DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳398 Phoenix

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PhoenixDrowning in Tears『PHOENIX』(1976)

 前回と関連のあるところを今のうちに。元ArgentのJohn Verity(Vo, Gt)+Jim Rodford(Ba)+Bob Henrit(Dr)によるハードロックトリオ、Phoenixです。単に「アージェントから鍵盤を取り去ったサウンド」というのではなくて、ロックトリオならではのテンションととテクニックが味わえるのが良いところ。前回も申したと思いますが、私はThe Kinksでのジムとボブから先に聴いていたので、彼らの手数足数の多いテクニカルプレイは新鮮!でありました。

Phoenix, セカンダリ, 2/7

 

 このデビューアルバムは、3人の新バンドへの気迫が強く感じられる意欲作。トリオのハードロックではあるのですが、ストレートなナンバー(Try A Little Rock‘N’ RollだとかI’ll Be Goneだとか)だけでなく、怪しげなファンキービートのMississippi Neckbone(ちょっとHerbie HancockのChameleonを思い出しました……)だとかメロウな長尺バラードA Woman Like Youだとか、一筋縄でいかない楽曲を同居させているのがなんというかさすがだなと。

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 中でも今回取り上げますDrowning in Tearsは面白い。鍵盤(クレジットによるとジムが弾いている?)入りの、浮遊感と躍動感の交錯するプログレ・ナンバーなのです。最初期のJourneyっぽいような、それでいてもっとウェットなような……エレクトリックピアノ(ですか?)のサウンドの雰囲気や手数の多いドラムなんかは、同時期に活動してたAutomatic Man(バイエテとマイケル・シュリーヴの)とも相通じるようでもあります。 続くFrom The Ashesがメロトロン入りの静謐なナンバーであることと併せても、さすが歴戦の巧者たちによる作品だなと唸らされます。うん、やはり「プログレ」ですねこれは(いい意味で)。……と、ここまで書いて作曲クレジットを見ましたら、Drowning in TearsとMississippi Neckboneの二曲はJim Rodford作となってました。From The AshesはJohn Verity作ですが、本アルバムにおける“プログレ度を上げている”のはジムだったことが判明。ちょっと意外(?)でした。キンクスのイメージだけで語ってはいけない、ということなんでしょうね。

 

 何の気なしに「フェニックス バンド」で検索してみたら、ジョン・ヴェリティとボブ・ヘンリットを正式メンバーとするPhoenixのオフィシャルサイトが見つかりました。そこの記載からすると、フェニックスは2000年代に「甦った」ようなのですが、今も羽搏いているのでしょうか。ちなみに、故Jim Rodfordのほか同サイトで「ゲスト・アーティスト」として紹介されているのは、ベーシストのMark Grifiths、Bob Skeat、そしてキーボーディストのIan Gibbons。うおお、イアンもキンクス人脈じゃないですか。

 

 というわけで、楽曲の面白さとクオリティ、在籍メンバーのかかわりからしても、キンクス・ファンはゼッタイにスルー出来ないのがPhoenixだということが確認でき(てしまっ)たのでありました。セカンドアルバムの『IN FULL VIEW』(1979)、発掘音源らしい『OUT OF THE SUN』(2021)などもチェックしないといけませんね……

どんぱす今日の御膳397 Argent

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Argent「The Fakir」(1973)

 ちょっと変則的ですが、アルバムに入っていない曲のご紹介。ロッド・アージェントが率い、ラス・バラードが名曲を量産した名バンド、Argentの“ライヴ・オンリー”の演奏です。あまり大きな声では言えませんが、私はコレ、あやしいライヴアルバム(たぶん正規盤ではない……)で初めて聴きました。あとでウェブで調べたところ、どうやら1973年の『IN DEEP』期のライヴ記録だということで……ということは、メンバーはRod Argent(Key)・Russ Ballard(Vo, Gt)・Jim Rodford(Ba)・Robert Henrit(Dr)ですね。ロッドフォードとヘンリットは後年キンクスに加入します(私はむしろそちらで先に彼らを知りました。90年代のライヴ盤『TO THE BONE』がすごくイイのは彼らの頑張りも大きいよね)。

 

 ヒット曲を量産と言いましたが、『IN DEEP』God Gave Rock and Roll To YouKissにも取り上げられましたし、前のアルバム『ALL TOGETHTER NOW』Hold Your Head Upも(Uriah Heepのカヴァーが個人的に好きですが)いろいろな人に歌われるクラシックに。他にもLiarThree Dog Nightのヒット)など、枚挙にいとま有りません。で、これらは比較的ポップで美しいセンスが要なわけですが、ライヴアルバムを聴いてみると彼らはステージではいわゆる「プログレ」なことをかなりしてたことがわかるんですね。

