(8)Girlschool『GUILTY AS SIN』(UK)
2015年度の作物よりご紹介するシリーズ。前回と番号は前後しますが、偉大なるGirlschoolの新作を聴いておきましょう。
まず、オフィシャルHPを参考にして簡単に歴史を振り返ります。バンドの始まりは、KimMcAuliffe(Gt, Vo)とEnid Williams(Ba, Vo)がPainted Ladyという全員女性のカヴァー・バンドを結成した1975年。彼女ら以外メンバーの入れ替わりはしばしばで、78年にあるメンバーがバンドを離れた折にPainted Ladyは解散します。マコーリフとウィリアムズは昼の仕事を辞めて(ちなみに、銀行とパン屋だったそうで……)音楽の道を進む決意をし、Kelly Johnson(Gt)・Denise Dufort(Dr)をリクルートしてGirlschoolとして再出発しました。バンド名はPaul McCartney & Wingsのシングル「Mull of Kintyre」(77)のB面曲「Girls’School」から採られたというから面白いですね。ちなみに「Girls’School」じたいは、結構ハードロッキンな曲ですよ。
1978年12月に彼女らはファーストシングル「Take It All Away」をリリースします。ラジオでかかったりアンダーグラウンドで流通したりするうちに、これがIan Kilmisterという人の耳の達します。この人がバンドを実際に観に行きまして気に入り、「俺らのサポートをしないか?」と持ち掛けました。“俺ら”とは……1979年春にアルバム『OVERKILL』を引っ提げてツアーすることになっていたMotörheadでございます。(Ianさんはふつう「Lemmy」と呼ばれていましたね。)ツアー後、GirlschoolはBronzeというレーベルと契約を結ぶに至ります。
折しもNWOBHMのムーヴメントが起こりHR/HMバンドには追い風の時代。バンドは熟練のプロデューサーVic Maileとレコーディングに入り、まず1980年6月にデビューアルバム『DEMOLITION』をリリースします。翌月にはUKアルバムチャートで28位に入ったということです。その後も旺盛なツアー活動を続けますが、一つ大きな出来事としてあったのが、Motörheadとの協働でした。両バンドのメンバーが組む形で作られたEP『ST. VALENTINES DAY MASSACRE』(Headgirl名義)は、Johnny Kidd & The Piratesの「Please Don’t Touch」の最高にカッコいいヴァージョンを含む全3曲入り。当時MotörheadのドラマーPhil Taylorがケガでドラムを叩けなかったので、すべてでデニス・デュフォートがプレイしているのですが、硬軟織り交ぜた達者なドラミングは見事です。「Please Don’t Touch」はミュージック・ヴィデオがYoutubeなんかで観られるので是非是非ご覧下さい。リードヴォーカルを分け合うKelly JohnsonとLemmy!……よりも、ギターバトルを決めるFast Eddie ClarkeとKelly Johnson……!よりも、楽曲の屋台骨を支えるDenise & Enid & Kim!よりも……ですね。徒手空拳で踊りながらコーラスマイクのまわりをうろうろするPhil Taylor(モーターヘッドのドラマー)に目がいって仕方がない、楽しい動画でございます。
さて、ヒットとなった上記EPに続いて、Girlschoolとしてはセカンドとなる『HIT AND RUN』がリリースされます(81年4月)。ワールドツアーにも出ますが、この年のハイライトは8月のレディング・フェスティヴァルへの出演でした。Budgieと同日、GillanやRose Tattooの前日、The KinksやWishbone Ashの前々日……って、ホントに豪華だなおい。なんか当時のポスター(?)によると全部で15ポンドくらいで観られたようですよ。
1982年もツアー。Rainbowのサポートなどを行い、来日もこの年に果たしています。しかし、過酷なスケジュールに限界をおぼえたエニッド(イーニッド?)が脱退。後任ベーシストには(モーターヘッドのレミーの推薦により)Gil Westonが入りました。サードアルバム『SCREAMING BLUE MURDER』はそのラインナップで録音され(プロデュースはNigel Gray)、強力なプロモーションも行われましたが、UKアルバムチャートでは27位止まりでした。とはいえ、彼女らのライヴ・アクトとしての強力さは衰え知らずで、Iron MaidenやScorpionsをサポートする形でアメリカのスタジアムをツアーしたのはこの1982年からでした。
……という具合に、長い歴史はまだまだあるのですが、さすがにきりが無いので今回はこの程度で。キムとデニス以外のメンバー・チェンジ、バンドとしての低迷、オリジナルメンバーであったケリーの死、といった諸々を乗り越えて、バンドは長年「現役」であり続けている、ということだけ指摘しておきましょう。しかも彼女らは「むかしの遺産」によりかからず、新作をきっちり出していて、その上そのクオリティが高いのですからまさに天晴れなもの。Youtubeなどで観られる近年の演奏場面にしても、たいへんにエネルギッシュなもので恐れ入ります。私が以前に「尊敬する」と申し上げたのはこの意味においてでありますが、とりわけ凄いのはデニスのドラミング。私自身ちょっとドラムをやるからというせいもありますが、もはや40年選手であるデニス先生の素敵なドラミングには脱帽なのであります。
オリジナルアルバム(と、個人的に好きな=聴いてみて欲しい曲)を挙げときましょうか。
(1)『DEMOLITION』(1980):「Take It All Away」(シングルヴァージョンも良い、初期の名曲)、「Race With The Devil」(Gunのカヴァー)、「Emergency」(Motörheadにもカヴァーされた)、「Nothing To Lose」(ライヴではコール&レスポンスのお約束有り)
(2)『HIT AND RUN』(1981):「C’mon Let’s Go」(デニス大活躍の疾走ナンバー)、「Yeah Right」(サビの“yeah right”がキャッチー)、「Tush」(ZZ Topのカヴァー)
(3)『SCREAMING BLUE MURDER』(1982):「Screaming Blue Murder」(硬質で疾走感有る初期の集大成的楽曲)、「Flesh & Blood」(新機軸)、「Live With Me」(The Rolling Stonesのカヴァー)
(4)『PLAY DIRTY』(1983):「Breaking All The Rules」(重厚に始まり突進モードに変わっていくexcitingな曲)、「20th Century Boy」(T.Rexのカヴァー)
(5)『RUNNING WILD』(1985):(未聴)
(7)『TAKE A BITE』(1988):「Action」(アルバム全体がそうだが、歌がアグレッシヴ)、「Fox On The Run」(Sweetのカヴァー)
(8)『GIRLSCHOOL』(1992):「My Ambition」(硬派な疾走曲)、「Wild At Heart」(抑えめのテンポと歌唱が力強さを倍増)
(9)『21st Anniversary: NOT THAT INNOCENT』(2002):(未聴)
(10)『BELIEVE』(2004):(未聴)
(11)『LEGACY』(2008):「I Spy」(ミドルテンポの威厳ある曲。Ronnie James DioとTony Iommiが参加した別ヴァージョンも素晴らしい)、「Whole New World」(珍しく引っ掛かりの多いリフと歌メロが印象的)、「Don’t Talk To Me」(Lemmyも作曲と歌唱で参加したモーターヘッド流ハードロック)
(12)『GUILTY AS SIN』(2015):次回詳しく!