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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

時代の産物を追う?(17)

GirlschoolGUILTY AS SINUK2015
1. Come The Revolution
2. Take It Like A Band
3. Guilty As Sin
4. Treasure
5. Awkward Position
6. Staying Alive
7. Perfect Storm
8. Painful
9. Night Before
10. Everybody Loves (Saturday Night)
11. Coming Your Way
12. Tonight
メンバー
 Kim McAuliffeVo, Gt
 Jackie ChambersGt, Cho
 Enid WilliamsVo, Ba
 Denise DufortDr
 +Chris TsangaridesProduce
 
イメージ 1

 

 メンバーの確認。まず、オリジナルのキムとデニス。2000年に前任のTracy Lamb(元Rock Goddess)の脱退を受け復帰したエニッド(イーニッド)・ウィリアムズ。そして、1999年に(再)脱退したケリー・ジョンソンの跡を継いでリードギタリストとなったジャッキー・チェンバース。即ちこのラインナップはもう15年来のものということです。あと、プロデューサーが、先年亡くなったChris Tsangarides。(Anthem柴田直人さんの『自伝』に、この人との思い出が語られていましたね。)やはりさすがの名手で、Girlschoolのこのアルバムも見事に仕上げております。バンドのオフィシャルHPにはメンバーとクリスが一緒に写った写真なんかもありました。
 
 アルバムは、Bee Geesのカヴァー(!)「Staying Alive」とトラディショナル・ソングという「Everybody LovesSaturday Night)」を除き、バンドによるオリジナル。あ、「Tonight」は初期シングル曲(1981年)のリメイク、「Coming Your Way」は旧作からの再収録ね。
 
Girlschoolは大体いつもアルバム1曲目に王道のハードロッキン・ソングを配してきますが、「Come The Revolution」も同様。シンプルなミドルの中に、キャッチーなコーラス、ブルージーなギター・ソロ、パワフルなバスドラワーク……が詰め込まれた「いかにも!」な一曲。リード・ヴォーカルはエニッドですが、この人は本当にいい声してる。バンド初期もこの人がリードVoを取る曲が多かったようです。
 
続く「Take It Like A Band」は、例えるならVardis風の高速ハード・ブギー。キムがリードVo。シンプルで短い曲ですが、デニス先生のドラミングが堪能出来て私は満足。彼女らの曲は、ゴリゴリの装いをしたものでも必ずキャッチーな(ライヴだったら観衆が歌えるような)フレーズを具えているのが良い。
 
タイトル・トラック「Guilty As Sin」は再びのヘヴィ8ビート。ブルドーザー的、とか言えばいいかな……なんて思って聴いていると、デニスのドラミングは意外にしなやかだったりもするね。プロデューサーのクリスの手腕なんでしょうか、タイコの音がクリアで素晴らしい。“♪I’m in this situation, I’m guilty as sin.”「疑う余地なく有罪」、ってどんなことなんでしょうね。
 
Treasure」はEnid Williams作のこれまた重厚な曲。タムを絡めた重いドラム・フレーズの上にギターリフが乗るAメロから、微かにパンク(というか往年のNirvana?)を感じさせるコード進行となって速度感を出すBメロ、というちょっと彼女らには珍しいタイプ。エニッド入魂の歌唱、その歌詞に“♪We’ve got to treasure the Earth……Foreverthe Earth”とあるあたりも、シリアスな作品の一つかもしれません。
 
5曲目「Awkward Position」(「窮地」?)はたぶん本作中最もゆったりしたテンポの楽曲。スライド・ギターもほんのりいい味付け。あとは、シンプルなラインながらベースが全体を引っ張ってる感じがある(220秒あたりに短いベースソロパート有り)。“♪You put me in this awkward position like so many times before……”などと歌。
 
お次がビージーズのカヴァー。この人たちは(前回のおすすめ曲にも意識的に入れておきましたけど)初期からいろいろなカヴァーを披露してきましたが、今回のこれはけっこう異色なのではないかと。オリジナルが出たのはGirlschoolが始動した1978年でしたから、何らかの思い入れがあるのかな。
いま手元の音源を調べてみたら、Ozzy Osbourneが歌ってるヴァージョンっての迄あって驚きました。Dweezil ZappaのアルバムCONFESSIONS1991年)にオジーがゲスト参加して歌ってるのです。で、そのドゥイージル&ジー版ですらまだディスコ調のところを残していたんですが、Girlschoolは潔くすべてを人力にて演奏。やたら力強いヴァージョンになっております。
 
さて、オリジナルに戻りまして「Perfect Storm」。爽快な疾走感が心地好い。140秒から16秒ほどのリフによるブリッジのフレーズ(220秒過ぎにも出てくる)が良いアクセントになってる。中音域をメインにしたエニッド(だよね?)の歌も芯が強い感じでナイス。
 
シンプルなパターンのエイト「Painful」は、本作中では地味な方かもしれない。録音の妙で、バッキングにすごく奥行きのある感じが出てますね。
 
若干のリラックスモード(?)に聴き手が入りかけたところに、“コラコラ”って感じで入って来る疾走ブギー「Night Before」に目を覚まされる、という仕掛け。作曲にデニスもクレジットされた珍しい曲。2分少し前からのギター・ソロでは珍しくタッピングが聴けます。この部分のギターや、終盤のデニスのツーバスなどは、細かあく聴くと少し「タイミングがジャストでない」のですが、おそらくバンドとクリスの判断で「修正はせず残した」のではないでしょうか。機械的精確さよりも、人力の妙味――それこそさっきのカヴァーに聴けるように――こそ、このグループがこだわってきたものですから。
 
だから、次にトラディショナルの「Everybody LovesSaturday Night)」が来るのも意外に納得できる……かも。もっとも、アレンジはJudas Priest風――「Take On The World」とか「United」みたいな合唱調のね――でヘヴィなんですが。あ、あれか、「Staying Alive」はSATURDAY NIGHT FEVERサウンドトラック)が初出だから、呼応した(?)「土曜日ソング」が入っているのだろうか。
 
Coming Your Way」はCD版ボーナス・トラック(らしい)。ウィリアムズ+チェンバース+マコーリフによる合作。彼女らの王道を示すキャッチーでパワフルな爽快ハードロック。2002年の21st Anniversary: NOT THAT INNOCENTに収められていた曲。
 
最後は(さきほど書きましたが)セルフ・カヴァー。1981年のシングル「Hit & Run」のB面曲で、Motörheadの「Bomber」を彷彿とさせるナンバー。……実は、GirlschoolST. VALENTINES DAY MASSACRE1981年)でMotörheadの「Bomber」をカヴァーしていたのですが、ちょうど同じころになりますね。所謂「インスパイアされた」というところではないでしょうか。2分半ほどで潔く終わる爆走ナンバーで、ライヴでもよく演じられています。
 
「潔い」といえば、このアルバムは全部で40分で完結します。CD時代以降としてはコンパクトなつくり。ですが、物足りない感じはありませんな。匠の技と衰えぬパワーの組み合わせというのはこうまで見事なものかと思い知らされます。初期の「溌剌」、近年の「円熟」ともに素晴らしいGirlschoolを御案内しました。
<完>