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 私が初めて買った彼らのCDもライヴ盤『ENCORE』(1974)だったのですが、そこでも結構な長尺曲が入っていました。ロッド・アージェントが様々な鍵盤をこれでもかと使っている(ジャケットやブックレットに見えます)のが微笑ましい……私はそういうのが好きなんですが、世間のロック通の皆様からはあまり評判芳しくないようなのがまたなんとも。ウェブで見たのか先のCDのブックレット(日本の評論家の方が書いてた解説)だったのかちょっと記憶があいまいですが、「無理にキース・エマーソンみたいになろうとしている」的な“厳しい評価”(一方で皆さんたいていラスを絶賛する……いや、わかりますけど)を目にして「そうなのか……」と複雑な気持ちになりました。まあ、ロッドフォードとヘンリットの「リズム隊が一番好き」っていう変人の私にはどっちでもいいんですけど(笑)。

 

 閑話休題。で、問題がこの曲「The Fakir」なんですよ。“This is an Indian thing called the Fakir”という説明(?)からドラム・パーカッションのソロが始まる。うねるベースが非ヨーロッパ的フレーズを奏で始めると、ロッドの鍵盤(モーグとかですかね?)が入ってくる。いったん静まって「終わったの?」と思うと、今度は鍵盤がメロトロンに替わって延々と演奏が続く……。あ、インストゥルメンタルです。

 中盤にはヘンリットのドラムソロが挿し込まれ、終盤でメインテーマをリプライズして終わり。10分以上の熱演というか怪演。なにがスゴイって、バンドのスターである(べき)リードヴォーカリスト兼リードギタリストのラス・バラードの陰がひどく薄いことなんですよ。

 

 ちょっと調べてみますと、オリジナル(?)に当たるのはどうやらCal Tjader(ジャズのヴィブラフォン奏者)のアルバム『SEVERAL SHADES OF JADE』(1963)に入っているThe Fakirという曲のようですね。このアルバムは、映画音楽でも有名なラロ・シフリンがアレンジを担当(一部は作曲)したのだそうで……。ちなみに、fakirという言葉もちょいとだけ調べると、(イスラム教・バラモン教などの)“行者”とのことですが、Calのオリジナルの音のイメージからすると「インド」というよりは「中東」っぽい気がしますね。そのオリジナルは3分ちょっとで、もちろんヴィヴラフォンが活躍するわけですが、Argentはこれをヘンリットのパーカッションとアージェントのシンセサイザーで置き換えて尺を引き延ばしているわけです。プログレ!

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 オタク話をもうちょい。これもいま付け焼刃で探したんですが、The Fakirという曲をカヴァーしたロックバンドはほかにも(少し前に)いて、英国のやはりプログレバンドPaladinが1971年のアルバム『PALADIN』に入れています。パラディンはセカンドアルバムしか持ってないから知りませんでした、不覚でした……。

 これも(慌てて)聴いてみると雰囲気は元のに近いですが、5分弱とちょっと長くなってますね。メンバーのセンスなのかプロデューサー(フィラモア・リンカーン)の仕掛けなのか……。Argentはこっちのヴァージョンにインスパイアされてた可能性も否定はできませんね。

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 さて結局この曲は、Argentのどのアルバムにも入らなかったようです。(さきほどの方々の言葉を借りれば“ELPもどき”ってことになっちゃうのかもしれません……。ラスの見せ場もあんまりないし、ポップさは皆無だし。)

 でもね、“変人”に言わせてもらえれば、こんな面白い曲が埋もれてたのかと驚くべきところなんですよ。あと、(これで3度目でしつこいですけどごめんなさい)ヘンリット&ロッドフォードのリズムセクションがいかに強靭かってことが心ゆくまで味わえるのは貴重そのものなんです。

<最後はオマケ↓>

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どんぱす今日の御膳396 Wild Horses

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Wild Horses「Dealer」『WILD HORSES(The First Album)』(1980)

 午年ってことで「うま」にちなんだバンド(?)。

 いえ、実は年明けにThin Lizzyブーム(私的)が来てまして、その流れで聴き直したのがこのアルバムでした。ずいぶん前に買って聴いてはいたんですが、これまではあんまり印象に残ってなかった。でも今回、シン・リジィでのBrian Robertsonの貢献を堪能したうえで――ついでにいうと、Motörhead『ANOTHER PERFECT DAY』もあらためて聴いた後で――聴き直してみるとこれがもう最高で!

