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HammerFall「Heeding The Call」『LEGACY OF KINGS』(1998)
前回のElegyは少し早い時期のバンドでしたが、欧州メロディック・メタルを語るのに「この」バンドに触れてこなかったのはまずかったですね。スウェーデンのHammerFallこそ90年代後半からの欧州シーンを盛り上げた大功労者であったわけで。バンドの発端はOscar Dronjak(Gt)とJesper Strömblad(当時In Flames)の“サイド・プロジェクト”だったとのことで、往年の“ジャーマン・メタルをやってみた”ものだったようですが、それが本格的なバンドに進化。
イェスパーはイン・フレイムスに専念するため離れていきますが、代わってオスカーと共にバンドの中心になるのがリードヴォーカルになったJoacim Cansでした。オスカーとヨアキムのメタル愛は強烈で、彼らの信念には全く敬服しますね。加えて初期作品でプロデュースやミキシングを手掛けたFredrik Nordströmや、バンドは離れたものの楽曲提供で貢献したJesper Strömbladなど、スウェーデンのメタル野郎どもの共同作業でこのジャンルが(80年代末のジャーマン・メタル・ブーム以来)息を吹き返したってのはイイ話ですよね。
私が最初に聴いた彼らの曲は「The Dragon Lies Bleeding」でした。ファーストアルバム『GLORY TO THE BRAVE』の冒頭に入っている曲……ですが、実はオリジナルアルバムで聴いたのではなかった。ビクターエンタテインメントから出た日本独自編集のコンピ『METAL ATTITUDE』に入っていたのよ。この盤には若い頃たいへんお世話になりましたわ。Rhapsody・Blind Guardian・Gamma Ray・Angra・Stratovarius・HammerFall・Kamelot・Edguy・Vision Divineの活きのいい曲がてんこ盛り。そう、ここ数日私が書き散らしている欧州メタルにそもそも出くわした、そもそもの“元ネタ”がこれだったわけね。だから編集盤は重要なのよ。
ただ、この並びだとより分かっちゃうのですが(周りがテクニカルすぎるw)、デビュー当時のハンマーフォールは「上手い!」で売ってるバンドではなかったですね。熱情と突進力で勝負ってとこで、もちろんそれが愛らしいわけですが。「The Dragon Lies Bleeding」は好きで繰り返し聞いてましたけど、いまの耳で確かめると、ヨアキムのヴォーカルはまだ「わかい」ですよね。音の録り方もあるのかもしれませんが、忙しいラインを歌うのに「息継ぎの音」がすんごく入ってて、ちょっときつそうだったり……
しばらくはこの1曲しか持ってなかったんですが、ある年の私の誕生日に弟が『GLORY TO THE BRAVE』をプレゼントしてくれまして――「くれ!」って言ってたわけではないんですよ。サプライズ的に渡してくれたのです――、ついにフルで聴けることになったのです。ちなみにその時弟は、1stを貰えて私が「すげえ、有難う!」と喜んでいると、「まだあるよ」といって2ndの『LEGACY OF KINGS』を手渡してきたのでさらにビックリ。「うおお、かたじけない!2枚も!」……私が大喜びでセカンドアルバムのライナーノーツを取り出して読んでいると弟君、「ふっふっふ、甘い、まだあるのだ!」といってなんと当時の最新アルバム『RENEGADE』まで贈ってくれたのでありました。いやあ、今思い出してもありがたいし嬉しいね。後日お返しに彼のお気に入りだったChildren Of BodomのLive DVDをプレゼントしましたけど、その程度じゃあのサプライズの恩(?)には報いきれてないなあ。話がバンドからそれてしまいましたが、そういうサイド話でも私的メタル史上印象に残っているのがHammerFallなんです。
というわけで初期3作品はどれも好きでよく聴きましたが、中でもセカンドアルバムは歌や演奏もこなれてきているし楽曲の方向性も定まってて、愛聴盤になりましたね。冒頭の「Heeding The Call」はお得意のスピードナンバーですが、キャッチーなサビや程よいアクセントを生むブレイクが心地よい。ギターソロパートが「長い」(笑)のもこのジャンルではお約束で、微笑ましい。あんまり言及されていないようですが、Patrik Räflingのドラミングもしなやかで良いね。(ハンマーフォールは初期、ドラマーがけっこう入れ替わっていて、クレジットもよくわからないことがあるのですが……セカンドはパトリックで間違いない、よね?)
セカンドアルバムが好きな理由はさっき書きましたが、楽曲の粒がそろってる上に、当時の“疾走ナンバー好き”の吾輩にガツンと来たんですよね。タイトル曲「Legacy Of Kings」でしょ、「Dreamland」でしょ、Pretty Maidsのカヴァー「Back To Back」でしょ、「Warriors Of Faith」でしょ……一方で表現の幅も広げてきてて、ドラマティックなスローナンバー「Remember Yesterday」、ピアノ入りバラード「The Fallen One」、アルバムに1曲は入る(?)勇壮な“ハンマー”ソング「Let The Hammer Fall」も楽しめる。当時CDウォークマンにぶち込まれる率No.1だった気がするなあ。外でも聴きたかったのだ。
後年彼らがRiotへのトリビュートで「Flight Of The Warrior」のカヴァーをやったことで確信しましたけど、彼らの流儀――特にギター部門――のルーツの1つにライオットがあるようだということも、個人的に好感を抱いた要素だったといえるかも。
そして何より素晴らしいのは、彼らがさらにパワーアップしながら継続し続けていること。かつては“よわい?”とさえ言われたヨアキムですが、今やタフで信頼できるヴォーカリストとなっていますし、何より一貫したメタル愛(ヨアキムはメタルの先達への敬愛も隠しませんよね)が素敵ですね。創始者オスカー・ドロニャックも然りです。メタルバンドの常でメンバーの入れ替わりや出戻りも多いですが、王道的ヘヴィーメタルの美学を体現しているハンマーフォールは、やはり凄いですよね。