよ。『THE SLAUGHTER NEVER STOPS』なるアルバムが突如出たもんだから、こっちは半信半疑。おじいちゃん、だいじょうぶ?
“…………なめるな若造め!”とばかりに、アノ感じで歌いまくるイアン、タイトなドラミングでバンドの推進力を担うゲイリー・ヤング(Gary Young)の両翁が、若いギタリストらを従えて正統派メタルの意地を見せる。Satanの復活に刺激を受けた、のかは定かではありませんが、あの時代のヒーローたちが戻ってくれるのは超嬉しい。