The First Album, プライマリ, 1/8

 バンドは、Brian Robertson(Gt, Vo)・Jimmy Bain(Ba, Vo)・Neil Carter(Gt, Key)・Clive Edwards(Dr)ですね。スーパーバンド。プロデュースがTrevor Rabin(Yes加入前)っていうのも地味に貴重。これまたこないだ手に入れた書籍『シン・リジィ ジェイルブレイク・サーガ~フィルとジョンの魂に捧ぐ』(シンコーミュージック刊)によるとWild Horsesは名実ともにThin Lizzyの〈兄弟バンド〉だったそうで、今回の注目曲「Dealer」はブライアンがThin Lizzy在籍中にScott Gorhamと共作していたもののお蔵入りしていたナンバーなんだそうです。

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 その「Dealer」は、カラッとした躍動感がアメリカンな感じを醸し出しつつ、ジミーの(いい意味で)煮え切らないようなヴォーカルがウェットな味わいを加え、メロディアスなツインリードがバッチリ決まるっていう、爽快なナンバー。この“英米混合感”、私の好きなRiotの初期(1st『ROCK CITY』)っぽさがあってお気に入り。まあ、発表時代こそこちらが後ですが、Mark RealeがThin Lizzyの影響を受けてたことは明らかなので、“Riotって、やっぱりLizzyっぽかったんだなあ”ってことになりますかね。

 

 中心人物のロボとジミーが輝いてるのはいうまでもないんですが、もう一人のギタリストであるニールのバックアップも素晴らしい。さすが、この後にGary Mooreの懐刀になるだけのことはあります。そして、ドラムおたくとして聴き逃せないのが、Clive Edwardsのドラミング。楽曲を邪魔せず、ここぞというときだけ必殺のタム回しをキメる、ツボをおさえたプレイが素敵です。特にこのタムの「音」は個性的で、業界広しといえど彼しかこういう乾いた音は出していなかった気がする。音程が感じられる(いわば)メロディアスなプレイです。

 彼のプレイが気になる人は、Uli Jon RothのElectric Sunの1st『ELECTRIC SUN』(1979)もチェックしてください!Wild Horsesに入る直前期のプレイということになりますが、あの個性的タム回しが随所で聴けますぜ!

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 今回はこんなところかな。Wild Horsesのボックスセットも出てるみたいで、それも気になりますよね。

どんぱす今日の御膳395 Eloy

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Eloy「Poseidon’s Creation」『OCEAN』(1977)

 やたらとドラマーに言及する(たいてい礼賛している)当ブログ。今回の主役はJürgen Rosenthal(ユルゲン・ローゼンタール)さんです。

 

 まずね、YouTubeに出てる動画で初期Scorpionsをぽつぽつ観てたんですよ。「ああ、これは左利きだからRudy Lennersだなあ」とかね。で、「73年の映像」ってのがあったから、半信半疑で(そんな古い映像がちゃんと残ってると思えなかった)再生してみたら、「あ、これもしかしてユルゲンさん時代じゃないの?」。画質はやや粗いですが、ときどきドラマーにもフォーカスするので目を凝らしてみてみたら、一つ発見しました。……彼は右足でバスドラムを踏んでいますが、スネアドラムは右手で、ハイハットは左手で叩いている!「ユルゲン・ローゼンタールはオープンハンド奏法」だったのですね。

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 まあ、それが何?という人も多いかもしれませんが、両手が交差しないので合理的に叩ける半面(たいてい)効き手の関係で“難しい”のですよね。私もできません。あくまで一般論ですが、コレで叩いてる人はテクニカルな印象が。サイモン・フィリップスとかボビー・ジャーゾンベクとかね。

 

 「They Need a Million」とかを聴いてみてほしいのですが、初期Scorpionsでプレイしていたユルゲンのプレイを音だけ聴いてた時は、テクニカルな小技というよりは粒のそろったアタックの強いフィルインに耳が行っていたので、これはちょっと意外でした。

Ocean, プライマリ, 1/9

 そう気づいてみると、「じゃあ、後に加入したEloyでもオープンハンドだったんだよね?」と気になりやはりYouTubeで探してみると、出てきました。この『OCEAN』からの作品に関与して在籍していた頃と思しいライヴの映像。当然というか、やはりオープンで、より複雑なプレイをしてました(Eloyはシンフォニックなプログレッシヴロックですので)。というわけで、ユルゲン・ローゼンタールのプレイスタイルを解明しましたよ?どうです、この発見?

