DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

時代の産物を追う?(2)

 なんで題目に「?」がついているかといいますと、1~7のうちに所謂「新人」がいなかったから……なのですが、ヴェテランの作品が時代の産物でないわけはもちろんないのでありまして、してみると題目自体があまりうまくなかった。

 というなさけない反省はこの程度にして、前回一言ずつしか述べられなかった感想を若干補いたいと思います。恣意的にピックアップしまして……
(4)TC & I 『GREAT ASPIRATIONS』
 1.Scatter Me
 2.Greatness(The Aspiration Song)
 3.Kenny
 4.Comrades Of Pop
<メンバー>
 Terry Chambers(Dr, Perc, Cho)
 Colin Moulding(Gt, Ba, Vo, Key)
 ほか
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 元XTCのColin Moulding(Ba, Vo)が、やはり元XTCのTerry Chambers(Dr)と組んで作った作品。“TC”は“Terry Chambers”の頭文字で、主宰者であるColinは「テリーと俺、でいいや」と考えたとかで“TC & I”というちょっと変わったネーミングになった由。ほのかに“XTC”を思わせるのはイングリッシュ・ユーモアでしょうかね。
 
 XTCの最新作(現時点での最終作)WASP STAR(Apple Venus Volume2)』(2000)以降、Andy Partridgeが様々なミュージシャンと交流しつつ旺盛な創作活動を見せていたのに対し、Colinの方はなかなかオリジナル作を発表することはありませんでした。ピンク・フロイドのトリビュートアルバム『RETURN TO THE DARK SIDE OF THE MOON』に参加したり(「Time」でベースを弾き、「Brain Damage」を歌った)、現行プログレ界の働き者Billy Sherwoodのオール・スター・プロジェクトThe Prog Collective『THE PROG COLLECTIVE』『EPILOGUE』に参加したり(それぞれ「Check Point Karma」・「Are We To Believe」で歌っている)はしていたのですが、何れもあくまでもゲストでしたし、枯れた味わいのヴォイスがプログレ調にマッチしているとは言い難い面もありました。
 
 もうColinはあまり積極的な音楽活動はしないのかな……と思っていたところに現れたのが本作。ウェブ上で得られた情報によれば、早くにXTCを脱退してオーストラリアに住んでいたTerryと久しぶりに(地元で)会ったことで、Colinの制作意欲がかきたてられたのだとか。若き日にリズムセクションを構成していたお互いへのプレイヤーとしての信頼感は不滅で、録音はスムーズに進んだとのことでありました。
 
 1曲目「Scatter Me」はYoutubeで彼らのミュージックヴィデオが観られるので是非ご覧いただきたいと思いますが、これは名曲。ColinもTerryもいまやおじいちゃんですが、渋くてカッコいい。Colinヴォイスはやっぱりこういう“ポップ+ヒネリ”の曲で映えますし、Terryのドラミングも往年のそれを思い出させる“一打一打力のこもった”好プレイ。スネアの粒のそろったフィル・インが最高。Alan Batemanのサックスも良い感じ。
 
 ♪I talk all day of greatness/And people get so tired/It's old fashion to aspire/But I won't wallow in the mireなどと歌われる、跳ねるリズムの軽やかな「Greatness(The Aspiration Song)」。1曲目・2曲目とも、歌詞を聴いてみると、XTC時代より“個人としての感慨”がストレートに表現されている……気がします。
 
 力強いリフとリズムで進む「Kenny」、不思議とダンサブルなこの曲でもテリーのナイスドラミングが堪能できますな。楽曲終盤でかぶさって来るトランペットがエレガントな味わい。
 
 最後の「Comrades Of Pop」は浮遊感のある(?)バッキングの上で歌詞が朗読される異色のショート・ソング。♪Comrades of pop turn away/In love and war all is fair/A far worse fate awaits you/On carpets made from human hairという締めくくりの部分に、なんとなく「General And Majors」「Wardance」以来のコリン流シニカル・センスを感じますが。
 
 僅か4曲ながら何という充実作。願わくばコリンとテリーの両翁には、のんびりとでよいので活動を続けて欲しいと思いますが、果たしてどうなるでしょうか。