(14)Iggy Pop『WHERE THE FACES SHINE VOLUME 1』(2007)版
パンクの帝王Iggy Popの発掘ライヴ集、6枚組。4枚目が1979年11月L.A.でのライヴなんですが、5曲目に「You Really Got Me」。発掘モノの常でこれも音はよくありません(ノイズもよく入る)が、イギーの芸風には合うておりますな。オリジナルと同構成で短くまとめてますが、バックの演奏がロンドン・パンク風の味わいを醸し出す中、イギー流の崩した歌唱(53秒辺りの「♪your side~」っていう運びが典型的)が聴き手を引っ叩く。
ちょうど同じころ(79年)彼が英国の音楽番組「Old Grey Whistle Test」に出た時の「I’m Bored」(『NEW VALUES』に収録)がネット上でも観られたりしますが、歌唱もさることながらステージアクションがパンク。別に物を壊したりするんじゃないですが、目つきが怖い。「You Really Got Me」もああいう感じで演ってたのでしょうか?
(15)Mott The Hoople『MOTT THE HOOPLE』(1969)版
インストゥルメンタルでカヴァーしている珍しいヴァージョン。デビューアルバムの1曲目ですからね、挨拶がわりってところでしょうか。メロディにソロにと大活躍のMick Ralphs(Gt)は、後にBad Companyを創設。本ヴァージョンはリズム隊が重心を下げヘヴィに迫りますが、オルガンとピアノも加わるのでやたら分厚いテイクに。厚化粧はグラムの美学。ドイツの音楽番組「Beat-Club」に彼らが出演した時(1970年3月)の「You Really Got Me」演奏もネット上にありました。
(16)Forcefield『FORCEFIELD』(1987)版
Forcefield『FORCEFIELD』(1987)※日本盤の曲順
1.Smoke On The Water
2.Set me Free
3.Runaway
4.Sunshine Of Your Love
5.White Room
6.Whole Lotta Love
7.Best Shot
9.You Really Got Me
10.Fire In The City
11.Keep On Running
12.Shine It On Me
今は亡き偉大なロックドラマーCozy Powellを中心としたプロジェクト(といわれていた)、その第一弾。Cozy(Dr)の他は、Mo Foster(Ba)・Ray Fenwick(Gt, Key)・Nick Magnus(Key)・Pete Prescott(Vo)ら。本作はカヴァー曲が中心で、Deep Purple「Smoke On The Water」、Del Shannon「Runaway」、Cream「Sunshine Of Your Love」「White Room」、Led Zeppelin「Whole Lotta Love」、The Kinks「Set Me Free」「You Really Got Me」、Spencer Davis Group「Keep On Running」を含む。
数曲、レイ・フェンウィック(実は彼が本当の仕切り人だったそう)のオリジナルが入ります。「Best Shot」とかは80年代的ポップハードロックで悪くないのだが、アルバム全体として何を狙ったかはややわかりにくい。カヴァーズは、「Smoke On The Water」や「Whole Lotta Love」の一部を除いてはほぼ原曲に忠実なアレンジゆえ、刺激的サウンドということもない。それでも、何を叩いてもCozyはCozyだなあというのはわかりますがね。音のキレがやっぱり違う。
で、「You Really Got Me」ですが、出だしから1番が終わるまではほぼ原曲通り。2番からは、ヴォーカルがメロディラインを少し変えて来る。「♪So I don’t know what I’m doin’」といったところとかね。そのほかは特に特筆するところはないかなあ。あ、Cozy先生もオリジナル・シングルのキック・パターンを律儀に守っていますね。これ大事。
このプロジェクトはその後も続きまして、ⅡⅢⅣと出ていますが、結構キンクス・カヴァーが多いんだよな。1988年のⅡでは「Tired of Waiting for You」(Voは後にブラック・サバスで頑張るTony Martin)をやってるし、次のⅢでは「Who’ll Be the Next in Line」(Gtに元Focusのヤン・アッカーマン、Voにグラハム・ボネット!)をやってる。後者の選曲の渋さ(60年代キンクスのシングルB面)にはちょいと驚きますが、強引な80年代風アレンジ(打ち込みイントロ、全編にまぶされたチープなシンセ音)、意外なほど熱いグラハムのうた、名手ヤン様の剛腕ソロ……と聴き所いっぱい。こういう一連のものを聴いていると、Cozy PowellもGraham Bonnetも、レインボーの時の“ハード・ロッカー”イメージだけで語られるのは困ったもんだったんじゃないかね。だいたい、レインボーのボス(Ritchie)がハード・ロックを離れちゃったんだから。英国ロックミュージシャンの懐は我々が想像するよりはるかに深い、ということを思い知らされましょう。
<続く>