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 『蠍団大全 スコーピオンズ50年史』(シンコーミュージック刊)を読むと、“ユルゲンは兵役に就くためいったんバンドを離れた、その間にルディ・レナーズが加入を果たしたため、兵役後に戻ってきたユルゲンは(スコーピオンズへの再加入を申し出たそうですが)バンドには戻れなかった”のだそうです。まあ、これは誰のせいでもないから仕方ないですけど、ユルゲンとウリ(Uli Jon Roth)の絡みとかはもうちょっと見てみたかったというか聴いてみたかった気がしますね。

 といいますのも、ユルゲン先生もなかなかアーティスティックな方らしく、今回取り上げたEloy『OCEAN』の「全ての歌詞を手掛けている」からです。これは知らなかった……アルバム全体が彼の構想したコンセプトにのっとっているというんだから凄い。物語を作れるドラマーはなにもNeil Peart(Rush)だけじゃなかったのだ!

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 『OCEAN』アルバムは、「Poseidon’s Creation」が12分弱、そのほかの曲も8分半くらいのが2曲にラストは16分弱の大作と、全4曲の長尺エピック祭り。Frank Bornemannのヴォーカルやギターも熱さがあるし、Detlev Schmidtchenの駆使する鍵盤も浮遊感や未来感を演出しますが、ユルゲンとKlaus-Peter Matziol(Ba)の変幻自在のリズムがすごすぎる。だけじゃなくて、ユルゲンは“drums, timbales, rototom, temple blocks, kettledrums, tubular bells, Morse key, triangle, flute, paper sounds, voices”を担当ってんだから、もう支配人だよね。ユルゲン在籍時のほかの作品『DAWN』『LIVE』『SILENT CRIES AND MIGHTY ECHOES』もむちゃくちゃ聴きたくなってきましたよ。なかなか手に入りそうにないですけどね……

どんぱす今日の御膳394 Jethro Tull

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Jethro Tull「No Lullaby」『HEAVY HORSES』1978)

 午年シリーズ第2弾。今度はアルバムタイトルが『逞しい馬』。フォーク色強めのプログレッシヴロックでいかがですか。

Heavy Horses, プライマリ, 1/13

 名バンドJethro Tull……といっても、私もキャリア全体をきっちり押さえているわけではないのですが、つまみ食い的に聴いても「イイ」曲が山ほどあって困りますよね(別に困らない)。

 この「No Lullaby」は8分弱ある長尺ですが起伏に富んでいて、Ian Andersonのフルートも名手John Glascockのベースも堪能できるのですが……一番の聴きどころはやっぱりドラムなのよ。Barriemore Barlow先生のダイナミズムにあふれつつテクニカルなドラムにもう降参。間を活かしたジャジーなパートもあれば、金物の細かな鳴りを聴かせるプログレッシヴなパートも、疾走するメタリックなパートもある……どうやったらこんな風に叩けるんですかあ。

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 しかも、スタジオだけの技かと思ったら、ライヴアルバム『BURSTING LIVE』でも完全再現……どころかもっとアグレッシヴに迫るんだからたまらん。ライヴヴァージョンでは、Martin BarreのギターとJohn Glascockのベースとの絡みがよりタイトになっていて、ものすごい迫力。というか、私は先にそっちのライヴヴァージョンを聴いて、バリモア先生に平伏することにしていたのだった。(バリモア・バーロウの名前は、Yngwie Malmsteen『RISING FORCE』(1984)やKerry Livgren『SEEDS OF CHANGE』1980)で見かけていましたが、ここまで「凄い!」とは気づいていなかった……。あ、イングヴェイやケリーとの仕事でも素晴らしいプレイを残していますよもちろん。私がぼーっとしてただけで。)

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 「No Lullaby」の歌詞については、理解がうまく追いつきませんけど。(教えてください……)“It’s as well we tell no lie, so I’ll sing no lullaby.”ってどういうことなんすかね。子供に世の中の厳しさをおしえる(あえての)「反-子守唄」だというような解釈があるようですがいかに。(イアンが書きそうな皮肉、としては腑に落ちますが。)

 それにしても、Jethro Tullっておもしろくて、むずかしくて、楽しいねえ。