(3)The Tangent『A SPARK IN THE AETHER: The Music That Died Alone Vol.2』(UK)
前々回この欄で触れましたように、このグループは最近知りました。その切っ掛けとなったのは『PROG』という英国の雑誌の附録コンピCD。
VARIOUS『P33: THE GREAT MARSH』(2015)
1. A Spark In The Aether〔The Tangent〕
2. Tried So Hard〔Gong〕
3. Different Skies(Excerpt)Every Day The Orbit〔M-Opus〕
4. Hatesong/Halo〔Gavin Harrison〕
5. Love Burns〔Von Hertzen Brothers〕
6. Out Of Mind〔Sanguine Hum〕
7. Pianoburn〔Rian Adkinson〕
8. Shores Of India(Gentle Version)〔The Gentle Storm〕
9. Kiss From a Glacier〔Special Providence〕
10. On My Own〔The Last Embrace〕
『PROG』は文字通りプログレッシヴ・ロック専門の雑誌で、いろいろ新しいバンドが紹介される一方、大御所のインタビューなんかも載ったりします。大手のレコード店に並んでいるので、アーティストが複数取り上げられていたりすると手に取ることもあるのですが、オマケのCDが毎回なかなか良い。特に私のように「新しいほう」の情報に疎い者には“いま、こういうのが出てきてます”とわかって助かる。もちろん、上のトラック2のようにシレっと大御所Gongが入っていたりするのですがね。
で、何の気なしにこのオマケCDを再生した私。一曲目のタンジェントっていうの、知らないなあ――後で調べたら2002年から活動してたっていうから私の勉強不足もひどいもんでした――なんて思いながら……。
「A Spark In The Aether」。キーボードが淡々と鳴り出すと、サックスが短いフレーズを乗せ、そこから全パートによる壮大なイントロダクションに。0分45秒のあたりからは手数の細かいドラムと太いベースに引っ張られて疾走するテンポとなりまして、1分10秒あたりから歌が始まる、と。簡単に言えばキーボードが全体を覆う爽快プログレ曲ということになりますが、まず歌メロがいいですね。Aメロのところはリード・シンガーの声をはっきり聴かせ、コーラスで盛り上がっていくにつれてちょっとずつ声が重ねられる具合も絶妙、“♪Searching for a spark in the aether”というところの高揚感は素晴らしい……というわけで「こりゃああたりを引いたね」ってなもの。
よくよく聴いてみると、きらびやかなキーボードだけでなく……小技を利かせる躍動的なリズム・セクションや、3分35秒あたりからの後奏でツボをおさえたメロディアスなソロを繰り出すギターも旨い。プログレ巧者の集団でありながら(あるからこその?)ウォームな味わい、それがこの曲の魅力でした。オフィシャルのリリック・ヴィデオもYoutubeなんかで観られますので、ぜひどうぞ。
コンピ『THE GREAT MARSH』は次にGong「Tried So Hard」(1971年の『CAMEMBERT ELECTRIQUE』収録曲)という古典に行ってから、新しいM-Opus(アイルランドのグループとのこと)の「Different Skies(抜粋)」へ。浮遊感のあるメロディアスなプログレの系譜を見せたかと思うと、King Crimson他でいまや大活躍のドラマーGavin Harrisonの「Hatesong/Halo」がリズム捻りの妙味を聴かせ、フィンランドのVon Hertzen Brothersの新作「Love Burns」がドラマティックな歌モノを披露……その後も含めて、なかなか贅沢なオムニバスでありました。
それで、なかでも一番気に入ったThe Tangentっていうのをもっと聴いてみようと思い手を出した新作がさきの曲を含む『A SPARK IN THE AETHER: The Music That Died Alone Vol.2』でございます。
The Tangent『A SPARK IN THE AETHER: The Music That Died Alone Vol.2』(2015)
1. A Spark In The Aether
2. Codpieces& Capes
3. Clearing The Attic
4. Aftereugene
5. The Celluloid Road
6. A Spark In The Aether, Pt. 2
7. San Francisco Radio Edit [bonus]
※全曲Andy Tillison作
※"Aftereugene" inspired by "Careful With That Axe, Eugene" by Pink Floyd.
メンバー
Andy Tillison(Key, Vo)
Jonas Reingold(Ba)
Morgan Ågren(Dr)
Luke Machin(Gt)
Theo Travis(Sax, Flute)
歴史もあるバンドで、オフィシャルサイトも含め情報はたくさん出ているので私はもう触れ(られ)ません。JonasはThe Flower Kingsのベース、Theoの名前はRobert Frippとの仕事とかSteven Wilsonとの仕事とかでちょくちょく見かける。その程度の予備知識しか無かった。
<続くのです>