DON'T PASS MUSIC BY

"But holy men and kings would die in the year Twenty Twenty-five......"<Satan>

温故知新旧稿再録(4)「ハードロック前史」(中篇)

 さて、中篇です。今回は割と「テクニカルな」ロックの先駆者を挙げた感じになってますね。

--------
(4)King Crimson21st Century Schizoid Man(edit)」IN THE COURT OF THE CRIMSON KING』(1969)

 プログレッシヴロック界の最重要バンド。1969年のこのデビュー作が、The BeatlesABBEY ROADをあるチャートで蹴落とした、という逸話が有名。バンドの歴史は長く、時代ごとに傑作を残しているが、オリジナルラインナップによる作品はこれ一枚のみ。組曲形式の壮大な曲あり、メロトロンを用いた叙情的な曲あり、とヴァリエーションに富む。今なおプログレの名盤といわれる所以は、彼らの演奏能力の高さに裏打ちされ、音楽的アイディアの数々が見事に具現化しているからであろう。

 
そのアルバムの一曲目が、邦題「21世紀の精神異常者」(注1)という曲である。詩人Pete Sinfieldによるとらえどころのない不可思議な歌詞、エフェクトがかけられ歪んだヴォーカル、めまぐるしいリズムチェンジ、耳に残るギターリフ、中間部のサックスとギターのソロ……「衝撃的な」というに相応しい。バンド(というかリーダーのRobert Fripp)のフェイヴァリットであるらしく、時代が変わりラインナップが変わっても、この曲は必ずライヴで演奏されている。まさに原点、ということだろう。
イメージ 1
 
 この曲のカヴァーもいくつかある。カナダのハードロックバンドApril Wineがライヴでよくやっていた他、変わったところでは、日本の俳優西村雅彦が出した唯一のアルバムDECO』にも収録されている。西村氏のエフェクト付ヴォーカルは不気味でなかなかよい。尚、オリジナル版は7分以上あるため、ここでは間奏を短めに編集したエディット版を紹介している。(注2)
 
(5)Jimi HendrixFire」ARE YOU EXPERIENCED?』(1967)
Jimi Hendrixは、今なお「ギターの天才」「ギターの革命児」と呼ばれ続けている人物。決して長くはないキャリアの中で、多くの傑作を残している。もともとはアメリカ出身だが、渡英しイギリスでデビューした。彼の真価にいちはやく気付いたThe WhoPete Townshendは友人Eric Claptonにこう言ったという。「大変だ、俺たちはこれで失業する。」


事実Hendrixの活躍は目覚しく、有名なウッドストックでのコンサートではトリをつとめるに至っている。一方で彼も、イギリスのバンドからの影響を受けている。彼の組んだユニットで最も有名なのがJimi Hendrix Experienceであるが、この「トリオ形態」は後述するCreamに影響を受けたものだったという。HendrixCreamフリークぶりは徹底していた。あるライヴ(テレビ収録されていた)で、いきなりオリジナル曲の演奏をやめ、「こんなつまらない曲はやめて、この曲をCreamに捧げよう」というなりCreamの「Sunshine Of Your Love」を演奏し始めたのである。(注3)
イメージ 2
 
そういったJimi Hendrix Experienceのパワー・トリオの醍醐味が存分に味わえるのがこの曲「Fire」だ。疾走感のあるギターリフに、手数の多いドラム、間を埋めるランニングベース……三人が音の格闘をしているようなスタイルは、Creamと並んで彼らがつくり上げたものだった。
 
(6)CreamCrossroads」『WHEELS OF FIRE(1968)
Eric ClaptonJack BruceGinger BakerからなるCreamは、ブルーズロックバンドとして出発した。当時イギリスではブルーズロックはメジャーな音楽であり、他のバンド同様彼らもデビューアルバム収録曲の多くはブルーズのカヴァーであった。但し彼らの場合、それを大音量でやったということ点に特徴があった。


特にライヴは凄まじかったらしく、三人の生み出す轟音は、それまでのロックになかったインパクトをもたらしたという。二枚目からはJack(彼はメインヴォーカリスト)とパートナーの詩人Pete Brownのコンビによるオリジナル曲が目立つようになり、「Sunshine Of Your Love」「White Room」などの名曲も生まれている。しかし各メンバーの性格的不一致などを理由に、Creamは二年余りで解散している。Creamの提示した「大音量によるロック」は、Led Zeppelinらに受け継がれ、70年代にはハードロックというジャンルが確立されるに至る。
イメージ 3
 
Crossroadsは、もともとアメリカのブルーズマンRobert Johnsonの曲である。オリジナルとして残っているのは1930年ごろの録音で、Claptonが聞いたのもこの音源のはずである。オリジナルはアコースティックギター一本による弾き語りであったのを、Creamはギター、ベース、ドラムがバトルするようなアグレッシヴなアレンジで演奏した。この曲こそがブルーズロックからハードロックが生まれる過程そのものであるといえよう。中間部のひたすら長いギターソロも後のハードロック的なものを感じさせるが、実は当人に言わせると「バンドにリーダーがいなかったんで、止めるきっかけがなかった」だけだという。なお、この曲はEric Claptonがリードヴォーカルをとっている。
<中篇終わり>

----------

(注1)現在では「21世紀のスキッツォイド・マン」という邦題で呼ぶことになっている様です。
(注2)King CrimsonSCHIZOID MAN』(1996)という、「21世紀の~」のヴァージョン違いを5つ集めたCDに入っているテイク。ちなみにこの作品が、筆者が初めて買ったキング・クリムゾンの作品でございました。
(注3)『STRANGE BREWという、クリームのドキュメンタリー・ビデオ(私はVHSで入手しました)の中でこの「クリームをやるジミヘン」が観られます。
-------
 しかし、私の好きな音楽ってあんまり変わっていないんですかね。ちょっとは「嗜好の幅が広がった!」かと思っていたんですが、やはりこの辺がいまだに大好物。